第三十五話 それぞれの思いを抱えて

(大体準備できたな)


旅行の前日の夜、旅行に持っていく物をまとめていた。


長い旅行でもないし、ある程度のものは蓮の別荘に完備されているだろうから、そんなに大荷物を持っていく必要はないだろうが、念には念を入れるに越したことはない。


「凛君、準備できたの?」


まきなさんが歯を磨きながら、話しかけてきた。


{大体はまとまったかな}


俺がいない間、ムーが一人にならないようにまきなさんが家にいてくれる。


正直、仕事ばかりで休んでほしかったからちょうどいい。


「私は疲れたからもう寝ちゃうけど、明日から楽しんできてね」


そう言ってまきなさんは、寝室に向かっていった。


俺もそろそろ寝ようかと思い、自分の部屋に向かおうと思っていたところにスマホが鳴った。


(誰だこんな時間に)


見ると、蓮からのラインだった。




(ラインのトーク画面)


凛今大丈夫?  


                      別に大丈夫だけど


今から、いつもの公園来れない?


                    今からか?もう夜遅いし明日も早いぞ?


そうなんだけど、

ちょっと話したいことがあって。


                    分かった。







蓮がこんなことを言うのは珍しい。


どうしたのだろうか。


俺はマンションを出て、公園に向かった。


家から公園はそれほど距離はないので、すぐに着く。


むしろ、蓮のうちからの方が遠いと思うのだが。


公園に着くと、既に蓮はついていた。


{ずいぶんと速いな}


「ここから凛にラインしたからね」


{俺が来なかったらどうするつもりだったんだ?}


「凛は来てくれるでしょ?」


{寝てるかもしれないだろ?}


「それは考えてなかった」


蓮が座っている公園のベンチの横に少し距離を開けて座る。


「ついに明日だね」


{楽しみなのか?}


「まぁ、楽しみでもあるけどね」


{でもそんな楽しみ報告をするために、呼んだわけじゃないだろう?}


「まぁ、それでも良かったんだけどね」


蓮が笑いながら言う


「凛ありがとう。明日参加してくれて」


{いや、別に俺も嫌々参加するわけじゃないから}


「そっか」


{まぁ、多少緊張はあるけどな}


「風葉さんとのこと?」


{それ以外ないだろ}


「まぁね」


風が頬を撫でる。


夏の夜の風は心地が良い。


「明日からの旅行で、僕も次に進もうと思うんだ」


{次?何のことだ}


「まぁ、美鈴とのことかな」


少しの静寂ができる。


{え、何?そういう話?}


「凛が思っているようなことじゃないと思うよ?」


蓮が笑いながら言う。


{良く分からんが、お前たちの進展と俺になんか関係あるのか?}


「直接的にはあんまり関係ないけど、凛にはいずれ話さなくちゃいけないから」


{そうなのか?}


「その時が来たら、ちゃんとまた話すよ。今日はその宣言をしに来たんだ。逃げないようにね」


{俺は別に逃げんぞ?}


「僕が逃げ出さないようにだよ」


蓮は言う。


「みんな、次に進まないとね」


前も誰かが言ってた気がすることを蓮も言う。


「とにかく、話しは以上。来てくれてありがとう」


{え、もういいのか?}


「うん。明日も早いしね」


明日も早いのにわざわざ来たのだが。


{まぁいいや。おやすみ}


「おやすみ」


そう言って俺たちは帰った。





作者からの一言。


こんばんは。

大した理由ではないのですが、この話を一日分として投稿する気にならなかったので一日二本投稿です。

おそらく、一日二本投稿することは今後はないと思いますが、できるだけ毎日更新できるように頑張ります。

ここ数日、読んでくれる方がまた少しずつ増えているので嬉しいです。


                          黒崎灰炉














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