第四十五話 The Purge day

「今日の天気は、曇りのち雨でしょう。お出かけの際は傘を持っていくとよいでしょう」


 土曜日の朝、俺は朝食を食べながら、テレビから流れるニュース番組の天気予報を聞き流しながていた。


 外はあいにくの曇天だが、こんな日にはぴったりかもしれない。


「おはよう」


 まきなさんが、コーヒーを飲みながら俺に言ってくる。


{おはよう}


 俺がそう返すと、俺の対面に座るようにしてまきなさんは座った。


「凛君、この間のテスト成績良かったじゃん。昔じゃ考えられないね」


 まきなさんが、コーヒーを見つめながら言ってくる。


「今日は寒くなりそうだね」


{そうだね}


「それで?」


 まきなさんは、飲み終えたコーヒーカップを置いて俺の方を向いた。


「何か話があるんでしょ?」


{よくわかったね}


「まぁね」


 まきなさんは静かに笑う。


{まきなさん。俺に何か隠してるでしょ}


 俺は、今まで抱えていた違和感をまきなさんにぶつけた。


 いや、本当はずっと違和感に気づいていたのだ。


 ただ、気が付かないふりをしていただけで。


「何かって?」


{俺の目が明るさに弱いからコンタクトを付けているのって、嘘でしょ}


 俺はもっと、具体的な質問を投げかける。


「嘘ではないよ」


 まきなさんは言う。


「それも、本当」


{それも?}


「凛君。今日時間ある?」











「ここ入って。何もないけど」


 まきなさんに連れてこられたのは、町のはずれにあるビルの一室だった。


 建物周りは、警備がしっかりしていた。


{ここは?}


 無機質な部屋においてある椅子に座る。


「ここは私の職場よ」


{ハッピーなホワイト企業ではなさそうだね}


「はは。まぁね。でも、そんなに悪いところじゃないよ」


 まきなさんも椅子に座りながらいう。


「本当はね、もっと準備が整ったら伝えるつもりだったの」


{準備?}


「何から話せばいいのかな?」


 まきなさんは言う。


「とりあえずね。あなたにコンタクトをしてもらっていた理由は三つあります」


(三つ?)


「一つ目は、さっき言った通り光の量を調整するため。二つ目は、君自身に気が付かせないため。そして、三つめは他の人に気づかれないため」


{最初のはともかく、どうして気が付かれちゃいけないの?}


「凛君が、自分の生活に疑問を持たないようにするためだよ」


{どういう事?}


「まずね、君のその目は先天的なものではありません。君が小学五年生のころ。今から、約五年前から君の目は碧いです」


 まぁ、それはなんとなく分かっていた。もしかしたら、クォーターの可能性も疑ったが、身近にもう一人同じ目を持った人間がいるのだ。


「そして・・・・」


 そう言ったまきなさんは、自分の目からコンタクトを取り


「私もね」


 そう言った、まきなさんの目は碧色だった。


{どうして・・・・}


「これはね・・・・この目の色は、後遺症によるものなの」


{後遺症?}


「うん。五年前に起こった計画的大規模テロ "パージデイ” のね」


{パージデイ?}


「うん。正確には、そこで使用されたあるドラッグの後遺症なんだけどね」


{ちょっと待って。話が急すぎて、ついていけないんだけど}


「そうだよね」


 俺は落ち着くために、出されたお茶を一口飲んだ。


{俺、そんなこと記憶にないんだけど}


「凛君の記憶が曖昧なのも、この件が関わっているの。ついでに、凛君が声を出せないこともね」


{どういう事?}


「単刀直入に言います。凛君。あなたの中にはいま、貴方ではないもう一人の人格が眠っています」







作者からの一言


おはようございます。

急に寒くなりましたね。

家の猫も、毛布にくるまっている時間が増えました、

皆さんも体調にはお気を付けください。


                           黒崎灰炉






 





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