第十九話 仲間?敵?

「以上が体育祭の種目一覧です。各自参加したい種目に、名前を書いておいてください。一人二つまで選択可能ですが、人数制限があるので人気な種目はじゃんけんで各自人数を絞っておいてください」


朝のホームルームで学級委員長の女子生徒が説明してくれた。 


「それと、阿久津君、一ノ瀬君、当山君、篠崎さん、柊さんはこの後私のところに集まってください」


そう言われたので俺たちは委員長のところに集まる。


「みんな集まったね」


相模さがみさん。どうしたの」


蓮が委員長に聞く。


(この人相模さんって名前だったのか)


「あのね、みんなは次のクラス対抗リレーでの選抜メンバーに選ばれました」


「クラス対抗リレー?」


美鈴が聞く。


「うん、この間の体育の時間に徒競走のタイム測ったでしょ?その男女各上位三名がこの選抜メンバーに選ばれるってこと」


「まって、男子は三人集まってるけど、女子は?」


「私が入るわ」


委員長が言う。


「なるほどねぇ」


(そういえば、前のホームルームでそんな話をしていたような)


「それに伴ってね、週に何度か放課後に集まってリレーの練習をしないといけないの」


「うーん、僕は基本的に生徒会があるし、他のみんなも部活があるから放課後は難しいかも」


「別に放課後じゃなくてもいいの。例えば昼休みとか」


確かに、俺もノルマ達成のために放課後はできるだけ部活に時間を割きたいところではある。


「僕はいいけど、みんなもそれでいい?」


「私は大丈夫よ」


「私もかまいません」


俺もうなずく。


「それじゃあ、今日のお昼グラウンド集合でいいかな?」


委員長がそう言って、解散になろうとしたその時。


「あの、、、」


「阿久津君、どうかしたの?」


これまで黙っていた三人目の男子生徒が話に入ってきた。


(確かこの人俺の前の席の人だよな)


入学式の日に俺の前に自己紹介していたはずだが、あの時はいろいろあって話を聞いていなかった。


「僕、この間の体育の時間の測定、選抜に入れるほど速くなかったと思うんだけど」


「あー、実はね、阿久津君は八位だったんだけど他の人がみんな受けてくれなかったの」


そんなことあるの?


「え、僕無理だよ。みんなほど足早くないし、絶対迷惑かけるし」


「そのために、練習するんだよ」


「でも、、、」


確かに、予想はしてなかっただろう。だが、三位から七位までの五人が辞退なんてことはあり得るのだろうか。


「大丈夫だよ。みんなで頑張って練習しよう」


蓮が声をかける。


「そうよ、私たちもハンデがあった方が燃えるし!」


美鈴さん。それはフォローになってない。


「はい。特別気にすることもないと思います。ここで阿久津さんが引き受けてくれなかったら、さらに次の人に回ってしまいます。」


篠崎さんが言うと、


「そう?じゃあ、篠崎さんが言うならやってみようかな」


「決まりね。今日の昼休みから特訓よ」


しかし、俺、美鈴、蓮、篠崎さんの四人が選抜に入るなんて。


運動部の奴、他にもいただろうに。



昼休み、


「じゃあ走順は、私、当山君、柊さん、阿久津君、篠崎さん、一ノ瀬君の順で決まりね」


(アンカーかい)


正直、責任重大なアンカーは担いたくないがじゃんけんで負けてしまった。


「それじゃあ、とりあえず走ってみようか」


それぞれが配置についたところで、相模さんが走り出した。


蓮、美鈴と順調に進んでいったところで、阿久津君にバトンが渡った。


遠目から見ていると、きれいなフォームをしている。


その後篠崎さんにバトンが渡り、俺のところまで来る。


バトンを受け取ってゴールまで走りきる。


「一分二十秒」


そこまで悪い記録ではないだろうが、良くもない。


「ごめん、僕が遅かったから」


「阿久津君は別に遅くないわ。問題はバトンパスね」


確かに彼の記録は蓮ほどではなかったが、少し練習すればいい線いくタイムだった。


「私から当山君、柊さんから阿久津君、阿久津君から篠崎さん。ここのバトンパスがスムーズではなかった気がするの」


「そうだね、僕もそこで結構時間ロスした気がした」


リレーで一番カギとなるポイントかもしれない。


「各々タイムは別に悪くないから、まずはバトンパスの練習から始めましょうか」


そう言って、それぞれバトンパスに移る。



「ちょっと、追いつけない!」


「ごめん!」


「阿久津さん、バトンを出すタイミングが少し遅いです」


「ごめん!」



「ふぅ、今日はあんまりタイム縮まなかったね」


「しょうがないんじゃない?初日だし」


「とにかく定期的に集まって、練習していこう!」



一日目の練習が終わった。


やはり、バトンパスが一番の鬼門になりそうだった。


それぞれ、教室に戻っていく。




「篠崎さん。ごめん、あんまりうまく渡せなかった」


「いえ、美鈴さんも言っていましたが、今日は初日です。これから練習していきましょう」


「あ、あのさ、これから放課後とかバトンパスの練習に付き合ってくれないかな?」


「私と阿久津さんの二人でですか?」


「うん、柊さんはバレー部の練習が忙しいって言ってたから」


「私も放課後は、部活があるので」


「あ、そうだよね」


「でも、部活前に少しだけなら大丈夫かもしれません」


「え!?本当?」


「はい。一応、一ノ瀬さんに確認をとってからですが」


「あ、一緒の部活なんだよね」


「はい」


「あの、二人はいつも一緒にいるみたいだけど、その、付き合ってたりするの?」


「いえ、一ノ瀬さんとはそういう関係ではありません」


「そうなんだね!」


「それでは、阿久津さん。また後で」


「うん、またね!」




作者からの一言


おはようございます。

最近トンボを見かけました。もう秋ですね。

でもまだまだ暑いですね。

そういえば、台風が近づいているみたいなので気を付けてくださいね。


                          黒崎灰炉       







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