2-8 ナギサイド
カチュアとルナは、ルナの兄を探して森の中に入っていく。
「カチュアさん。本当にこちらでよろしいですか?」
「うん。向こうから、鉄同士がぶつかる音が聞こえるわ~。それに」
「それに? 何ですか?」
「焦げた匂いもするわ~」
「焦げた匂い? ですか?」
「うん、急いだ方がいいわ~」
『あんたが『急ぐ』って、言葉を使うのは、違和感しかないよ』
「え~? 何でかしら~」
『いや、違和感しかないでしょ! 普段のマイペースな、あんたを見ていれば!』
「も~。酷いわ~」
でも、急いだ方がいいのは確かね。確か、手配者の相手にしているんだっけ? 話を聞いていた限り、その手配人は、強力な能力ではある勇能力を扱う、極悪人見たいだし。
二人は目的地まで走っていく。しかし……。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
ルナの息が荒くなっている。それに走るペースが遅くなっていく。
「だいじょぶ?」
「ええ……。はあ、はあ……、エドナさんは走るのが速いですが、カチュアさんも結構速い方ですね……」
カチュアは元から走るのは速いが、カチュアには、前後に大きいものがある。それでも関わらず、速く走れるんだよね。どうなっているんだが、この人の体は?
対してルナは研究員のことだけあって、体力はないようね。研究に没頭して、運動はしてこなかったからか? それとも、魔術の腕に、力を注ぎ過ぎた代償に、体力がなくなったのか?
「先に行っていてください……。体力のないルナはどうやら、足手纏いのようで……」
「だめよ~。わたしはルナちゃんのお兄さんの顔を知らないんだから~」
アヴァルに着いた日に、見たでしょ? もしかして、顔を見ていないのか?
「こうなったら~」
カチュアはルナを持ち上げて、自分の左肩に乗せた。
「え! ちょっと! カチュアさん!」
「全速でいくよ~」
全速で走り出す。人間の走る速さではない。
「いやーーーーー!!!」
ルナが騒ぐ。
カチュアが相手を絶叫させる乗り物と化した。
「ぐええええ、ぎ、も、じ、悪い……」
ルナは口に手を抑えながら、蹲る。
今にでも、口から、食べた物を吐きそうな、勢いだ。
「しー。静かにしてね~」
ルナをこんな状態にした、張本人が、何を言っているんだ?
「二人の男性が戦っているわ~」
どうやら、ようやく目的地に着いたようだ。
目の前には、ニ本の剣を両手に構えた男と、カチュアが持っている剣ほどでは、ないが、大きめの剣を持った男がいた。
どっちかが、ルナの兄のようだけど、私がアヴァルの街で見かけたのは、ニ本の剣を両手に構えた男の方だが。
「あの人がルナの兄です!」
やはり、ニ本の剣を両手に構えた男の方だったね。となると、もう一人の大きめの剣を持った男の方が……。
「あの、大きい剣を持った男の人が、ガイザックかしら~?」
「ルナも手配書の似顔絵しか見たことないですが、特徴が一致しています」
ガイザックの方は火の玉……、恐らく魔術ね。それを何発か打ちまくっている。
勇能力の持ち主は詠唱なしで魔術を発動できるって、言っていたが、確かに、エドナの風の矢を作る時は、やや、だが、時間は掛かっていた記憶があった。一方、ガイザックの火の玉を放つ際、時間は掛かっていない。次の火の玉を放つさえ、時間は掛かっていない。これが無詠唱。
ルナの兄は、ガイザックの攻撃を躱している。しかし、見ている限り、かなりギリギリ躱している感じだ。
「あっははは!!! さすがは悪帝を倒した英雄の一人シグマの右腕だな。勇能力を持つ俺様を、ここまで、手こずらさせるなんて」
「くそー。それは英雄の力と呼ばれているものだ。帝国兵に所属も出来たんじゃないの?」
