第36話 楽しいピクニックのはずが…
お花畑に着くと、本当にたくさんの花々が咲き乱れていた。
「なんて綺麗なのかしら…こんなに綺麗に咲いていると、なんだか摘むのが可哀そうになるわね」
「そうね。でも、せっかくだから、花冠を作りましょう」
「私、花冠って作ったことがないの。作り方を教えてくれる?」
「もちろんよ、一緒に作りましょう」
早速アイリに花冠の作り方を教わろうとした時だった。
「セイラ、アイリ嬢も。そろそろお昼ご飯にしよう」
サフィール殿下とライムが呼びに来てくれた。そういえば、お腹がペコペコだわ。遠くの方にいたサリーやフェミナたちも呼び、一度池の方まで戻ってきた。既にメイドたちが、食事の準備を整えてくれていた。
今日はピクニックという事もあり、シートを敷いてその上に座って食べるのだ。なんだか地べたに座るのって、不思議な感じね。そう思いながら、座り込んだ。
ここでももちろん、両端にはサフィール殿下とライムが陣取っている。
「セイラ、このサンドウィッチ、美味しいよ」
「こっちの一口ステーキも食べて」
次々と私に食事を渡す2人。お願い、自分のペースで食べさせて!!
「2人とも、ありがとうございます。でも、自分で食べますので大丈夫ですわ。ほら、2人も食べないと」
そう言って、やんわりと私にはこれ以上構わないでくれと伝えた。本当に、どうしてこうも2人で張り合うのかしら…
食後、皆でティータイムを楽しんだ。
「せっかくこんなにも綺麗な場所に来たのですもの。もう一度、お花畑に行きましょう。さあ、セイラ」
そう言って私の腕を掴んだフェミナ。確かにこんなところでずっとお茶をしていても仕方ないものね。
「そうね、行きましょう。私、花冠を作りたいのだったわ」
「それなら、私が教えてあげるわ」
そう言ってにっこり笑ったのはサリーだ。
「ありがとう、それじゃあ、早速行きましょう」
「待って、私たちも行くわ」
3人で行こうとした時、マリーとアイリも付いてきた。
「僕たちも…」
「お花畑に行くのですよ。男性陣はここにいて下さい」
サフィール殿下とライムも付いて来ようとしたのだが、すかさずフェミナが止めていた。2人が来ると、私にベッタリだものね…
早速アイリやフェミナに教えてもらいながら、花冠を作っていく。お花をクロスさせ、クルリと回すだけとの事だが、不器用な私は、なぜかお花がちぎれてしまったり、途中でほつれてしまっていうまくいかない。
「どうして私って、こんなに不器用なのかしら…皆上手に作っているのに…」
「慣れればそのうち上手になるわよ。ほら、これはセイラにあげるわ」
そう言って、私の頭に花冠を乗せてくれたアイリ。
「ありがとう、アイリ。それにしても、アイリはとても器用ね。本当に上手に出来ているわ」
ついアイリが作ってくれた花冠を見つけてしまう。それに比べ、私のは…
その時だった。
「キャー、大きな蛇がいるわ」
大声で叫んだのはサリーだ。蛇ですって!そう言えば、ライムがこの森には毒蛇がいると言っていたわね。護衛騎士たちも、サリーの方に飛んでいった。
「痛っ!!」
何かにかまれたような激痛が、左足を襲った。ふと足元を見ると、そこにいたのは…
「キャー、こっちにも蛇がいるわ」
体長20センチほどの蛇が、私の足元にいたのだ。それにしても、何なの、この蛇。とてもカラフルな色をしているわ。図鑑で見た事があったけれど、こんなカラフルな蛇は乗っていなかった。初めて蛇を見たけれど、ちょっと気持ち悪いわね…
「お嬢様!!大丈夫ですか?誰か!!今すぐ医師を!」
なぜか近くにいたシャティが大声で叫び、さらに近くにいた蛇の首元をがっちりつかんでいる。いつも冷静なシャティが、あんなに大きな声を出すなんて。それに、蛇まで掴んでいるわ。あの子、修道院にいた時も逞しかったものね…
自分でもびっくりする程、冷静にシャティを分析している。そんな私とは裏腹に、周りは大騒ぎだ。
あぁ…何だろう、息が苦しくなってきた。それに、頭もボーっとする。
「セイラ!大丈夫か?一体どうしたんだ?」
向こうからすごい勢いで走って来るサフィール殿下とライム。後ろからは、念のため付いてきていた医師の姿も。なんだか意識が朦朧としてきた…
「セイラ、大丈夫?しっかりして」
側で泣きそうな顔のマリーとアイリが、私を必死に支えてくれている。なぜか体に力が入らず、自力で起きていられないのだ。
「大変です!お嬢様が、毒蛇に噛まれました!この蛇です!」
シャティがお医者様に必死に訴えている。毒蛇ですって…私、毒蛇に噛まれたのね。ダメだ、意識が朦朧とする…
「セイラ、しっかりしろ!今すぐ解毒剤を!早くしろ!」
サフィール殿下とライムが、真剣な表情で叫んでいる。
もうダメ…
私はそのまま意識を手放したのであった。
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