第27話 父上とギデンの戦い


 ギデンの言葉の後闘技場を出ようとするとブーイングがなりだした


「おい!お前ら!そんなことしても俺とクロの戦いはなしだぞ?」


「そのために俺等は見に来たんだよ!」

「早く戦いを見せてくれよ!」


 なるほど私たちの明らかにレベルが低いであろう試験よりも父上とギデンの戦いが見たかったのであろう


「だから!やらねぇつってんだろうが!そもそもAランクのしかも元冒険者が現役のSランクに勝てるわけねぇだろうが!」


「わかんねぇじゃねえかよ!」

「これでもないとSランクの戦いが見れねぇんだよ!」

「ギルマスの負ける姿が見たいからに決まってんだろが!」


「最後のやつどこのどいつだ!?出てこい!ぶっ殺してやるぞ?」


 そんな茶番をしているとギデンの肩をトントンっと叩くものがいた


 ギデンは恐る恐るといった様子で後ろを向く


「まあいいじゃないかギデン。俺も最近戦ってなかったからな?やろうじゃねえか?ん?」


 父上がそう言うと会場が歓喜の大声で満たされる


「ああ~!!クソが!もういい!やればいいんだろやれば!」


 ギデンは悪態をつきながら言う


 父上の方が強いんだろうからきっと私達にカッコをつけたいんだろうな


 ギデンは片手剣を奥の方に置きにいくとその体に見合ったすごく大きな斧を持ってやってきた


「それを持って来たってことは最初からやるつもりだったんじゃないか。最初から承諾すればよかったのに」


 父上が呆れた調子で言うとギデンはキレながら答えた


「どうせお前が焚き付けるだろうと思ったから持ってきたんだ!お前が焚き付けなきゃ俺はお前とは戦わねぇよ!」


 父上を見るとニヤついた顔をした


「焚き付けられるお前が悪いんじゃねえのか?」


「やっぱしお前焚き付けてたんだな!?いいぜやってやろうじゃねえか!ルールは?」


「魔術は禁止、身体強化もだ。つまり……」


「正々堂々肉体の勝負っつーことか、よしそれで行こうじゃねえか」


 二人はニヤリと笑うと母上を見つめた


「はぁ……それでは私が審判をするわ、負けの判定は降参を宣言するか、相手の急所の手前に武器を当てること。即死防止の為に急所には私が結界を張らせてもらいます」


 そう言うと母上は手を高らかに上げ唱えた


「私にお力をお貸しください、彼の者を守る力を!――――結界」


 また違った詠唱だなと思って見ているとすごく明るく光る結界が出た


 何も反応がないから他の人たちには見えていないようだ


 魔力を可視化しているからかもね


 現実で結界が見えていたら結界が無い方から攻撃されたら終わりだし、結界を出してることに気づかれちゃうしね


「それでは、私ハニーの立ち会いにより、決闘を始める!」


 これって決闘に入るんだと思っていると周りの席からウォー!という歓声が聞こえびくりとする


 そうすると兄上が背中をてくれたので……一瞬敵かと思ってバッと振り向いたら兄上がニコリと微笑んで頭を撫でられた


 ……鼻血がたれていたのは見なかったことにした


 父上たちの方を見ると二人は対照的だった。


 ギデンは本気で襲いかからんとばかりに武器を構えているのに父上は武器を構えてすらいない


 そしてついにギデンがしびれを切らしたかのようにうおおお!と叫びながら斧をスイングしながらかけていく


 普通の人から見たら一瞬の出来事であっただろう。だけど私にはものすごいスローモーションに見えるんだけどね


 父上はギリギリまで動かずにいたが一瞬で斧を防いだ


 これには私も驚いた。だって私の本気のスローモーションでもゆっくり過ぎていくのが見えたくらいだったからだ。


 分かりにくかったかなギデンは本気の千分の一ぐらいだといえばより父上の凄さがわかるだろうか?


 とにかくその父上が斧を止めたらギデンは驚いた顔もせずまた次の攻撃を加えるために攻撃の反動で距離をとる


 そして次の攻撃を加えようと斧を振ったときには父上がギデンの後ろに回り首に刃を当てていた


 もっと反応速度をあげないといけないな


 心眼の特訓もしないとね


 本気の反応レベルを下げて普通のレベルに戻すと少し後に母上が声を上げた


「勝者クロ!」


 するとワーという歓声と共に父上がバッとこちらを向いたと思ったら私と兄上の前に立っていた


「二人とも見てたかい?」


「すいません早くて見えませんでした」


 兄上は本当に申し訳無さそうに謝る


 父上はちょっとショックを受けた様子でシャルもかい?と言いたげな悲しそうな目でこちらを見る


「私は分かってます!」


「シャル……!」


 父上が嬉しそうに言う


「父上はあのムキムキのギデンにも勝てる力を持っていることを!」


「シャルには見えていたんだね!」


「はい!母上が父上のいた方の手を上げていましたから!」


「そっち!?」


 父上は驚いた声を出す


「僕の勇姿を見たんじゃなくて?」


「だって父上の方を見てたらギンって音とすごい風の音しか聞こえなかったので母上を見たら手を上げて勝利宣言をしてたんですもん」


 父上はガーンとした顔をしてうなだれた


「見てもらいたかったのに……」


 父上はきのこでも生えてそうなぐらいにジメッとした


 ホントは見えてたけど兄上より優秀ってことで選ばれないとは思うけど後継ぎに選ばれないようにするためにね


 仕方のないことなのだよ

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