第46話 私の出した結論【前半】

「もうすぐお昼ですね。さあ、食堂へ」


シャティに連れられ食堂に向かうと、お父様とお母様、お兄様がいた。きっと皆も、私が王太子2人に告白されたことを知っているのだろう。


サフィール殿下とライムの事を考えると、どうしても食事が喉を通らない。結局、ほとんど食事が出来ないまま昼食は終了した。そんな私を見たお母様が、中庭でお茶をしようと誘ってくれた。


「セイラ、あなた、サフィール殿下とライム殿下に告白されたのですってね。それで悩んでいるのでしょう?」


「ええ…」


「あなたにとって2人は、とても大切な人なのでしょう?悩む気持ちもわかるわ。でも、もう答えは出ているのではなくって?」


「えっ?」


「私はあなたの母親なのよ。何も知らないと思ったら大間違いよ。あなたが決めた事なのだから、私もお父様もジャックも、応援しようと思っているの。だから、どうか自分の気持ちに正直になって」


「お母様…私…」


「あなたの気持ちを正直に伝えなさい。それでいいのよ。明日、登城できる様、お父様の話しをしておくから、自分の気持ちをしっかり2人の王太子に伝えてきなさい」


そう言うと、私を抱きしめてくれた。


「お母様、ありがとう。私、自分の気持ちに正直になるわ」


「そうよ、その意気よ」


その後、お母様と一緒にお茶を楽しんだ。そして夕食の時


「セイラ、母さんから話しは聞いたよ。明日、私と一緒に登城しよう。2人の王太子との面会も取り付けてある」


「ありがとうございます。お父様」


明日いよいよ2人に自分の気持ちを伝える。ありのままの気持ちを伝えよう。そう思ったら、なんだかかなり緊張してきた。でも、もう決めた事。自分の気持ちに正直に生きよう。



翌日

「セイラ、準備は出来たかい?」


「ええ、大丈夫ですわ。わざわざお父様まで付いてきてくださり、ありがとうございます」


「元々私は、登城する予定だったんだ。それじゃあ、行こうか」


お父様が私を抱きかかえ、馬車へと乗せてくれた。


「セイラも随分と大きくなったね。もう立派な大人だな…」


そう言うと、少し寂しそうに笑ったお父様。


「14歳ですから。でも、まだまだ子供ですわ」


そう、私はまだ14歳。通常であれば、まだまだ子供だ。でも、今私は人生の分岐点を迎えている。もしかしたら今回自分が決めた結論が原因で、苦労する事もあるかもしれない。でも、もう決めたのだ。どんな道が待っていても、後悔はしない。


そんな思いの中、ついに王宮に着いた。なんだかドキドキするわね。杖を突きながら、ゆっくりと王宮の中に入って行く。私の歩調に合わせ、ゆっくり歩いてくれるお父様。2人で宮殿を進んでいくと、ある部屋の前でとまった。


「セイラ、この部屋だよ」


そう言うと、お父様が部屋を開けてくれた。部屋の中には、誰もいなかった。


「お父様、誰もいらっしゃらない様ですが…」


「ああ、今から1人ずつ入ってくる予定だからね。どちらから来るか、私もわからない。さあ、セイラ、椅子に座って待っていなさい。それじゃあ、私は部屋から出ていくから、しっかり自分の気持ちを伝えるんだよ。それじゃあね」


そう言ってお父様が出て行った。どちらから来るかわからないなんて…そう思いつつ待っていると、ゆっくりとドアが開き、入って来たのはライムだ。


「セイラ、今日はよく来てくれたね。こうやってセイラと王宮で会えるなんて、嬉しいよ。それで、返事を聞かせてくれるのだろう?」


「はい、今日はしっかりと自分の気持ちを伝えるために、この場所に来ました」


そう言うと、まっすぐライムの方を向いた。


「ライム殿下とは、物心ついた時からずっと一緒でしたね。あなたには私の我が儘のせいで辛い思いをさせてしまい、本当に申し訳なく思っています。ごめんなさい。実はね、あなたに“セイラとだけは結婚したくない”と言われたショックで、何が何でも見返してやる!そう思って、貴族学院に入るまでの1年半、必死に自分磨きを頑張ったのですよ。クレーション王国の修道院に行ったのも、あなたを見返したいと言う、歪んだ動機からだったのです。でも、修道院での生活が、私を変えてくれた。今では、あなたのおかげだと思っています。ありがとうございます、ライム殿下」


深々とライムに頭を下げた。


「貴族学院に入ってから、少しずつではあるけれど、あなたは王太子としての自覚を持ち始めてくれましたね。孤児院に積極的に出向く様になり、今では執事と一緒に、色々とこの国の孤児院の環境を改善するよう動いていると聞きました。今のあなたならきっと、立派な王になれると、確信していますわ」


「ありがとう、セイラ。君にそう言ってもらえると嬉しいよ。という事は、僕と共にこの国を支えてくれるのかい?」


ライムが私に問いかけてきた。

そんなライムの方を向き、ゆっくり深呼吸をした。

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