第40話 クラスの友人たちも様子を見に来てくれました

その後、サフィール殿下とライムを見送ると、早速リハビリ開始だ。お医者様の指示に従い、まずは硬直した筋肉を優しくほぐし、そしてゆっくりと動かす練習を行う。


筋肉をほぐすのは、お父様が雇ってくれた専属の医者様が行ってくれる。


「このハーブには、筋肉の緊張をほぐす働きがあります。このハーブ湯に足を付けてマッサージをすると、より効果的なのです」


そう言って私の足をマッサージしてくれるお医者様。隣でシャティが、真剣な表情で見つめている。マッサージの後は、足を動かす練習と共に、歩く練習も行う。やはり、思う様に足が動かせず、何度も転びそうになる。


そんな私をずっと側で支えてくれるシャティ。シャティがいるだけで、本当に心強い。必死にリハビリを行う事1時間。


「お嬢様、今日はこの辺にしておきましょう。無理は禁物です。毎日少しずつ続けることが大切ですよ」


お医者様にそう言われ、とりあえず今日のリハビリは終了だ。そのまま部屋に戻り、湯あみをした。それでもじっとしていられない私は、部屋でも1人歩く練習をする。


「キャー」


でもうまく出来ずに、転んでしまった。


「お嬢様、大丈夫ですか?お怪我はございませんか?」


私の悲鳴を聞きつけ、シャティが飛んできた。


「大丈夫よ。心配をかけてごめんなさい。早く歩ける様になりたくて、つい…」


「お気持ちはわかりますが、どうか1人の時には行わないでください。お怪我でもされたらどうするのですか?いいですか?必ず私がいるときに行ってください」


「わかったわ、ごめんなさい」


この日の夜、シャティが早速お医者様から教えてもらったマッサージを行ってくれた。


「お嬢様の足が少しでも動くようになりますように」


小声でつぶやくシャティ。きっと無意識に呟いているのだろう。そんなシャティを見たら、私ももっと頑張ろうという気持ちにさせてくれる。


マッサージの後は、ベッドに入る。ここでも、足を動かす練習をする。でも…やっぱり動かない。わかっていても、ショックだ。とにかく、リハビリを気長に行うしかなさそうね。そう思いながら、眠りについた。


翌日

「セイラ、調子はどう?」


やって来てくれたのは、クラスメートたちだ。わざわざ私を心配して来てくれた様だ。


「まあ、皆、わざわざ来てくれたのね。ありがとう」


「それで、様子はどうなの?ごめんなさい、あの時近くにいたのに、あなたを守れなかったわ」


悲しそうにそう呟いたのは、アイリだ。隣でマリーも辛そうな顔をしている。


「足は…動かなくて。でも、今リハビリをしているところだから、大丈夫よ。それに、あなたのせいじゃないわ。わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。さあ、お茶にしましょう。シャティ、皆にお茶を出して」


わざわざお見舞いに来てくれた皆に、お茶を振舞う。今はまだ車いすで生活している事、上手に歩ける様になるために、リハビリを始めた事などを話した。


「そう…やっぱり後遺症が残ってしまったのね…ねえ、セイラ。学院はいつから来られそうなの?セイラさえ良ければ、車いすは私たちが押すわよ」


「ありがとう、アイリ。そうね、もう少しうまく歩ける様になったら、学院にも復学しようと思っているわ。だってまた、皆と一緒に過ごしたいものね」


「そうよ、その意気よ。私たち、あなたが学院に戻って来てくれる日を、ずっと待っているからね。そうそう、これ、授業のノートよ。あなたは公爵令嬢だから、家庭教師も雇えるだろうけれど、私たちもあなたの為に何かしたいと思って。皆で相談して、授業のノートをとる事にしたの。それからね、これ、交換ノートよ。その日あったことを私たちが書くから、その返事を書いてくれると嬉しいな。もちろん、セイラが負担にならないペースでいいのよ」


そう言って、数冊の可愛らしいノートを私に渡してくれた。そこには、授業の内容が細かく書かれていた。さらに、今日までの出来事をまとめたノートまである。そこには、クラス皆からの励ましの言葉も書かれていた。


「皆…私の為に、ありがとう…」


嬉しくて、どうしても溢れる涙を我慢する事が出来なかった。そんな私の背中をそっと撫でてくれる友人たち。


私はいつの間にか、たくさんの友人たちにも支えられていたのね。それが嬉しくてたまらないのだ。


「さあ、セイラ。いつまでも泣いていないで、せっかく皆が集まったのだもの。今日は学院の話しをしましょう。そうそう、担任のドナウド先生がね。今度結婚するそうなのよ」


「まあ、あのドナウド先生が?それは本当?」


「ええ、本当よ。それも相手は伯爵令嬢なのですって。まだ誰だかははっきり教えてくれなくてね。ケチでしょう?」


そう言って笑ったマリー。その後も、学院での出来事を詳しく話してくれた友人たち。ただ、やはりサリーとフェミナの事は、誰もふれなかった。


「それじゃあセイラ、また来るわね」


そう言って、皆帰っていった。なんだか久しぶりに皆と話しをして、学院に行っている様な気持ちになった。私も早く歩ける様になって、学院に行きたいわ。そんな私を見たお母様が


「セイラ、今日は皆が来てくれてよかったわね。今日のあなた、とても楽しそうだったもの。本当に、いい友人を持ったわね」


私の肩に手を置きながら、嬉しそうに笑っていた。


「私は本当に、友人に恵まれていると思いますわ。もしあの子たちが何か困ったことがあったら、必ず助けるつもりです。さあ、もっとリハビリを頑張って、早く学院に復帰できる様に頑張らないと」


今日皆が来てくれて、俄然やる気が出て来た。よし、早速今からリハビリ開始だ。シャティを連れ、張り切ってリハビリを開始したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る