5-8 エドナサイド

 誰でも知っている伝説の女将軍シェリアは、別名、蒼炎のシェリアと呼ばれていたんだよ。その由来は全身蒼い炎を纏ったかららしいんだよ。熱くなかったのかな?


 そして、その伝説があたしたちの目の前に現れたんだよ。


「あれは炎系に魔術でしょうか? でも、カチュアさんは確か、魔術は使えないはずでは?」

「あれは魔術じゃありません。魔力が感じられません」

「分かるのですか?」

「ルナの特技みたいなものです」


 そう言えば、魔力の流れがわかるんだっけ? あたしは未だにその魔力の流れって、理解しきれていないんだよ。


「仮に魔術だとしても、蒼い炎なんて見たことないです」

「そうですね。まさにあの伝説の女将軍シェリアですわ」


 カチュアさんが剣を構えると、剣にも蒼い炎が出始めたんだよ。


「よーし、いくよ~」


 魔物の一体がカチュアさんに目掛けて攻撃を仕掛けるんだよ。だけど、カチュアさんが返り討ちにしたんだよ。魔物の体はカチュアさんを切り裂こうとした、爪から剣が入り、そのまま、魔物の胴体を真っ二つに斬ったんだよ。


 あの魔物は以前、ライム村で戦ったことがあったんだよ。だけど、その時はカチュアの剣や拳、あたしの風の矢を通さなかったんだよ。でも、今はあっさりと倒しちゃったんだよ。


 それから、次々と同じ魔物がカチュアさんを襲いかかって来たんだよ。だけど、カチュアさんも負けていないんだよ。二体がカチュアさんを挟み撃ちにして襲い掛かるんだけど、カチュアさんはジャンプして避けた。挟み撃ちしようとした二体の魔物は爪で互いの体を突き刺さしてしまったんだよ。


 だけど、魔物はまだ、生きていたんだよ。ジャンプしたカチュアさんは空中で横回転斬りで魔物二体同士に首を切断したんだよ。


 さらに一体の、また同じ魔物が、まだ空中にいるカチュアさんに殴りかかろうとしたんだよ。


「まずいです! 空中では逃げられません!」


 だけど、カチュアさんは魔物の爪を掴み、空中にいるにも関わらず、魔物を持ち上げたんだよ。そして、そのまま、魔物を地面に叩き付けたんだよ。カチュアさんはさらに剣先を下向きにして、魔物の心臓目掛けて落下していくんだよ。


 そして、剣は魔物の心臓を貫いたんだよ。。


 倒したばかりなのに、さらに魔物が攻撃を仕掛けるがカチュアさんは魔物の懐に入り、魔物の心臓辺り目掛けて殴ったんだよ。すると、魔物の背中から一直線にカチュアさんが纏っているのと同じ、蒼い炎が出て来たんだよ。その魔物も倒れたんだよ。

 

 これで魔物は全員倒したんだよ。


「カチュアさーん」


 カチュアさんのところまで、駆けつけたんだよ。


「あ!」


 足がつまずき、あたしの頭がカチュアさんの腹部に思っきし、頭突きをしちゃったんだよ。


 カチュアさんは後方へ倒れ、尻餅ついたんだよ。


「もう、エドナさん! こんな時に」

「カチュアさん大丈夫ですか?」

「わたしはだいじょぶよ~」

「てか、エドナ! 熱くなかったのですか?」

「え? なんで?」

「エドナさん、この蒼い炎を纏ったカチュアさんにぶつかっていましたから」


 ……そう言えば! あたし、蒼い炎に纏ったカチュアさんに接触したんだ!


