第四話 部活決め

次の日、教室に入るとクラスがにぎわっていた。


「ねえ、入る部活決めた?」

「まだ決めてない、今日一緒に見学しに行こうよ」

そんなクラスの女子同士の会話が聞こえた。


この怜悧東高校は、部活動も盛んな学校である。文化部、運動部問わず様々な部活動が存在しており、その中には県や全国大会まで進出する部活まであるくらいだ。


部活への入部は強制ではないが、多くの生徒が部活に入る。やはり、部活は青春の一ページになるのだろう。


この怜高では新入生に一週間の間、放課後自由に部活動を見学する権利があたえらる。それぞれ思い思いの部活を見学し、部活を体験したうえで入部を決めるのだ。


(そういえば、部活どうするかな。杉山はバスケ部が気になるって言ったけどどうするんだろ)


そんなことを考えながら、リュックから教科書を取り出していると。


「ねえ、そのピアスかわいいね。」


と声をかけられた


声の方をみると、隣の席の金髪の女子生徒がこちらを見ていた。


(この人は確か、隣の席の大久保さん...だっけ?)


「そのピアスどこで買ったの?」


そう言いながら、俺の左耳についているピアスを指して言った。


確かに俺の左耳には、肉球型のピアスがついていた。だが、別に買ったわけではない。


{自分で作った}


そう、スマホに打って大久保さんに見せた。


「え。すご!一ノ瀬君ピアス作れんの?ちょっとよくみせて。」


そういうと大久保さんは、俺の顔に自分の顔を寄せピアスをまじまじと見始めた。


(小さいピアスだから仕方がないとはいえ、この距離はさすがに恥ずかしい)


そう思っていると。


「ねえ、ちょっと触ってみてもいい」


そう大久保さんが言い、俺の耳に触れそうになった。その時


「一ノ瀬さん。おはようございます。」


と、また声をかけられた。


見上げると、篠崎さんが机の前に立っていた。


「おはよございます。」


今度は先ほどのおはようより、さらにトーンが低いおはようだった。

やはりなぜか怒っている気がするか、何かしてしまったりしたのだろうか。


「あ、篠崎さん、おはよー」


大久保さんが、篠崎さんに挨拶した。


「大久保さん、おはようございます。」


篠崎さんも返す。


{どうかしたの}


俺がスマホでそう尋ねると、


「蓮様が呼んでいます、一緒に来てください。」


そう言って、篠崎さんは俺の腕を引っ張って無理やり連れて行こうとする


「あら残念。後でピアスの話聞かせてね」


篠崎さんに引っぱられて連れていかれる俺に、大久保さんはそう笑いかけると小さく手を振った。


篠崎さんに連れられ、蓮の机まで来た。


「おはよう、凛」


蓮がそう言って話しかけてきた。


俺もおはようと、片手をあげて挨拶をする。


{どうしたんだ?}


そう聞くと、


「あー、部活動の事なんだけどね」


そういえば、まだ蓮が何の部活に入るか聞いていなかった。


{蓮は決まっているのか}


「うん。実は、生徒会に誘われていてね。中学の時も経験あるし、少しは役に立てると思うから入ろうと思ってるんだ」


なるほど。この学校の生徒会は、1000人近くもいる生徒の中から選ばれた数人しかなれないエリート集団なのだが、蓮なら適任だろう。なにせ中学の時、蓮は生徒会で大活躍だったのだから。ただ、中学の時とは違って他の部活との掛け持ちは基本的にできない。それほど重要で忙しいのだろう。生徒会とやらは。


{そうなのか。じゃあなんで俺を呼んだんだ?}


俺が不思議そうに聞くと、


「実は、風葉さんの部活見学付き合ってほしいんだ。僕は今日、生徒会の見学に行かなきゃいけないし、美鈴はバレーの特待生だから一緒に見て回れないんだ。」


そういえば、美鈴は中学の時のバレー部でキャプテンを務めており、全国大会に出場したこともある。高校でも当然バレーをやるのだろう。というか特待生なのだからやらなければいけないのだが。


「風葉さんは部活とかやったことないみたいだし、せっかくだから一緒に見て回りなよ。凛もどうせまだ決まってないんでしょ。」


(一緒に部活見学か)


別に俺は構わないのだが、どうもこの篠崎さんは俺に対していい印象を持っている気がしない。


そう思いながら篠崎さんの方をチラっと見ると、篠崎さんもこちら見ていた。


「一緒に回ってくれますか?」


(え!)


意外だった。てっきり嫌がられるものかと思っていたから。


{俺は別にいいけど、篠崎さんはいいの?}


そう聞くと、


「はい」


とだけ答えた。


やはり何を考えているのかよくわからない子だ。


{わかった、じゃあとりあえず放課後一緒に回ろうか。}


そう俺が言うとまた、


「はい」


とだけ答えた。ただ、今回は少しだけ喜んでいるような気もしなくもなかった。





作者からの一言

おはようございます。今回の話は前回の話から数百文字減らして書いてみました。

あまり多く書かず、更新頻度を上げるとかもいいのかなぁと思っています。


そういえば最近、星を初めていただきました。作品をフォローしてくださる方もほんの少しずつですが、増えてきて嬉しい限りです!


星やコメントなど常にお待ちしているので宜しければぜひ!


                             黒崎灰炉





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る