第25話 冒険者ギルドへ!


 セットの早着替えに満足して冒険者服になる


コンコン


「シャル入ってもいいかしら」


 どうやら母上が帰ってきたようだ


「はいどうぞ」


 そう言うと扉が開き、母上が入ってきた


「あら?着れたのね。着れないと思ってたけどできるならいいわ」


 出来ないと思ってたのに自分で着替えさせるって結構鬼畜だよね


「だけど、この髪留めは外しなさい。これは暗殺服のときと貴族姿のときにつけなさい」


 冒険者のわたしと貴族を結びつけないようにするためかな?


「わかりました母上」


 そう言うと髪留めを外し、アイテムポーチに入れるふりをしてアイテム欄に入れた


「それからあの者たちはもうここにはいないから安心しなさい」


 母上はブリザードを伴った微笑みを浮かべる……心なしか部屋が寒くなった気がする


 あの人たちには良い未来は訪れないだろうな~かわいそうに!


「ふふっ」


「あらどうしたのシャル?」


「かわいそうだなぁって思って」


「あらそう?自業自得じゃないかしら」


「そうですね~」


 笑いが込み上げてくる


「ほんとかわいそ」


 あのしたり顔をしている気がする。大嫌いなあの顔を。つまりアイツらと私は同じ種類の人間なんだろう


 なのに楽しくて仕方がない


 あぁ!


「楽しい!」


 クスクスと笑い声が聞こえる。見ると母上が笑っていた


「シャル、楽しかったとしても顔に出してはいけないのよ?貴族は仮面をつけないとね」


「はい、母上」


 その時にはもう完璧な微笑みの仮面をつけていたのだろう。母上は満足げに微笑んだ


 部屋から出るとそこにはチャイナ服を身に着けた兄上が待っていた


「シャル!」


 そう言って兄上は私に抱きついてきた


「どうしたの兄上?」


「シャルすごくかっこいいねきれいだね美人さんだよかわいい」


 そう言うと兄上は私をギュッと抱きしめて可愛いかわいいと言い出した


 その兄上を離したかったが力を見せるわけにはいかないしそのままの状態でいた


 だが一分立ってもやめようとしないので次第に飽きてきた


 そうだ!


「兄上痛い」


 そう言うと兄上はバッと腕をほどきごめんっと勢いよく謝った


「ごめんね!痛かった?……んだよね!ほんとにごめん!」


 そう言うと兄上はチラチラと私を見ながらはなれた


「うーん離れてほしかったのが大きいからそこまで痛くなかったよ」


 魔素のおかげか体が丈夫なんだよね~だから痛くもないけどそれは秘密ということで


「そう?ならいいけど嫌な思いさせちゃってごめんね?」


 兄上は謝れるからヤンデレじゃないねヤンデレは自分の行動で相手は絶対に喜んでくれると思っているからね


 私もできる限りそうならないように気をつけないと


「二人ともそろそろ玄関に行きましょう。クロが待っているはずよ」


「分かった」

「分かりました」


 そう言うと母上は私達の先を歩き出した。兄上は私をエスコートしてくれる


 ……別になくてもいいけど


「兄上」


「なぁにシャル?」


「遅くなりましたけど服似合ってますよ」


「~っ!ありがとうシャル」


 兄上はギュッと手を握って嬉しそうにはにかんでこちらを見た


 それからずーっと歩き続けて部屋に着くと狩人のような格好の父上がいた


「シャル!ハニー!レン!よく似合っているよ!」


 ちなみに母上は仮面をつけた聖女様といった格好だった


 父上はこちらを見て何かを期待してる


「父上はなんかどこにでもいそうな狩人の変装ですか?」


「ぐはっ!」


 父上は大げさに倒れ、シャルにどこにでもいるって言われたと母上にすがっていた


「それよりもクロ」


「それよりもって……」


「仮面を渡すんじゃないの?」


 父上はハッとしてぱあっと顔を輝かせウエストバックから2つの仮面を出した


「シャルとレンの仮面だよ!」


 私は狐の和風のお面、兄上のは目元だけのベネチアンマスクだったちなみに黒色だよ


 でも半分しか隠れてないけど大丈夫なのかな


「その仮面には認識阻害の効果がかかっていて仮面の方に印象が行ってしまうんだでも家族だけはわかるようにしたからハニーもわかるんだよ」


 まぁそんなことしなくても私にはハニーはわかるけどねと父上は母上に熱い視線を向けながら言った


 母上は装飾がされた目元だけのベネチアンマスクだよ


「父上はつけないのですか?」


 と兄上は聞いた


「私は仮面を身に着けていなかったから仮面を身に着けたら冒険者のクロだって分からなくなっちゃうんだ。だからつけないんだ」


 父上はちょっとしょんぼりとしながらいった


 それじゃあ行こうか?そう言うと父上は部屋に入っていったので私達も続いた


 するとその中には白く光った開いた両開きの扉があって父上はそれに躊躇なく入っていった


「ふふっ大丈夫よ。これは神殿の魔法陣の扉版のようなものだから……ほら!」


 母上が私の手を引く


「わっ!」


そして光に目をつぶり目を開いたときにはまた別の酷く簡素な部屋にいた


「ここは……?」


「冒険者ギルドの部屋だよ」


 そういう父の声が聞こえた


 父上は椅子に腰掛けていた


「シャル、レン仮面をつけなさい」


 そういう父上は少し凄みがあった


 兄上は思わずとでもいうかのようにゴクリとつばを飲んだ


「はぁい」


 私は別にだけどね

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