第4話 隣国の修道院に行く事になりました
性格改善が始まってから半年、最近では随分と怒鳴る事もなくなった。それでも、未だに感情を抑えきれず、怒鳴ってしまう事もある。
ただメイドたちも随分と強くなり、私が怒鳴るたびに鏡を見せてくるため、これ以上は怒鳴れない。もちろん、マナーやダンスレッスンや、勉強にも励んでいる。
そのお陰か、随分と理想の令嬢らしくなってきた。このままいけば、ライムをギャフンと言わせられる日々も近いかもしれない。そう思っていたのだが…
珍しくお兄様に呼び出され、お兄様の部屋へと向かう。
コンコン
「お兄様、呼んだ?」
扉を開けると、椅子に座り本を読んでいるお兄様の姿が。
「セイラ、目上の人に話しかけるときは、敬語を使え。たとえ家族であってもだ!」
すかさず文句を言うお兄様。相変わらず感じが悪い。こっちも言い返したいのを必死に抑え、極力冷静を装う。
「それはごめんなさい。どれで、何の御用ですか?」
「セイラにしては、随分とまともになって来たな。シャティに聞いたぞ。お前、王太子殿下の誕生日の時に、拒絶されたことをまだ根に持っているらしいな。それで完璧な令嬢になって、王太子殿下を見返したいそうじゃないか」
シャティたら、お兄様にまで話しちゃうなんて。おしゃべりなんだから!そばに居たシャティをキッとにらむと、すかさず鏡を私の方に向けて来た。もう、こうすると私が怒らないと思っているのだから、嫌になるわ。
「王太子殿下を見返したいと言う歪んだ動機は置いておいて、今までの我が儘っぷりを改善し、まともな人間になろうと言う心意気は気に入った。でも、お前は所詮公爵令嬢。この家にいる限り、王太子殿下の心を掴めるような人間にはなれない。こそでだな、俺が直々に斡旋組合に頼んで、特別に修道院に入れてもらえる事になった。隣国の修道院だ」
「どうしてですか?今は確かにまだ感情が抑えきれない事もありますが、随分と我慢しております。それにお礼や謝罪もしっかりしております。わざわざ修道院に入らなくても…」
「いいや、ダメだ!そもそも王太子殿下は、慈悲深いお方だ。定期的に修道院や孤児院にも足を運んでいらっしゃる。お前、一度でも修道院や孤児院に行った事があるのか?ないだろう?こんな公爵家でぬくぬくと生きていては、王太子殿下を見返す事なんて出来ないぞ!」
確かにお兄様の言う通り、公爵家に居たらどうしても我が儘を言ってしまう。でも、だからと言って修道院に何て、さすがに行きたくはないわ…
「お前の気持ちはその程度だったんだな。まあいい、明日まで考える時間をやろう。これがお前がお世話になる修道院の詳しい資料だ」
お兄様から資料を受け取り、部屋に戻って来た。正直乗り気にはなれないが、一応資料を目に通す。何々、ここの修道院は孤児院と同じ敷地内にあり、シスターたちが子供たちの面倒を見ているのか。
子供…そもそも私もまだ12歳の子供だ。私の様な子供が、修道院に行っても大丈夫なのかしら?
「お嬢様、確かに修道院に入るという事は、今までの生活と180度変わります。大変な事も多いでしょう。でも、修道院で平民たちや孤児たちと苦楽を共にすることで、必ずお嬢様にとってプラスに働くと思うのです」
頭を抱えている私に話しかけて来たのはシャティだ。
「それはそうかもしれないけれど、そもそも私はまだ12歳よ。12歳の子供が、修道院になんて行ってもいいのかしら?」
「修道院は、年齢制限はありませんわ。そもそもお嬢様は、王太子殿下を見返したいのですよね?それなのに、修道院に行くのが嫌だなんて、お嬢様の思いはその程度のものだったのですか?」
うっ…それを言われると辛い。確かに私は、何が何でもライムを見返したい。
「わかったわ、シャティ。私、修道院に行くわ」
「それでこそお嬢様です。もちろん私も付いていきますから、ご安心ください」
そう言ってにっこり笑ったシャティ。なんだかシャティに丸め込まれた感は否定できないが、ライムをギャフンと言わせられるのなら、何だってやってやる!
そうと決まればこうしちゃいられない。早速お兄様に、修道院へ行く事を伝えた。さすがに両親には修道院に行くという訳には行かないので、隣国に留学をするという事で話はまとまった。ただ、私も来年には貴族学院入学が控えているので、1年間と言う期間限定でお世話になる事になった。
貴族学院にはライムも入学する。この1年が勝負なのだ。隣国の修道院に行くと言う事で、不安しかないが、シャティもいるし何とかなるだろう。
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