第十四話 勉強合宿一日目 (夜)
「疲れたぁぁぁぁぁぁー!」
うるさい。
杉山が叫ぶ。
夕食後俺たちは、蓮の部屋に戻り今まで勉強していた。
時刻は十時半である。
「みんな、お疲れ様」
蓮が言う。
正直かなり疲れた、しかしだいぶ勉強することができた。
次のテストは中間テストなので、そこまで範囲は広くない。
今日と明日で、かなりの範囲をカバーできるだろう。
「皆さん、お茶を入れてきました」
「わーい、ありがとう。ふーちゃん」
大久保さんが言う。
「ふーちゃん?私の事ですか?」
篠崎さんが戸惑った様子で聞き返す。
「風葉の「風」からふーちゃん。駄目かな?」
「ダメというわけではないのですが...」
俺の時もそうだったが、大久保さんのネーミングセンスは何というか、絶妙なラインである。
「やった。じゃあこれからふーちゃんって呼ぶね!私の事も唯ってよんでいいからね!」
「はぁ」
篠崎さんが戸惑っている。
「あの!俺も大久保さんの事名前で呼んでもいいですか!?」
と、杉山が入ってくる。
「杉山君はダメ」
「え!?」
「ウソウソ、冗談だよ。もちろんいいよ。私も新之助君って呼ぶね」
「ありがとうございます!!」
「なんで敬語なの?」
良かったな杉山。大久保さんと仲良くなれて。
「あ、りんりんも私の事名前で呼んでね?呼び捨てでいいよ!」
私もですか。
まぁ、確かにいつまでも名字呼びは他人行儀な気もするし、大久保さんはもう友達なのだから普通だろう。
{わかったよ、唯}
そういうと「よし」と、大久保さんは言った。
「あ、そういえば今日みんなでやろうと思って花火持ってきたの!」
そういうと、唯はリュックの中から手持ち花火を出してきた。
「花火?まだ五月よ?」
美鈴が聞く
「去年の残りを持ってきたんだ。ちょっと季節を先取りというか」
「いいじゃん、みんなでやろうよ」
と杉山が続く。
こいつは、唯と一緒なら何でもいいのだろう。
「なら、中庭でやろうか」
蓮が提案してくれたので、みんなで中庭に移動する。
「久しぶりにやったけどきれいね」
「僕も小学生ぶりとかかも」
「唯ちゃん、火着けてあげるよ」
「あ、新之助君ありがとう!」
みんな、それぞれ花火を手に取って楽しんでいる。
俺も自分の分をとって火をつけてみる。
先端から緑の炎が燃え上がる
最後にやったのは、小学生の時かもしれない。
誰かと一緒にやった気がするんだが、誰だっただろうか。
そう思いながら、花火の火を見つめていると
「花火、きれいですね」
と篠崎さんが隣に来た。
いえいえ、貴方のほうが綺麗ですよ。
{篠崎さんは、こういう花火したことあるの?}
「はい、昔一度だけ」
篠崎さんの子供のころはどんな子だったのだろうか?
「あの二人、いい雰囲気ですね」
篠崎さんが、唯と杉山を見ながら言う。
{確かに、唯と杉山って今日初めてちゃんと話したはずなのに、もう仲良くなってるな}
「杉山さん、うまくいくといいですね」
杉山が唯の事を好きなのは、以前篠崎さんに話してしまった。
(まぁ、話さざる負えなかったんだ。許せ、友よ}
{そういえば、篠崎さんは彼氏とかいるの?}
そう俺が昼間気になったことを聞いてみる。
篠崎さんは少し驚いた後
「一ノ瀬さんには、私に彼氏がいるように見えるんですか?」
{いや、いてもおかしくないよなとは思うけど}
「そうですか」
ちょっと不機嫌そうに篠崎さんは言う。
褒めたつもりだったのだが。
「彼氏はいません。そういうのは、今は作らないようにしているんです」
そう篠崎さんは教えてくれた。
(まぁ、篠崎さん忙しそうだしな)
「ちなみに、一ノ瀬さんにも彼女がいないこと、いたことがないことも知っていますよ?」
(なぜそれを)
「蓮様から聞きました」
(俺のトップシークレットを、あの野郎)
「ついでに一ノ瀬さんの好きな女性のタイプも聞きました」
(俺のプライバシーは?)
「落ち着いた大人っぽい女性が好きなんですよね?」
(筒抜けである)
篠崎さんがにやにやしている。
「二人とも―!!こっち来て一緒に花火しよー」
と、唯に呼ばれた。
{唯が呼んでるし、行こうか}
「...そうですね」
「私の事は、名前で呼んでくれないんですか?」
{なんか言った?}
「何も言ってないです」
{そう?}
「ほら、一ノ瀬さん早く行きましょう!」
篠崎さんに手を引かれたので、俺たちもみんなに混ざることにした。
「ねぇ、夏になったらまたみんなで遊ぼうよ!また花火したり、海とかお祭りとか行ったりしてさ!」
唯がそう言うと、
「いいね、なんか遠くに旅行とか行きたくない?」
「それなら、僕のうちが所有している海辺の別荘とかどう?」
「まぁ、部活がない時なら別にいいけど」
「やったー!」
みんな乗り気である。
「そのためにも、次の中間テストと夏休み前の期末テスト、みんな頑張らないとね」
蓮が言う。
「うげぇ、休みまでにあと二回もあんのかよ」
「でもこのテストで赤点とったら、補習で夏休み遊べないよ?」
唯が言うと、
「頑張ります!」
現金なやつである。
「じゃあ、そのためにもまず明日の勉強会を頑張ろう!」
若干寒さが残る、晩春の花火も悪くなかった。
作者からの一言
おはようございます。
皆さんは今年の夏、花火しましたか?
自分は、手持ち花火なら線香花火が好きです。
でも線香花火って、海外の人には不評らしいですね。
線香花火に美しさを感じられるのは、日本人独特の感性なのでしょうか?
いずれにせよ、その感性を持っていてよかったなぁと思います。
星、ハート、フォロー、感想等よろしくお願いします。
黒崎灰炉
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