第四十話 海底に沈む妖星

「グッドモーニーング!」


「おはよう、新之助君」


「朝からにぎやかね」


「みんなー朝、パンでいい―?」


「軽くサラダも作っておきました」


「さすが篠崎ちゃん!」


「あれ、凛は?」


「なんかちょっと気分が悪いから、朝ごはんはいらないって」


「え、大丈夫?」


「気にしないでみんなで遊んできてって言ってたけど」


「えー。りんりん一緒に遊べないの?」




 旅行二日目。


 俺は、部屋にこもっていた。


 昨日あまり眠れなかったため、眠気がすごい。


 眠れなかった理由はもちろん昨日の件だ。


(俺の目が碧い?)

 

 自分の目が碧いことを初めて知った。


 それは、今までコンタクトで目の色が碧く見えなかったからという事もわかった。


 そもそも、日本人で目の色がここまで碧いことなどあり得るのだろうか。 


 そして何より、篠崎さんの目の色も俺と同じ碧色をしていた。


 それがなかったら、もしかして気にしていなかったかもしれない。


 いろいろ気になるところだが、とりあえず今日は篠崎さんと話さなければ。


 そのためにここに来たのだから。



 



「久しぶりだな兄弟」


(お前か)


「あぁ、俺だ。気分はどうだ?」


(良くはない)


「だろうな」


(お前に聞きたいことがある)


「なんだ?」


(お前は誰なんだ?)


「おいおい。またその話かよ。前にも言ったが、自分で考えてくれ」


(じゃあ質問を変える。俺の目が碧い事と篠崎さんの目が碧い事。何か関係があるのか?)


「それに関してもノーコメントだ」


(何も答えないじゃないか)


「答えるとは言ってないからな。だが、前にも聞いただろう。お前の常識は何の綻びもないのか、と」


 奴は続ける。


「お前の世界の外は、あれから大きく変わっている。お前を置き去りにしてな」


(は?)


「今回の事でお前の世界を形成していた、お前の常識の均衡が崩れ始めている。お前の質問も俺の言葉の意味も近いうちにわかるかもな」






 目を覚ますと、もう日は落ちていた。

 

 いつの間にか眠ってしまっていたようだ。


 せっかくの旅行を楽しめなかったのは残念な気もするが、仕方がない。


 リビングに降りていくと、みんなが昨日同様ゲームをしていた。


「あ、一ノ瀬君。大丈夫?」


 委員長が声をかけてきてくれる。


「夕飯取ってあるけど、食べられそう?」


{うん。後でいただくよ。ありがとう}


「凛、病院とか行かなくて平気?」


「元気なら、一緒にゲームしようぜ」


 みんなが次々に声をかけてきてくれる。


 だが、俺は篠崎さんの目の前に行き


{少し話があるんだけど、いい?}


 そう伝えた。


 しばらく、沈黙があったが


「別に構いませんが」


 篠崎さんはそう答えた。


 周りも察してくれたようだ。


 阿久津君も何かを言いたそうだったが、黙っていた。




 俺と篠崎さんは、外に出て昨日のビーチまで歩いていく。


 しばらく、篠崎さんと浜辺を無言で歩いたところで、


「あの、一ノ瀬さん。話って」


 篠崎さんが言ってきたので、立ち止まって篠崎さんの方を向く。


{篠崎さん。俺はここ最近、というか、篠崎さんと話さなくなってから考えていたんだ}


「はい」


{だけどなんで俺が篠崎さんに嫌われているのか、やっぱり分からなかったよ}


「そうですか」


{もしかしたら、気が付かないところで君を傷つけてしまったのかもしれない。もし、そうなら謝るよ。このまま、君との関係を終わらせることは嫌だから}


 波の音がいつもより大きく聞こえる。


{だから、ちゃんと言ってほしい。本当に身に覚えがないんだ}


 情けないが、これが本音だった。


 篠崎さんは、俺の文を読み終えたあと言った。


「一ノ瀬さんが身に覚えがないのは、仕方がないことです」


(え?)


「それを分かっていて言ったのですから」


{どういう事?}


「一ノ瀬さん。私は、私が自分自身に対して思っていたような人間ではありませんでした」


 篠崎さんは、海を眺めながら言った。


「私ではないとはいえ、結局それが私のあの海のように深い感情の根底に眠るものだったということ。貴方にひどいことを言ってしまったのは、私の弱さです。ごめんなさい」


{篠崎さん。さっきから何を言っているの?全然理解できないんだけど}


「ごめんなさい。今は答えられません」



 篠崎さんの話す日本語が全く理解できない。


 どうして、みんな曖昧なことしか言わないのだろうか。


{それじゃあ。俺はこれからどうすればいいのかな}


「ごめんなさい。それも分かりません」


 篠崎さんが申し訳なさそうに言った。


 お手上げだ。もう何も手がない。というか、もう何もわからない。


{それじゃあ。最後にもう一つ聞いていい?}


「なんですか?」


{篠崎さんってどうして目が碧いの?}





作者からの一言


おはようございます。

最近、複雑な会話シーンが多くて読者の皆様を置き去りにしていないか心配です。


今日は二本投稿です。夕方あたりにもう一話投稿します。

以前、今後二本投稿はしない。と言いましたが

嘘です。

今後はもう一日二本投稿はしません。

多分。


                          黒崎灰炉










 








 


 


 


 


 


 

 


 


 


 


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