第42話 久しぶりに孤児院に行きました
毒蛇にかまれてから、1ヶ月半が過ぎた。毎日一生懸命リハビリを続けた結果、なんとか人で歩ける様になった。ただ、やはりまだ足の感覚は戻らないので、杖を突きながら歩いているが、それでも随分と進歩した。
そして事件以降、毎日クラスの誰かが我が家に訪ねてくれ、今日会った事を事細かく教えてくれている。私が学院に戻った時に、話題についていける様にと、本当に細かく教えてくれるのだ。そのお陰で、なんだか自分も貴族学院に通っているような気になる。
さらにサフィール殿下も、毎日様子を見に来てくれている。私の為に、自国から取り寄せた薬なども持ってきてくれている。
“今あの毒蛇について、色々と研究をしているんだ。きっと君の足もいつか治るよ”
そう言って、いつも私の足を優しく撫でてくれる。時にはリハビリに付き合ってくれることもある。本当にサフィール殿下には、感謝してもしきれない。もちろん、ライムも定期的に我が家に様子を見に来てくれている。
ただライムは忙しい様で、すぐに帰ってしまうが、それでも時間を見つけて様子を見に来てくれるのは、やはり嬉しい。
ちなみに、なぜか王妃様までお見舞いに来てくれた。どうやら足にハンデを負っても、私をライムのお嫁さんにしたい様だ。もしもの時は側室を迎えるから、気にせずに嫁いできて欲しいと言われた。
その言葉に憤慨したお母様によって、さりげなく追い返された王妃様。相変わらずね…
そして今日は、サフィール殿下と一緒に、久しぶりに孤児院に行く事になった。もちろんこんな足なので、思う様には歩けない。それでも子供たちの顔を見れば、私が少しでも元気になるのではないかと、提案してくれたのだ。
久しぶりのお出かけ、それも子供たちに会えるとあって、朝からワクワクしている。ただそれと同時に、万が一子供たちが受け入れてくれなかったらどうしよう…そんな思いもある。
「お嬢様、サフィール殿下がいらっしゃいましたよ」
「ありがとう、今行くわ」
杖を突きながら、ゆっくりと外に出る。すると、私の姿を見つけたサフィール殿下が飛んできてくれた。
「セイラ、おはよう。さあ、早速行こうか?」
そう言うと、何を思ったのか私を抱きかかえたのだ。
「サフィール殿下!一体何を…」
完全に動揺する私に
「だって、馬車には段差があるだろう?万が一可愛いセイラが転んで怪我でもしたら大変だからね」
そう言ってにっこり笑ったのだ。そもそも、家族や使用人以外の男性に抱きかかえられるなんて、初めてだわ。それにしても、サフィール殿下の体って、結構がっちりしているのね。それに、殿下の腕の中は温かくて落ち着く…て、私は何を考えているのかしら?恥ずかしいわ!
その時だった。
「サフィール殿下、僕を置いて行くなんて酷いじゃないか!それも、セイラを抱っこして!今すぐセイラから離れろ」
ものすごい勢いでやって来たのは、ライムだ。
「ライム殿下、君は今日孤児院に来ないと言ったではないか」
「確かに行かないつもりだった。でも、セイラが一緒なら話しは別だ。さあ、セイラ。僕のところにおいで」
そう言うと、サフィール殿下から私を奪い取ろうとしたライム。それをスルリとかわしたサフィール殿下は、そのまま馬車に乗り込み、椅子に座らせてくれると、すかさず隣に座った。
すかさず馬車に乗り込んでくるライム。いつもの様に、私の隣に座ろうとしたのだが…
生憎壁際ギリギリに座っていた為、隣に座る事が出来ない。仕方なく、向かいに座っていた。
「サフィール殿下、抜け駆けはよしてくれ。そもそも、僕に内緒で毎日セイラに会いに行っていたそうじゃないか?」
「セイラに会いに行くのに、いちいち君の許可はいらないだろう?とにかくギャーギャー騒がないでくれ。セイラも困っているだろう」
相変わらず喧嘩を繰り返す2人。そうしている間に、孤児院に着いた。再びサフィール殿下が私を抱きかかえ、馬車からおろしてくれた。隣でライムがギャーギャー文句を言っていたが、スルーしておいた。
自分の足で、ゆっくりと孤児院に入って行く。すぐに私たちの元にやってきてくれたのは、院長だ。
「ミューディレス公爵令嬢様、お久しぶりですわ。最近姿をお見せにならなかったので、心配…」
私の足を見て固まる院長。
「実は見ての通り、足を怪我してしまいまして。中々来られずにごめんなさい。今日は子供たちに会いに来ましたの」
「まあ、そうでしたか。いつも通り、中におります。どうぞ」
怪我の事に触れてはいけないと思ったのだろう。早速子供たちの元に案内してくれた。
「あっ!セイラおねえちゃんだ。サフィおにいちゃんとラムおにいちゃんもいる」
嬉しそうに私たちの元にやって来た子供たち。
「あれ?おねえちゃん、あしどうしたの?おけが?」
私の足を見て、不思議そうに見つめる子供たち。
「そうなの、ちょっと足を怪我してしまって。あまり上手に歩けないの」
「そうなの?だいじょうぶ?それじゃあ、こっちでごほんをよんで」
早速子供たちに連れられ、部屋の中に入って行く。私がうまく歩けない事を理解したのか、ゆっくり歩調を合わせてくれる。中には私を支えようと、手を添えている子供たちまでいる。なんて優しい子たちなのかしら。
さらに
「おねえちゃん、あしいたい?」
そう言って、私の足を優しく撫でてくれるのだ。
「ありがとう、あなたたちはとても優しいのね」
心の中が温かい物で包まれ、そのまま子供たちを抱きしめた。私ったら何を不安がっていたのかしら?優しい子供たちだもの、きっと心配してくれるはずなのにね。
その後は、子供たちに本を読み聞かせたり、字を教えたりして、久しぶりに楽しい時間を過ごしたのであった。
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