第二十八話 The Origin

~十年前~


アフリカのとあるジャングル奥地に、二人の日本人の男女が来ていた。


二人とも同じ服を着ており、背中にはJSOCと書かれている。


「おい。本当にこの辺で合っているのか?」


一人の男が言う。


「えぇ、情報ではこの辺りのはずよ。でも、正確な位置情報がないうえに、私も始めて来るから」


もう一人の女が答える。


「しかし、あんたも災難だな。強襲班所属なのに、情報班の仕事に駆り出されたあげく、どこかもよく分からん国の山奥での調査任務を任されるなんてよ」


「仕方がないわ。今はどの班も人手不足よ。動ける人間が動かなくちゃ」


「あんた知っているか?何やら、政府が秘密裏に行っているやばい実験の情報のリークが、うちにあったとか」


「えぇ。前から、政府は信頼していなかったけど、まさか裏でそんなことやっていたとはね」


「それの調査で、どの班も人手不足ってわけかよ」


「そんな調査をさせられるよりいいじゃない。こっちの調査はちょっとした観光だと思えるし」


「そんな呑気なもんか?」


「あんな胸糞悪い実験の調査より、100倍ましだと思うけど?」


「どーせなら俺はハワイとかそっちに行きたかった、、、」


そこまで言った男の口を女が手で塞ぐ。


「静かに。あれ見て」


女が小声で言う。


「あれは、、、」


二人の目線の先には、この地区に住む先住民族と思われる部族の集団がいた。


「あいつらが、情報にあった部族か」


二人は、しばらくその集団の様子を物陰から伺うことにした。




「あ、見て」


しばらく様子を見ていた女が男に言う。


観察から一時間ほど経過した頃、突然部族があわただしく動き始め、しばらくするときれいに整列して全員が跪いた。


しばらくすると全員の目の前に、一人の高齢の男性が歩いてきた。


この部族の長だろうか。


すると、一人の若い男性が長の前に出て、あるものを渡した。


「あれは、、、花?」


女が言う。


「みたいだな」


長の手には、確かに綺麗な薄いピンク色をした花が握られていた。


すると、その長は突然その長は持っていた花を食べ始めた。


「何をしているの?」


「花を食ってる、、、のか?」


そして、次々にその花を周りの人間も食べ始める。


花を口にした人間は声を上げる。


尋常じゃない興奮の仕方だ。


「かなり興奮しているみたいね」


「あぁ。今あれを調査することは難しそうだな。少ししたら出直そう」


「そうね」


そう言って二人はその場を後にした。



「なぁ、あれなんだと思う?」


先ほどの地点から少し離れた位置で、男は女に聞いた。


「さぁ。何かしら。彼らの固有の儀式の可能性もあるけど」


「気になるな。あの花」


「そうね」


「ここの部族ってもともと穏やかで、友好的な部族じゃなかったのか?見た感じ、かなりやばそうだったぜ。武装をしてるやつもいたし」


「そうね。以前ここに私の同僚が調査に来たけど、この部族と接触したのちに音信不通になり行方不明。無事だといいんだけど」


「それで、俺たちがあの部族の調査をするために送られたって訳ね」


「とにかく、様子を見て潜入しましょう」




~その夜~


「そっちはどうだ?」


「こっちも人影はないわ」


「よし」


部族が寝静まった頃合いを見て、二人は調査を開始した。


本来ならば、調査の交渉をしたいところだったが、先ほどのただならぬ様子を見て、隠密に調査を進める方が賢明だと判断した。


「まずは、あの花を探してみるか」


「えぇ。できる事なら、あのリーダーっぽい老人の血も採血したいところだけど」


しばらく部族の集落を探索していると、


「おい、こっち来てみろよ」


と男が言った。


小さな小屋らしき場所の中には、今朝見た薄ピンクの花が複数保管されていた。


「なんだこれ」


「花を管理しているのかしら?」


「花屋さんって感じじゃなさそうだな」


丸太で作られた、作業台らしき物の上には今朝の花が小分けにされ、包まれている物がいくつもあった。


「それじゃあ、一つ拝借するとするか」


「これが、手掛かりになるといいんだけど」


「ついでに血も貰ってくとするか」


そう言って、その場を離れ、長を探し始めようとした時、


「次はあそこを見てみないか?」


男が指さした方には、木で作られた小屋があった。


静かにその小屋に近づく。


人がいないことを確認し、小屋の扉を開けると。


「う!」


小屋の中は、ものすごい腐敗臭が立ち込めていた。


男が口を押える。


暗い小屋の中をライトで照らすと。


「これは、、、」


そこには、人の死体らしきものがいくつも散乱していた。


「見てこれ」


女がライトで照らした死体の服に、JSOCと書かれているのが見えた。


「あんたの同僚か?」


「おそらくね。腐敗が進んでて顔を確認することはできないけど」


「やっぱりこいつらにやられてたか」


「とりあえず、早くここを離れよう。二人だけで調査を進めるのは危険だ」


「えぇ、そうね」


そう言ってその場を離れようとした時、


「ぐあっ!」


男が声を上げた。


女が振り返ると、男の胸を刃渡り十五センチほどもあろう刃物を先端につけた槍が、彼の胸を貫いていた。


女は、倒れた男のもとに駆け寄った。


「大丈夫!?今止血を、、、」


そういった瞬間、殺気を感じた女は身を翻す。


見ると、男の胸を貫いたであろう長い槍を持った部族の男がこちらに槍を向けていた。


素早く距離をとり、持っていた拳銃を構える。


しかし、槍を持っていた部族の男がけたたましい声を上げる。


「まずい」


その声に反応した仲間が、ぞろぞろと彼のもとへ集まってくる。


数が不利なうえに、重傷を負った人間を庇いながらここを離脱することは絶望的だ。


女が身動きをとれずにいると、倒れていた男は先ほど採取した、花の小袋を女の方に投げた。


「...ごめんなさい」


そう呟いて、女は月明かりが照らす夜のジャングルに消えた。


男の周りに続々と、部族が集まってくる。


「こんなことになるんだったら、ハワイでもこんな任務ごめんだね」


一人残された男は呟く。


巨大な斧を持っていた部族の一人が彼に近づき、彼の頭に斧を振り下ろした。






作者からの一言


おはようございます。

皆さんは、外で水を買う派ですか?

僕は、飲む目的で水を買ったことはないかもしれません。

非常時に備えて買うことはあるんですけど、飲料として外で飲み物を買うときは、水を買うならお茶とかジュースでよくない?って思う派なんですよね。


                         黒崎灰炉










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