第十九.五話 その瞳に映る想い
「みんな!調子はどう?」
湊先輩が聞いてくる。
「私はぼちぼちっすかね」
大金先輩が言う。
{俺も半分くらいです}
「そっかー。ノルマを課した私が言うのもなんだけど、みんな無理はしないでね」
「そういうなら、もう少し優しいノルマにしてほしかったっす」
「まぁ、目標は高い方がいいじゃないか」
部室で先輩たちと話していると、
「すみません。おくれました」
と、少し遅れて篠崎さんが入ってきた。
「あれ、ふーちゃんどーしたの?」
唯が聞く。
「はい。少し、阿久津君とリレーの練習をしていました」
「そっか、二人は選抜メンバーだったね。あれ、りんりんも選抜じゃなかった?」
「一ノ瀬さんと私の息はぴったりなので、練習する必要はありません。」
「そっか!二人とも仲良しだもんね!」
先日、篠崎さんから放課後阿久津君とバトンパスの練習をしてもいいか聞かれた。
別に俺に許可をとる必要はないのだが。
「篠崎君、もし忙しいのであれば無理してノルマを達成しなくてもいいよ?」
「いえ、個人的なものなので問題ありません」
つくづく多忙な人生を送る篠崎さんである。
「はい!」
「遅いです」
「はい!」
「今度は早いです」
放課後の校庭で篠崎風葉と阿久津仁はバトンパスの練習をしていた。
「ごめん。やっぱりうまくできないや」
「大丈夫です。以前よりは確実に良くなっています」
「そうかな」
「でも、うまくいく確率はまだまだ不安定ですね」
「そうだね」
「そういえば、篠崎さんと一ノ瀬君はすごく息があっているけどどうして?」
「どうでしょう。自然とできるので、そのようなことはあまり考えたことがなかったのですが。強いて言えば、相手の事を思ってバトンを渡すとかでしょうか?」
「なるほど、篠崎さん、もう一回お願いしていい?」
「別にかまいませんが、時間も時間なので今日はこれで最後で」
それぞれの位置について、阿久津が走り始める。
(相手の事を思ってバトンを渡す)
これまで何十回と練習してきたが、成功した回数は二、三回だ。
「篠崎さん!」
「阿久津さん。今のはとても良かったです」
「うん!僕も手ごたえあった!」
「コツでもつかみましたか?」
「え?あぁ、まぁそんな感じかな」
「そうですか。でも、油断は禁物ですよ?」
「そうだね!本番に向けて練習は続けなきゃだよね!」
「そうですね」
「あ、あの篠崎さん。体育祭の夜なんだけど、、、」
「すみません、阿久津さん。私、そろそろ部活に行かないと」
「あ、そうだよね。今日もありがとう篠崎さん」
「いえ、それでは」
部室に向かう篠崎風葉の後姿を、阿久津仁は眺めていた。
作者からの一言
おはようございます。
最近終始眠い日々が続いています。
良く寝ているんですけどね。
寝すぎもよくないんですね。
皆さんも睡眠は計画的に。
黒崎灰炉
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