第18話 学院生活は順調です
入学式翌日、今日も張り切って馬車に乗り込んだ。
「セイラ、昨日のあの令嬢たちの無礼な発言、父上に話したら怒り狂っていたよ。すぐに抗議文を出した様だから、きっと今日からは大人しくなるはずだ」
そう言うと、ニヤリと笑ったお兄様。相変わらず性格が悪いが、それでも私を庇ってくれたものね。
「ありがとうございます、お兄様」
貴族学院に着き、早速教室に向かうと、私の元にやって来たのはサリー様とフェミナ様だ。また文句を言いに来たのか?そう思ったが
「昨日は失礼な事を言って、申し訳ございませんでした」
「本当にごめんなさい」
なぜか謝って来た2人。ただ、明らかに不服そうだ。きっと昨日お父様が抗議したのが効いたのだろう。
「こちらこそ、酷い事を言ってごめんなさい。さあ、もうこの話は終わりにしましょう。せっかく同じクラスになったのだから、仲良くしましょうね」
そう言ったのだけれど、なぜか不服そうな顔をして向こうに行ってしまった。何なの、あの子たち。感じが悪いわね。
「セイラ様、おはようございます。あの子たち、今まで婚約者候補として本当に傲慢な態度を取っていましたの。自分たちが一番偉いと勘違いしていらしたのよ。それが昨日あなた様がいらっしゃって、さらにミューディレス公爵令息様にも注意されて、面白くないのでしょう」
「マリーの言う通りですわ。でも私たちは、セイラ様がいらっしゃってくださって嬉しいです。私も少しですが、セイラ様の協会に募金をさせていただきましたわ」
「私もです」
「俺も」
「僕も」
「まあ、皆様。ありがとうございます。嬉しいですわ。あの、もしよろしければ私とお友達になって頂けますか?私、昔は恥ずかしいくらい我が儘で傲慢な性格だったでしょう?その後も社交界から離れておりましたし、お友達がいなくて」
「まあ、セイラ様とお友達になれるなんて、光栄ですわ。ぜひお願いします」
私の周りに沢山の令嬢や令息が集まってきてくれた。きっと中には、我が家の権力に惹かれて集まってきている人もいるだろう。でも、今はそれでもいい。この中から、本当の友達を見つけていこう。そう思った。
「そうだわ、せっかくお友達になったのですから、今度我が家に遊びに来てください。両親もきっと喜びますわ」
「まあ、宜しいのですか?ぜひ遊びに行かせていただきますわ」
その後も、クラスの皆と一緒に過ごす。食堂に行きご飯を食べたり、授業を受けたりして過ごした。
翌日も、そのまた翌日も、気が付くとあっという間に1ヶ月が過ぎていた。最初は公爵令嬢として気を使われることも多かったが、いつの間にか敬語も使わなくなった。と言うより、私が皆にお願いして、敬語を使わない様にしてもらったのだが。やっぱり敬語を使われると、距離がある気がして嫌なのよね。
今日も令嬢たちと一緒に、学院の中庭でティータイムだ。公爵家から持ってきたお茶とお菓子を食べながら、話に花を咲かせる。
令嬢と言っても、年頃の女の子。やっぱり話題は殿方の事だ。
「セイラは婚約者とかどうするつもり?やっぱりライム殿下?」
「なぜそこで殿下の名前が出てくるの?私はね、昔“セイラとだけは結婚したくない”と言われたのよ。それに、殿下には婚約者候補が3人もいるじゃない」
「そんなの、昔の話でしょう。それに、近々婚約者候補たちの話も、一旦白紙に戻る事が決まった様よ。どうも彼女たち3人の素行があまりにも悪く、他の貴族からクレームも沢山来ていた様だしね。王妃様も、乗り気ではないみたいだし」
結局白紙に戻るのか…
「でも白紙に戻ったところで、彼女たちの中から婚約者が選ばれるかもしれないわ」
「それはないのではなくって?あれだけ評判が悪いのよ。それとは裏腹に、あなたの評判はうなぎのぼり。次期王妃様はセイラに決まりと考えている貴族も多いのよ。それに、あなたの家にも王家から婚約の打診が行っているのではなくって?」
「そんな話は聞いていないわ。たとえそうだとしても、お父様がきっと首を縦に振らないわね。それに私もあれだけ拒絶された殿下と婚約何て嫌よ」
私はただ、ギャフンと言わせたいだけなのだ。ライムと婚約何てしたら、ギャフンと言わせられないし、何より嫌だ。
「そうかしら?でも、絶対に殿下はセイラに気があるわよ。いつも熱烈な視線で見つめているもの」
熱烈な視線?そんなもの、感じた事がない。でも、今ならギャフンと言わせられるかしら?でも、どうやってギャフンと言わせる?よく考えたら、詳しく考えた事がなかったわ。う~ん…
やっぱり告白されたところで、バシッと断る事よね。よし、どうやらみんなの話では、私に気がある事は間違いない様だ。でも、どうやって告白させるのかしら?う~ん。この際だから、別の婚約者を作る?それもなんだか微妙よね。
「セイラ、難しい顔をしてどうしたの?」
「いいえ、何でもないの。でも、今のところ殿下と私が婚約する事はないから。それだけははっきり言っておくわ」
友人たちにはっきりと告げる。なんだかんだで学院生活が楽しくて、ついライムギャフン大作戦を忘れてしまいそうになる。でも、私はライムをギャフンと言わせるために、ずっと努力してきたのだ。これだけは、何が何でも成し遂げないと!
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