第四十.五話 半透明な希望
(四時か)
いつの間にか眠ってしまっていた。連日立て続けに徹夜で仕事をしていたのだから無理もないが、まだ休むわけにはいかない。
今年で四十五の彼にはきつい仕事だが、体に鞭を打ち資料に目を通し始める。
日本特殊作戦部隊、通称JSOCの情報班に所属して二十年になる彼だが、過去に類を見に見ない事件に頭を悩ませていた。
(二年か)
あの忌まわしい事件から、もう二 年もたってしまった。
事件解決の糸口はいまだ見えず、被害者に合わせる顔もないまま焦りが募る。
事件解決の予期せぬ難航に、上層部はかなりイラついている様子でこちらにもプレッシャーがかかる。
ストレスで、肌もあれ胃にも穴が開いたこともあるが、このままこの仕事をやめるわけにはいかない。
あいつを捕まえるまでは。
あの事件を起こした首謀者であり、我々が追っている人物だ。
(なんとしてでも、あいつを捕まえなければ)
だが、焦る気持ちとは裏腹に情報は全く集まっていない。
二年もたってほとんど情報を得られていないとは、日本特殊部隊情報班の名が泣いている。
(やはり彼の可能性に賭けるしかないのか)
三島は自分の無力さを痛感させられながら、当時の事件の資料に目を落とした。
あの事件の現場にいた被害者の人間が唯一、樋口と接触しており、樋口逮捕への手がかりを持っている可能性があった。
正直なところ、彼の情報が最後の希望になりつつあった。
会ったところで何も得られない可能性が高いのだが、それ以外頼れるものが現状無かった。
被害者への接触及び事件当時への質問は、同部隊の医療班の許可が必要となる。
しかし、特に樋口の情報を持っているであろう被害者への接触の許可は出ないままでいた。
(なるべく早く、彼に会いたいのだが)
そんな重要な手掛かりが掴める可能性があるにもかかわらず、医療班が三島たちを被害者に接触させないのには理由があった。
安易な接触は最後の希望を失う可能性があるからだ。
(今はまだ、その時ではない)
三島は被害者がまとめられている資料を手に取った。
被害者の情報がまとめられた資料の一番上には
「一ノ瀬凛斗」
と書かれていた。
作者からの一言
こんばんは。
カフェインを取ると眠くなくなるといいますが、自分はあまりその効果を実感したことがありません。やはり、個人差があるのでしょうか?
そういえば、当初目標にしていた星50を気が付いたら達成していました。次の目標は星100とフォロワーさん200人ということにしておきます。
ということで、気が向いたらフォローと星を付けてくれたら嬉しいです。
黒崎灰炉
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