 あれ? でも。


「ん~熱くなかったんだよ」

「ちょっと、いいですか?」


 ユミルさんが蒼い炎を纏ったカチュアさんの手を掴んだ。


「熱くないですね」

「不思議なことがあるのね~」

「カチュアさんはこれが使えていたんですか?」


 ルナちゃんが尋ねると。


「初めてだと思うわ~」


 蒼い炎を話している最中、ソフィアさんが。


「皆さん、話しているところ申し訳ないのですが、まだ戦いは終わっていないです」


 ソフィアさんの指を刺した方向を見ると。


「ぐおおおおお!!!」


 獣のような叫び声を発するクレイズ。


 すると、上空から何かが落ちてきた。カチュアさんが受け止めると。


「シグマ様!」


 落ちてきたのはシグマさんだったんだよ。


「奴に……吹き飛ばされたんだ……」


 カチュアさんから降りたシグマさんは立っているのも、しんどそう。足がふらついているんだよ。


「ガオオオオオ!!!」


 この獣ような遠吠えを出しているのは、ヴァルダン王クレイズだったんだよ。


「なんで言っているのかしら~」

「さっきからあの調子だ。言葉を発しなく、まるで獣の咆哮のように」

「シグマ様!」

「こうなったら、私も覚醒を……」


 足がふらつきながらも、クレイズのところまで歩いて向かうシグマさん。


「カチュアさん?」


 カチュアさんはシグマさんの前に立ち。


「下がって、ここはわたしが一人でやるわ~」

「カチュアさん! でも!」


 あたしはカチュアさんに声を掛けるが、カチュアさんはあたしに笑顔で。


「エドナちゃんたちはサポートお願い」


 そう言って、カチュアさんはクレイズの元へ向かっていった。


「危険だ! 覚醒もどきとは言え、強力だ! 君一人では!」

「まあ、大丈夫じゃないかな」

「ロゼッタ! 君まで」

「カチュアのことは私が」


 ロゼッタさんは大きく、息を吐いた後、深呼吸をして、カチュアの元へ走っていった。


「ロゼちゃんも来たんだね」

「正直、私じゃ、歯が立たない。カチュアなら倒せないと思う。だけど、あなたは優しい過ぎる。もしもしの時はあなたの隣にいないと」

「ん~。わたしがあの人にトドメを刺せられるかという話かな~。だけど、わたしも、手に掛けた時はあったわ~」

「私が盗賊に襲われた時ね。その後、どうなったか覚えている? あなた、苦しみながら、暴れたのよ」

「ん~、確か……そーだったような~」

「まあ、あの時は十一歳だから、仕方がなかったと思うよ。だけど、あなただけに、背負わせる、わけにはいかない。それだけよ」

「ありがとー、ロゼちゃん」

「……立ち話はここまでにして、そろそろ動き出すわ」


 カチュアさんとロゼッタさん、二人並んで歩き、クレイズの元へ。


「あの~、少しよろしいでしょうか? ルナさん」

「どうしましたか?」

「亜種でも、その亜種特有の能力以外にも、ルナちゃんの魔力の流れを読み取るような能力を持って生まれる人も時々います。勇能力も同じです。カチュアさんの、あの蒼い炎も、その類でしょうか?」

「ほんの僅かです。元々、亜種は人間で二人の神がまだ地上に、いた頃に育った環境や考え方で人間が姿型を変えていったのが亜種です」

「それって、確か、力の兄神と心の妹神が最初に現れた、厄災を滅ぼすのに、厄災に立ち向かう力を与えたと言われている神々のことですね。兄妹神を信仰対象になっている国もあります」

「まあ、神と呼ばれていますが、本当の神なのか、何かしらの力を持った人間だったかはわかりません。でも、実際、こうして、亜種と呼ばれる存在がいます。どこまでが、実話かはわかりません。だけど、新しい亜種があれ以降、生まれることはないらしいのです。ルナのような特殊能力は勇能力の劣化版として扱うぐらいで、まれに持って生まれるぐらいで。でも、その特殊能力も別の亜種が持つことはないのです」

「あの……カチュアさんって、もしかして……。それにしても、人間にしか見えないのですわ?」

「彼女たちは、そういうのらしいです。一見、人間と見分けが付けません。だけど、あまりにも、特徴が一致しすぎています。カチュアさんは……」


 横でルナちゃんとユミルさんが何か話しているみたいだったけど、難しい話のようで、何を話ているのか、分からないんですだよ。

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