第三十話 変質するもの

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「二名で」


美鈴が答える。


何回やるんだこのくだり。


いつものあの喫茶店に、今日は美鈴と来ていた。


「私はミルクティーにするけど、凛は?」


{じゃあ、ブラックコーヒーで}


そして、いつもの注文になる。


ミルクティーが女子高生の中で、流行っているのだろうか。


「風葉ちゃんと喧嘩したんだって?」


{いや、喧嘩ではない}


「どういう事?」


{なんというか、、、}


俺は、これまでの事を美鈴に説明した。


「ふーん。確かに不思議な感じね」


{なんか別人になったみたいなんだよ}


「別人ね...」


美鈴はつぶやく。


{一応蓮に双子じゃないか聞いたけど、それは無いみたい}


「あなた、そんなこと聞いたの?」


{だって、同一人物とは思えないくらい急に態度変わるし}


「それはそうかもしれないけど」


美鈴はミルクティーを飲みながら続ける。


「何か怒らせるような事でもしたんじゃないの?」


{してない。仮にしてたとしても、急にそんなに態度変わるか?}


「それは、その内容によると思うけど?」


{そうかな?}


「少なくとも私ならあり得るわよ」


俺も一口珈琲を飲む。


{やっぱり、夏休み行くのやめようかな?}


「それって、みんなで遊ぶ約束したやつ?」


{あぁ、蓮に行く約束しちゃったんだけど、やっぱ行きづらいし}


「そう?私はいい機会だと思うわよ?」


{いい機会?}


「えぇ。どうせこのままだらだら過ごしてても、もやもやした気持ちだけが残るんだから、この機会に蟠りを解消しちゃえばいいじゃない」


{そんな簡単にいくかね}


「それは凛次第でしょ」


気が付けば、美鈴と自然に会話できるようになっていた。


最後にこんな自然な会話をしたのはいつだろうか?


{そういえば、今日は何で誘ってくれたんだ?}


「さぁね、なんとなくよ」


{いつもは俺と距離をとってたのに}


「そうね」


美鈴が言う。


「ねぇ、凛。私たち昔は仲良かったわよね?」


{そうだったかも}


「最後にこうして二人で話したのはいつか覚えてる?」


{いや、覚えてない}


「小学校五年生のころよ」


{そんな前か}


そう俺が言うと、美鈴は静かに笑った。


「えぇ。そんな前よ」


美鈴は続ける。


「子供の成長は早いわよね」


{え?まぁ、そうかもな}


「蓮も、私も成長したわ」


{そうだな}


「凛。もちろんあなたもね。不自然なほどに」


{何が言いたいんだ?}


「ねぇ、凛。さっき凛は、風葉ちゃんが別人みたいって言ったけど、凛もだいぶ変わったわよ」


{え?}


「それこそ別人みたいにね」


美鈴はミルクティーの最後の一口を飲み干して言う。


「凛。あなた、ブラックコーヒーなんて好きじゃなかったでしょ」





作者からの一言


おはようございます。本日は午後の投稿となります。

新たな台風が日本に上陸したみたいですね。

皆さんも外出には気を付けてください。 


                             黒崎灰炉









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