第41話 2人の処分が決まった様です

リハビリで汗を流した後は、皆が書いてくれたノートに目を通す。カラフルなペンを使って、分かりやすくノートをまとめてくれていた。さらに、要点もわかりやすく記載されている。


そして、交換ノートにも目を通す。最初のページには、クラス皆からのメッセージが書かれていた。そのメッセージを読んだ時、心が温かいもので包まれていく。ただ…やはりここにも、サリーとフェミナのメッセージはなかった。


きっと公爵令嬢でもある私を殺害しようとした罪で、今頃牢に入れられているのだろう。このままいけば、極刑なんて事も…きっとお父様とお兄様の事だ。何が何でも、2人の実家を追い込みつつ、2人を極刑に処す様、陛下にも強く訴えるだろう。


でも…


その時だった。


「お嬢様、サフィール殿下がお見えです」


「まあ、サフィール殿下が?わかったわ、すぐに行くわ」


そういえば、今日クラスの皆が来てくれたとき、サフィール殿下とライムはいなかったわよね。きっと今回の事で、バタバタしているのだろう。急いで車いすに乗り込み、客間へと向かう。


「サフィール殿下、わざわざ来てくださったのですね」


「やあ、セイラ。元気そうでよかったよ。今日はクラスの皆が君を訪ねると言っていたが、一緒に来られなくてすまない。今王宮内は、少しバタバタしていてね。僕は他国の王太子だが、今回の事件の関係者として関わらせてもらっているんだ。ライム殿下ももちろん、中心になって参加しているよ。それで、中々時間がなくてね」


なるほど、そんな忙しい中、わざわざ来てくれたのか。


「お忙しい中、わざわざ来てくださったのですね。ありがとうございます」


「僕がセイラに会いたかったんだ。随分と元気そうだね。よかったよ」


そう言ってにっこり笑ったサフィール殿下。せっかくなので、お茶でもと思ったのだが…


「君の元気そうな顔も見たし、そろそろ帰るよ」


「えっ、今いらしたばかりなのに…」


さすがに帰るには早すぎるだろう。


「すまない、まだやらなければいけない事が残っていてね。セイラの元気そうな顔が見られたから、僕はもう満足だよ。また明日来るからね」


そう言うと、急ぎ足で帰って行った。本当に私の顔を見に来ただけの様だ。


その後、晩御飯まで再びシャティと一緒に歩く練習を行った。そして夕飯の時間になり、車いすで食堂へと向かう。


「あら?お父様とお兄様は、まだ帰って来ていないのですか?」


食堂には、なぜかお母様しかいなかった。


「そうみたいね。きっと色々と話し合う事があるのでしょう。さあ、セイラ。先に食べていましょう」


きっと今回の事件について、話し合っているのだろう。という事は…

食事を済ませ、お母様と食後のティータイムを楽しんでいる時に、お父様とお兄様が帰って来た。シャティに連れて行ってもらい、お父様とお兄様のところに向かう。すると…


「あなた、それで、セイラの命を狙った令嬢たちの処分は決まったの?」


「その事なんだが、実は揉めていてね。私とジャックは、2人の極刑と、侯爵家の取り潰しを求めているのだが、陛下がさすがにそれはやりすぎだと言っていて。ただ珍しく、ライム殿下が私側についていてくれているのだが…問題はサフィール殿下だ。“きっと令嬢たちを極刑にすれば、セイラが悲しむ”そう言って、修道院送りを提案しているんだ。他国の、それも大国でもあるクレーション王国の王太子の発言を、無視できなくてね…」


「そんな、サフィール殿下はセイラがあんな目にあったというのに、加害者側の令嬢の肩を持っているの?見損なったわ!なんて人なの!」


「そうだな。セイラの為にも、何が何でもあの令嬢たちは生かしてはおけない!明日、強く抗議をするよ」


王宮でそんな話しをしていたのね。


「シャティ、お願い、このまま部屋に入って」


「ですが…」


「いいから、早く!」


私の言葉に、しぶしぶ扉を開けたシャティ。


「セイラ、お前…」


私の登場に、両親が固まっている。


「お父様、お話しはすべて聞きましたわ。私からもお願いします。サリーとフェミナを極刑に処さないでください。確かに彼女たちは、私の命を狙いました。でも…それでも、あの子たちも私の大切なクラスメートなのです。どうかお願いします。彼女たちに、もう一度生きるチャンスを与えてあげて下さい」


お父様に向かって、必死に頭を下げた。何度も何度も。


「セイラ…お前はなんて優しい子なんだ!お前をこんな目に合わせたあの令嬢たちに、情けをかけるだなんて…でも」


「もしあの2人が極刑になったら、きっと私は自責の念に駆られると思うのです。私のせいで、彼女たちが殺されてしまったと…ですから、私を救うためにも、どうかお願いします」


きっとサリーとフェミナが極刑に処されたら、心のどこかで蟠りが残るだろう。自分さえいなければ、2人は死ぬことはなかったのだと。それに彼女たちはまだ14歳、人生いくらでもやり直せるはずだ。そのチャンスを、与えてあげて欲しい。


「わかったよ、セイラがそう言うなら、明日陛下にそう伝えよう」


「ありがとうございます!お父様!」


翌日、お父様が早速陛下に伝えてくれた様で、彼女たちは修道院に送られることが決まった。ただ、この国で一番厳しいと言われている修道院ではあるが…まあ、修道院で1年過ごした経験者として、あそこも言うほど悪くはない。


さらに2人の実家でもある侯爵家から、莫大な慰謝料が支払われたと聞いた。さすがにこの国1番の権力者、ミューディレス公爵令嬢を亡き者にしようとしたのだ。これから色々と大変だろうが、そこは私がどうこう出来る事ではない。


とにかくこれでこの事件も、ひとまず決着がついたのであった。

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