第三十八話 Blue in the sea

「うめぇー」


「うん。すごくおいしい」


「どうしたらこんなにパラパラにできるの?」


「プロね。プロ」


 あの後俺たちが作った、お昼ご飯をみんなで囲んでいた。


 ご飯を作るタイミングで篠崎さんと話そうと思ったが、思わぬ阿久津君の参戦で全く話せなかった。


 というより、よく考えたら料理を作っている間は、スマホが使えないのでそもそも会話ができないことに気が付かなかった。


 盲点でしたね。


「よーし。じゃあ飯食べ終わったらさっそく海行こうぜ」


「ここから海ってどのくらいなの?」


「歩いて十五分くらいかな?」


「もしかしてプライベートビーチってやつ?}


「さすがに違うよ」


 どうやら午後の予定は決まったっぽい。








昼食を取り終えた俺たちは、蓮の別荘から近いビーチに来ていた。


「いい天気だな!凛!」


(暑い)


「白い雲!青い空!輝く太陽!これぞ夏って感じだな!」


(熱い)


「俺のマリンシューズ底が三センチもあるんだよ」


(厚い)


 なにがやねん。




「みんなー。こっちでビーチバレーしよー」


「お、いいじゃん」


 一般の人用のビーチバレーコートがあったので、みんなでビーチバレーをして遊ぶことになった。


「よーし、八人だから四対四だな」


「美鈴ちゃんバレー部だから強そー」



 チーム決めの結果


 俺、杉山、美鈴、委員長


 蓮、阿久津君、篠崎さん、唯


 となった。



 

 なぜだろう。この試合、いろんな意味で負けてはいけない気がする。


 いや、負けたくない。


 長らく俺の中に眠っていた、闘争本能が目を覚ます。



「じゃあ始めるよー」

 

 掛け声とともに、ビーチボールが宙に上げられる。


(絶対勝つ)
















「うわー、負けたー」 


 最悪である


「あんたが、後先考えずにスパイク打ちまくるからでしょ!」


「ごめーん」


 美鈴という強力な仲間がいるにもかかわらず、あっけなく負けてしまった。


「それじゃあ、そっちのチームは約束通りジュースおごりね」


 実は、試合前ジュースを賭けていたのだった。




 そのあと、みんなでジュースを飲んだ後、海で泳ごうという話が出たが俺はパスした。


 泳げないというほどではないが、得意ではない。なにより、直射日光に当たりすぎたので、少し休みたかった。


 ビーチパラソルの下で休んでいると、


「私もいい?」


 そう言って隣に座ってきたのは美鈴だった。


{泳ぎに行かなくていいのか?}


「泳いだわよ。少しだけね。でもこの間、部活中に膝擦りむいて、塩水が染みるのよ」


 みると、美鈴の膝には絆創膏が貼ってあった。


「風葉ちゃんとはどうなの?」


{まだ、なにも}


「うじうじしてたら、あの子に取られちゃうわよ?」


{あの子って阿久津君の事?}


「彼、風葉ちゃんのこと好きなんでしょ?」


{知ってたのか}


「見てたらわかるわよ。まぁ、風葉ちゃんには、まだその気はないみたいだけどね」


{取られちゃうも何も、俺はただ関係を修復したいだけというか}


「そうだったわね」


 美鈴が言う。


「ま、私も人のこと言ってられないんだけどね」


{蓮とのことか?}


「知ってたの?」


{見てたらわかる}


「本当?」


{嘘。蓮から聞いた。詳しい内容は知らないけど}


「蓮らしいわね」


 美鈴は少し笑う。


「ま、お互い頑張りましょう。私たち自身のためにね」


{そうだな}


夏の風は塩の匂いがした。






作者からの一言


おはようございます。

皆さんは、海好きですか?

自分は嫌いではないのですが、以前友人たちと沖縄の海に行った際、アンボイナ貝という毒を持った気持ち悪い貝の存在を知り、怯えて楽しめなかった以来行ってないです。



                          黒崎灰炉


 




 




 

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