第五話 放課後の部活見学
「それじゃあ、皆さん気をつけて帰ってくださいね。」
水島先生がそう言い放課後のホームルームが終わった。
俺が教科書をリュックにしまっていると、篠崎さんが俺の机まで来た。蓮と美鈴はもう部活に向かったようだ。
「一ノ瀬さん。今日はよろしくお願いします。」
よろしくと言われるようなことをするわけではないのだが。
{こちらこそよろしく。篠崎さんはどこか見てみたい部活動ある?}
思えば、俺は篠崎さんがどんな人なのかいまだに良く知らない。
「いえ、特別気になる部活があるわけではありません。ただ、運動部はちょっと」
運動が苦手なのだろうか。いずれにしても俺も運動部に入る気はなかったから、ちょうどいいのだが。
{そっか、じゃあ文化部の部室とかを回りながら適当に気になったところを見てみようか}
俺がそう提案すると。
「そうですね」
と篠崎さんは答えた。
それから、俺たちは一時間ほどかけて学校の文化部を回った。文化部と一言に言ってもその数は膨大であり、吹奏楽部、軽音楽部、料理研究部、落語研究部、生物観察部、手芸部、オカルト研究部など挙げたらきりがないが、多種多様な部活が存在していた。
(疲れた。それにしても先輩たちの勧誘すごかったな。)
この怜高では近年部活があまりにも増えすぎたため、明確な活動結果が確認できない部活は廃部にする、「部活整理」が行われているらしい。そのため、先輩たちも自分たちの部活を守ることに必死なのだろう。
{篠崎さん、何か気になる部活はあった?}
そう俺が聞くと、
「いえ、特にピンとくる部活はありませんでした。」
と首を横に振った。
(やっぱり)
実のところ俺も、特にこれと言って気になる部活はなかった。
やはり部活に入るのはやめて、アルバイトでも探そうか。そんなことを思っていると
「装飾部」という書かれた部屋が目に留まった。
(装飾?飾り付けでもするのか?)
俺がそんなことを思っていると
「あの部活が気になるんですか?」
と篠崎さんが聞いてきた。
{いや、ちょっと目に留まっただけだし}
そう俺がタイピングすると
篠崎さんは
「でも気になってますよね?}
と続けてきた。
(そんなに顔に出てたかな?)
と思いながらも、篠崎さんに「いってみましょう」と手を引かれたので、見学だけしてみることにした。
装飾部の扉を開けると、見覚えのある女子生徒と目が合った。
「あ、一ノ瀬君!」
そういって小走りで駆け寄ってきたのは、隣の席の大久保さんだった。
「むぅ」
篠崎さんの顔が曇る。大久保さんのことが苦手なのだろうか
「一ノ瀬君と篠崎さんも装飾部はいるの!?」
大久保さんは目を輝かせながらそう聞いてきた。
「も、ってことは大久保さんはもうこの部活に入ることにしたんですか?」
篠崎さんが大久保さんに尋ねた。
「うん!この部活、とってもかわいくて一目ぼれしちゃった。」
(かわいい?)
一体何がかわいいのか聞こうとした瞬間
「君たち!!!ぜひとも、この装飾部にはいってみない!?」
と、ポニーテールの女子生徒がすごい勢いで話しかけてきた。
「えっと、貴方は?」
篠崎さんが怪訝そうな顔で、その人に尋ねた。
「先輩、新入部員の勧誘で怖がらせてどうするんすか。」
すると今度は、眼鏡をかけた三つ編みの別の女子生徒が言った。
「あちゃーごめんよぉ、新しい子が見に来てくれてつい嬉しくなっちゃって。」
そう言いながらポニーテールの生徒は俺たちに謝った。
「改めて、私は
そう名乗った生徒は、確かに俺たちより大人びた顔をしていた。
「そしてこっちが、装飾部の副部長である
隣にいたメガネの生徒は「ども」といいながら俺たちに会釈した。
「あの、湊先輩。私たちまだこの部がどういう部なのか知らないんですけど」
と篠崎さんが言った。
「ふふふ、よくぞ聞いてくれたね。」
そう不敵な笑みを浮かべながら湊先輩は言った。そして
「じゃーん!」
という掛け声とともに両手を見せてきた。
「あ、」
篠崎さんがそうつぶやいたので俺も湊先輩の手を見てみた。
すると、両手の細い指にきれいな指輪がいくつもはめられていた。
「そう、この部活は装飾品を製作する部活なのです!」
と湊さんがいった。よく見ると、大金さんの腕にも自作らしきブレスレットがつけられていた。
なるほど、装飾品を作るという意味の装飾部なのか。
「どう、二人とも興味ない?」
(えーと)
俺が返答に困っていると、
「先輩、一ノ瀬君は自分で作ったピアスを付けているんですよ!」
と大久保さんが、湊先輩に言った。
「そうなの!みせて、みせて」
と湊先輩が食いついてきた。
(いや、ちょっと)
と、俺が困っていると
「私も見たいっす。」
と大金先輩まで食いついてくる始末。
しょうがないので、俺が左耳を見せると
二人の先輩と大久保さんが興味津々に観察し始めた。
(非常に恥ずかしい)
最近こういうことが多い気がする。
俺が戸惑っていると、
「皆さん、一ノ瀬さんが困っています。あと、一ノ瀬さん、鼻の下を伸ばさないで下さい。」
みると篠崎さんが、こちらをにらめつけていた。口調は丁寧だが、怒っているのがわかる。
(美鈴といい、篠崎さんといいどうしてこう美人が怒ると怖いのだろうか。あと、鼻の下は伸ばしてない。)
「あはは、ごめんねー」
そう湊先輩が謝ると、俺を解放してくれた。
「すごいね一ノ瀬君。造形も丁寧だし、発色もきれいだ。何よりデザインがかわいい」
と、湊先輩は褒めてくれた。
「たしかに、結構本格的な作りですけど、誰かに教えてもらったんですか?」
と大金さんも続く。
{ええ、これは...}大金さんの質問に答えようと、スマホにタイピングし始めた時
(あれ、俺誰に教わったんだっけ)
なぜ自分が装飾の作り方を知っているのか、誰に教わったのか自分でもわからないことに気づいた。
なんて答えようか困っていると、
「とにかく。二人とも、今この部活には私と真紀ちゃんの二人しかいない。大久保さんが入ってくれても、三人。でも、部活を存続させるためには5人必要なの。もし、嫌じゃなかったら前向きに考えて欲しい。」
と、湊先輩が言った。
俺と篠崎さんは軽く部活の活動内容等を説明してもらった後、先輩たちにお礼を言い部室を後にした。
「大丈夫ですか?」
篠崎さんが心配そうに尋ねてきた。
大丈夫?とは、さっきの俺の反応だろう。そんなに顔に出したつもりはないが。
{ごめん、ちょっと疲れてるのかも}
そう打って篠崎さんに見せる。
「そうですか。」
篠崎さんは何か言いたそうだったが、それ以上聞いてくることはなかった。
しかし、俺は自分の鼓動が早くなるのを感じた。両手をズボンで拭う。
(何なんだこの気分は)
どんよりした気分が心に立ち込めるのを俺は感じた。
作者の一言
おはようござます。この話は、正直アップロードするか迷った話です。話のテンポとか、ストーリーがちょっとぐだってる感じがしますよね。今後もう少し上手な文を作れるよう日々精進いたします。
感想やハート、星をお待ちしております!!
黒崎灰炉
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