第二十一話 開幕!体育祭

「それではこれより、市立怜悧東高等学校体育祭を開会いたします」


一人の生徒の宣言とともに、俺たちの初めての高校の体育祭が幕を開けた。


生徒数が多いだけあって、校庭は生徒やその家族でごった返している。


「いやぁ、もう七月近いから熱いな」


そう言って杉山が話しかけてきた。


「凛は何の種目に参加するんだ?」


{玉転がしと、玉入れとリレー}


「え、お前もリレー選抜だったのかよ、文化部の癖に」


お前ということは、杉山も選抜に選ばれたのだろう。


このマンモス校で、こんなにも知り合いが選抜に入るなんて。


「他には誰が選抜入っているんだ?」


{蓮、美鈴、篠崎さん、阿久津君、相模さんだよ}


「え、あいつらも入ってんのかよ」


杉山が言う。


「まぁ、勝ったからと言ってなんかあるわけじゃないけど、勝負には勝ちたいもんだよな」


{それはそうだな}


「それはそうと、凛よ」


杉山が俺の肩をたたいていう。


「俺は今日、唯ちゃんを夜のフォークダンスに誘うぞぉぉぉぉぉ」


暑苦しい。


{そういえば前、昼飯の時にそんなこと言ってたな}


「あぁ。合宿の時にだいぶ仲良くなったからな」


{踊れるといいな}


「それでだ、凛。お前に協力してほしいことがあるんだが」


{なんだよ}


「俺が唯ちゃんをフォークダンスに誘うとき、お前も一緒にいてほしいんだ」


{なんでだよ}


「頼むよ凛!二人じゃ気まずいだろ」


{踊るときは結局二人になるだろ}


「踊るときはいいんだよ。誘うときが一番緊張するんだよ」


{まぁ、一緒にいるくらいなら別にいいけど}


「おぉ、わが友よ」


{一緒にいるだけだからな}


「分かってるって、じゃあ夕方あたり誘うから頼むな!」


{はいはい}


そう言って杉山が自分のクラスの場所に行こうとして、振り返る。


「あ、お前も篠崎ちゃんと頑張れよ!」


そう言って走り去ってしまった。


(何で篠崎さん?)





「凛君!おつかれー--」


お昼休み、俺はまきなさんとご飯を食べていた。


「すごいお弁当だね」


{まぁ、昨日の夕飯の残りもあるけど}


「えー、全然すごいよ。さっそくいただきまーす」


そう言ってまきなさんがお弁当を食べ始める。


「さすが凛君、私好みの味付けだよ」


そう言いながら、まきなさんが缶ビールを開ける。


{昼間からお酒?}


「いいじゃない、せっかくのお休みなんだから」


ビールを飲むまきなさんは幸せそうだ。


俺も弁当を食べることにする。


「凛君、あとは何の競技に出るの?」


{後は、クラス対抗リレーだけだよ}


「そっか、凛君小さいころから足早かったもんね」


{高校でも通用するとは思わなかったけど}


お昼を食べながら、しばらくまきなさんと話していると。


「一ノ瀬さん。お食事中すみません」


振り返ると、篠崎さんが立っていた。


{どうしたの?}


「もうすぐ、装飾部の店番の交代の時間なので呼びに来ました」


{あ、ごめん。忘れてた!}


「いえ、まだもう少し時間があるので大丈夫です」


{ごめん、まきなさん。俺行ってくる}


「あ、いってらっしゃーい。私も後でバザー覗きに行くね」


そう言って篠崎さんと、装飾部のバザーに向かう。




「あ、二人ともお疲れ様!」


店番をしていた唯が声をかけてきた。


「お疲れ様です。唯さん、売れ行きの方はどうですか?」


「それがね、かなり順調だよ!もう残り三分の一くらいになっちゃった」


「それはよかったです」


俺たちは唯と店番を代わった。


「順調そうでよかったですね」


{そうだね、この一か月頑張ってたから努力が報われた感じがするよね}


篠崎さんと話していると、


「あ、二人とも!」


そう言って話しかけてきたのは水島先生だった。


「あ、水島先生こんにちは」


「二人は装飾部だったんだね。先生も何か一つ買おうかな」


そう言って、先生は俺たちの装飾品に目をやる。


しばらく作品を見ていた水島先生だったが、


「これって...」


そう言って、俺が作成したペンダントを手に取った。


{それは、俺が作ったんです。結構な自信作ですよ}


「えぇ、そうみたいね」


そう言ってしばらく、ペンダントを見ていた先生は、


「それじゃあ、これを一ついただこうかしら」


「ありがとうございます」


俺が作ったペンダントを買って行ってくれた。


「一ノ瀬さんの作品また売れましたね」


{うん。あの作品は結構な自信作だったから嬉しいよ}


(あ、)


「どうしたんですか?」


{あのペンダント、ちょっと仕掛けがあるんだけど説明するの忘れちゃった}


「仕掛け?」


{うん。あのペンダント実は開くようになってて、中に小さなものを入れられる仕組みになっているんだけど。ちょっと、複雑な構造なんだよね}


「隠れた仕掛けなんですね」


(まぁ、今度会った時説明すればいいか)


その後二人で店番を続け、昼休みも終わるころには残り四つとなっていた。



そこに、


「あ、二人ともー」


そう言ってやってきたのは、蓮と美鈴だった。


「約束通り、風葉ちゃんの作品買いに来たわよ」


以前、ひと悶着あったときに二人がした約束を果たしに来たとのことだった。


「ありがとうございます。これが私の作った作品です」


そういって、篠崎さんは自分の作品を手渡す。


「すごい。とてもきれいね」


篠崎さんが、渡したの彼女が俺の家で作った銀色のブレスレットアンクルだった。


「それと、凛。貴方の作品ももらうわ」


と美鈴が続ける。


{え、俺の?}


「えぇ、あの時の事は私も反省してるし。その贖罪ってわけではないんだけど」


そういって、俺が作ったチョーカーを手に取る。


「あの時はごめんなさい」


あの時点ですでに謝られていたし、別に何も気にしていなかったのだが


{いや、別にいいよ}



美鈴は篠崎さんと俺の作品を買って行ってくれた。


「良かったですね、一ノ瀬さん」


{まぁ、良かったのかな}


その後、残りの二つも完売した。


遅れてやってきたまきなさんが嘆いていたが、まきなさんの分は後で俺が作ることにしよう。


午後はいよいよ、クラス対抗リレーがある。





作者らからの一言


おはようございます。

皆さんは、からいもの好きですか?

自分は結構好きです。でも辛いものって、体に悪そうな味しますよね。

辛みの正体は痛みって聞いた気がするんですけど、何で痛みにそんなに引き付けられるのでしょうか?


                             黒崎灰炉






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