私を拒絶した王太子をギャフンと言わせるために頑張って来たのですが…何やら雲行きが怪しいです

@karamimi

第1話 大好きなライムに嫌われていた様です

「いい、シャティ、今日はとびっきり可愛くしてよ!」


専属メイドに、すかさず指示を出す。今日はこの国の王太子でもあるライムの12歳の誕生日。実はこの国では、12歳の誕生日に婚約者を選ぶ事が、暗黙のルールになっているのだ。


そして私、セイラはこの国で一番権力を持っている公爵家の令嬢。ライムとは幼馴染で、もう私とライムが婚約する事も周知の事実。それでもやっぱり好きな人の前では、少しでも可愛く見せたい。その為、朝から入念にケアを行っているのだ。


シャティ含め、複数のメイドが私を磨き上げている。自慢ではないが、見た目には自信があるのだ。いつもの様にピンクのドレスに身を包み、これでもかと言うくらい宝石を付ける。


今日のドレスも、王都で一番有名なデザイナーにデザインしてもらった超最高級品。きっとライムも喜んでくれるはず。さあ準備も出来たし、そろそろ王宮に向かわないとね。


お父様と一緒に、王宮へと向かう。


「今日のセイラも物凄く可愛いよ。さすが私の娘だ。今日は事実上、お前とライム殿下の婚約発表の様なものだ。ついに家から王妃が誕生するんだな。今から楽しみだ」


そう言って笑ったお父様。今日はライムが一番の主役だけれど、もう1人の主役は私だものね。


そんな事を考えているうちに、王宮に着いた。早速ライムに挨拶に行かないと!そんな思いから、いつもの様にお父様と一緒にライムの部屋へと向かう。


私たちを案内していたメイドが、ノックをしようとした時だった。部屋の中から声が聞こえて来た。


「母上、僕はどうしてもセイラと結婚するのは嫌なのです」


「どうしてセイラちゃんが嫌なの?確かにあの子はちょっと我が儘なところはあるけれど、公爵令嬢だし、あなたの地位をより強固なものにしてくれるわ」


「どうして嫌だって?母上だって知っているだろう?あの女は、人の気持ちなんて微塵も考えていない。我が儘で傲慢で、それでいてプライドばかり高い。さらに短気だ。この前なんて、お茶をうっかりこぼしてしまったメイドに怒鳴り散らし、さらに暴力まで振るおうとしたのですよ。僕が庇ったから大事には至らなかったけれど。とにかく、あんなのと一生を共にするくらいなら、廃嫡して平民になった方がましだ!」


いつも穏やかなライムが、あんなに声を荒げるなんて…その上、私の事をそんな風に思っていたなんて…


我が儘で傲慢で、プライドばかり高い…その言葉が胸に突き刺さった。ショックでその場を後にする。


「セイラ、待て!」


後ろでお父様が叫んでいるが、とにかくその場を立ち去りたかったのだ。夢中で走っていると、無意識に裏庭にやって来ていた。すると、使用人たちが話している声が聞こえる。


「今日はライム殿下の誕生日パーティーだけれど、きっとセイラ嬢が張り切るんだろうな」


「そうだろうな。いつもライム殿下を差し置いて、前へ前へと出るもんな。あの子」


「そうそう、自分が一番可愛いとか思っているみたいだけれど、いくら可愛くてもあの性格じゃあな。金切り声で文句を言っている顔なんて、醜くて仕方がないのに、全く気が付いていないもんな。それに、外見から意地悪さがにじみ出ているんだよ。」


「おい、誰かに聞かれたらまずいぞ。でも、ライム殿下もお気の毒だよな。あんなヒステリックな令嬢と結婚させられるんだから。俺なら逃げ出したいわ」


「本当だな。おい、そろそろ誕生日パーティーの準備をしないとまずいぞ」


そう言って去っていった使用人たち。


私と結婚させられるライムが気の毒…私の顔が醜くて仕方ない…ヒステリックな令嬢…


その言葉が耳に残る。あまりのショックに、その場に座り込んだ。子供の頃からずっと、両親から可愛いと言って育てられていた。多少我が儘を言っても許されてきた。私は何をしても嫌われることはない、頭のどこかでそう思っていた。でも…


大好きなライムが、そこまで私を嫌っていたなんて…

そして王宮の使用人たちからも、あそこまで言われていたなんて…


その事実が受け入れられず、その場に座り込んで泣いた。私の何がいけないの?これからどうやって生きていけばいいの?どうしていいかわからず、その場で泣き続ける。


「セイラお嬢様、こんなところにいらしたのですね。よかったです」


私の元にやって来たのは、専属メイドのシャティだ。


「シャティ、私、醜い?ヒステリックで我が儘で、皆に嫌われているの?シャティも私が嫌い?」


幼いの頃からずっと私の面倒を見てくれているシャティに泣きながら訴えた。困った顔のシャティ。それでも


「そうですわね。お嬢様は少し我が儘なところがありますね。でも、私はお嬢様が好きですわ」


「本当?私の事、嫌いじゃないの?」


「ええ、でももう少し、相手に思いやりを持てる令嬢になって頂けたらと思います」


そう言って笑ったシャティ。


「シャティ、私、変わりたい。皆に好きになってもらえる様な令嬢になりたい。どうしたらなれる?」


「そうですわね。お嬢様は感情のまま動く事が多いので、まずは一呼吸おいてから動く練習をするといいですわ。それから、相手を許すことも大切です。失敗しても、許すことを覚えないといけませんね。それに…」


「待って、シャティ、そんなに一気に言われても、分からないわ。とにかく私は変わりたい。そして何より、ライムを見返したい!私と結婚するくらいなら、平民になると言ったのよ。完璧な令嬢になって、ライムをギャフンと言わせてやりたいの!」


そうよ、絶対に物凄く魅力的な令嬢になって、ライムをギャフンと言わせてやるんだから。




~あとがき~

新連載始めました。

よろしくお願いしますm(__)m

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