第53話 ライム…あなたって人は…
王妃様、さらにリリアナ王女が優しく私の背中をさすってくれる。その温もりが、なんだかものすごく落ち着く。その時だった。
「リリアナ王女、君はなんて心が優しい女性なんだ。あぁ、やっと見つけた。僕の女神様」
んん?この声は…
ゆっくり声の方を見ると、そこにはものすごい笑顔のライムの姿が。
「リリアナ王女、君は美しいだけでなく、何て心が奇麗な女性なんだ。一目見て、君に心を奪われた。どうか僕に、君を振り向かせるチャンスが欲しい」
そう言うと、すかさずリリアナ王女の手を握ったライム。どうやらリリアナ王女に一目ぼれした様だ。確かにリリアナ王女は見た目も美しく、性格もかなりよさそうだが…
「ライム殿下、あなた様は何をおっしゃっているのですか?リリアナ王女、申し訳ございません」
なぜかお父様が、慌てて頭を下げている。
「なぜ公爵が謝るんだ。そもそも、僕はセイラにフラれたのだから、公爵にとやかく言われる筋合いはない!」
「だからと言って、初対面の、それもクレーション王国の王女様に告白するとは何事ですか?皆様に失礼でしょう」
確かにいくら一目ぼれをしたからと言って、この場所で気持ちを伝えるのはねぇ…
「まあまあ、ミューディレス公爵。私たちは気にいたしませんわ。それにしてもライム殿下は、リリアナを気に入って頂けたみたいですわね。でも私たちは、本人の希望を優先しておりますの。ですから、リリアナの気持ちを優先していただけると助かりますわ。ただリリアナにはまだ婚約者がおりませんので、是非アタックしていただければ」
そう言ってクスクスと笑っている王妃様。えぇぇぇぇ!いいの?そんな軽い感じで!ちらりとリリアナ王女の方を見ると
「あの…私、急にそのような事を言われましても…でも、嬉しいですわ」
顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに呟いている。これはまさか…まんざらではない感じかしら?ライムは確かに見た目だけは美しいものね。最近は、随分と王太子としての自覚も芽生えてきているし。
「リリアナもライム殿下の事、嫌いではない様だね。ライム殿下、リリアナは1歳下の僕の大切な妹だ。生半可な気持ちでは困るよ。でも、僕としてはライバルがいなくなるのは有難い」
サフィール殿下がライムに忠告している。
「生半可な気持ちではない!僕はずっと令嬢に恵まれてこなかったんだ。でも、きっとリリアナ王女に会うための試練だったんだね。絶対にリリアナ王女に振り向いてもらえる様に頑張るよ。そうだ、リリアナ王女、早速王宮を案内してもらえるだろうか。さあ、行こう」
リリアナ王女の手を握り、さっさと部屋を出ていくライム。ちょっと、さすがにまずいでしょう!お父様も同じことを思ったのか
「ライム殿下、勝手な行動は慎んでください!」
そう叫んでいたが
「ミューディレス公爵、大丈夫ですよ。それにしても、ライム殿下はとても積極的な男性ですね。あの分だと、リリアナはミュンジャス王国に嫁ぐことになりそうだ」
そう言って笑っている陛下。隣で王妃様も笑っている。
「既に1名退場してしまわれたが、長旅でお疲れでしょう。すぐにお部屋に案内します。ミューディレス公爵、夫人、少し落ち着いたら今後の話しをしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろんです。その為に、私どもは参りましたので。今からでも大丈夫なくらいです」
「そうですか。では、今から早速話しをしましょう」
そう言うと、陛下と王妃様、お父様とお母様が部屋から出て行った。
「それじゃあ、僕たちは今から軽く王宮内を見て回った後、部屋に戻ろうか」
「あの、サフィール様、私たちは話し合いに参加しなくても宜しいのですか?」
私たちの今後を話し合うのに、当の私たちがいなくてもいいのかしら?
「大丈夫だよ。そもそも、僕たちの結婚はもう決まっているからね。3ヶ月後にはセイラのお披露目と婚約パーティーが、君の16歳の誕生日には結婚式を行う予定になっているんだ。話し合いと言う名の、顔合わせみたいなもんだね」
もうそこまで決まっているのね…全然知らなかったわ。
「しばらくすると、王妃教育も始まる。まだ1年半くらいあるから、ゆっくり進める予定だ。そもそも、君は勉学やマナーもほぼ完ぺきだから、特に問題はないよ。さあ、こんなところで立ち話をしていても仕方がない。行こうか」
私を抱きかかえ、王宮内を歩き始めたサフィール様。もちろん、抱かれたままだ。ただでさえ人が多い王宮内。すれ違う使用人たちが、生暖かい目でこちらを見ている。さすがに恥ずかしい…
「サフィール様、王宮内を歩き回って疲れたでしょう?私は自分で…」
「僕は大丈夫だよ。鍛えているからね。さあ、次は中庭に向かおう。この国には、珍しい花が咲いているんだよ」
私の話しを遮り、早速中庭へと向かう。
中庭に着くと、楽しそうに話しをしているライムとリリアナ王女の姿が。すっかりリリアナ王女に心を奪われたライム。鼻の下をビヨーンと伸ばして、リリアナ王女を見つめている。でも、リリアナ王女もまんざらではなさそうだ。
「ライム殿下とリリアナ、いい感じだね。ライム殿下がクレーション王国に留学したいと言ってきた時は、どうなる事かと思ったけれど、あの様子じゃあもうセイラにちょっかいを出してくることはなさそうだ。よかった」
私を抱きしめながら、サフィール殿下が嬉しそうに呟いている。
「サフィール様は、大切な妹でもあるリリアナ王女が、ライム殿下と結ばれてもよいのですか?」
「別に構わないよ。ライム殿下は王太子だから身分も申し分ないし。何より本人たちがいいなら、問題ないよ。それよりセイラ、もしかしてライム殿下が他の女性に興味を持ったことが、ショックなのかい?」
ものすごく笑顔なのだが、全く目が笑っていないサフィール殿下に見つめられる。なぜそんな話しになるのよ!
「私はライム殿下が他の女性とくっついてくれるなら、それに越したことはないと思っておりますわ。ただ…ライム殿下は少し惚れっぽいと言うますか…切り替えが早いと言いますか…だから、リリアナ王女が嫌な思いをしないか心配なだけです」
「それは大丈夫だよ。ああ見えて、リリアナはしっかりしているからね。とにかく、今更ライム殿下がいいなんて言わせないから。さあ、部屋に戻ろうか」
だからどうして私が、ライムがいいなんて話しになるのよ。全く、サフィール様ったら!でも、ライムも新しい地で素敵な女性を見つけたのならよかったわ。それにしても、惚れやすい男ね…それに、強引だし。まあ、リリアナ王女も楽しそうだったし、まあいいか。
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