「ああ!? それは、俺よりも、先に生まれてきた奴が、そう呼んでいたんだことだけだ。こんな力があるのに、俺の好きなことをするのに使いてぇのさ。そう女遊びにな。それを邪魔する奴は殺すまでだ」
「くっ、まぁ、『先に生まれてきた奴が呼んでた』っていうのは否定しないが、悪用するなら放置するわけにはいかない」
「よく、しゃべるな。まだ、戦えられるか。だが」
ガイザックの左手から火の玉が、それもかなり大きいのが。
「これで終りにしよう-」
しかし、大きくなった火の玉が急に消えてしまった。
「何?」
ガイザックはその場から離れた。
ガイザックにいた場所には大剣が地面に突き刺さっていた。
「危ねえ、大剣!? 何でこんなのが!?」
さらにガイザックに目掛けて、火の玉が襲い掛かる。その火の玉はルナが放ったものだ。
だけど、ガイザックは不意打ちとはいえ、軽々と避け躱していく。
「誰だ?」
誰って? この能天気娘です。
「あら、あら、避けちゃうなんて~」
地面に突き刺さった剣の横側に、カチュアが立っていた。マントは邪魔だから脱いでいるよ。
「おー!!! これはまた、オッパイのデカい、べっぴんさんだ!!」
もう、この顔を見慣れたというか見飽きたわ。その獣の顔を。
「だいじょぶですか?」
「蒼い髪と瞳……女将軍シェリア? いや、君は?」
「カチュアよ~。よろしくね~」
「あ! ああ……」
「お兄様! ご無事ですか?」
ルナは兄の元に駆け付け。
「ルナ!? どうしてここに!?」
「説明は後です!」
「……そうだな。カチュアだっけ? 彼女は味方でいいなのか?」
「はい! 頼もしい方です!」
まあ、戦だけでいうなら、頼もしいね。
「今度は姉ちゃんが相手か? まるで女将軍のような容姿だな。女を相手にするなら殺し合いではなく、遊んでほしいよな! 特に、そのデカい胸で」
こんな時でも胸ね。たく、男ときたら。
「わたしは、殺し合いなんて好きじゃないわ~。でも、あなたは人々を苦しめている。ほって置けないわ~」
『御もっともだけど、カチュアが言うと説得力ないけど』
「えー? なんでー?」
いや、だって、カチュアは力強いから。此間のヴァルダンの連中を半殺しにしていたから。あ! 峰打ちの言い方がいいか?
「嬢ちゃん、名前は?」
「カチュアよ」
「へ~、カチュアさんよー。勇能力は持っているのか?」
「持っていないわ~」
「持っていないのか? 話にならないな。そうだな、俺の女になりな。そうすれば、見逃してやるぜ」
「たくさんの人たちに、迷惑かける人なんて、大っ嫌いよ~。あなたも大人しく捕まった方がいいわ~」
「おいおい、状況わかっているのか? お前さんが戦ったところで勝ち目はないぜ」
「ん? いっていることはわからないわ~。でも、確かなのは、あなたに、わたしには勝てないってことだわ~」
お互い、どこから、その自信がでるのか?
「大丈夫か? あの蒼髪の嬢ちゃん? 状況はわかっているのか?」
「大丈夫ですよ。……多分」
なんか、アルヴスだっけ? 呆れられているみたいだよ、カチュアさん。でも、一般認識は、勇能力は英雄の力と言われているぐらい、強力な力。まず、カチュアには勝てないとは思われるか。
「あー、そうかい。それなら、勿体ないが、俺に従わねえ、わからずらだな、女は少し痛い目に合わせないとな。……覚悟しな!!!」
ガイザックはカチュアに剣で斬り裂きに行くが。
カッキーーーン!!!
「ぐわわわわわわわ!!!」
カチュアは、まだ地面に、刺してあった剣を、ボールを蹴るかのように蹴り、それによって地面から抜けた剣は、回転しながらガイザックの方に飛んで行った。ガイザックは飛んできた剣を、自身の装備している剣で、カチュアの剣を弾いた。
飛ばされた、カチュアの剣は、カチュアの隣に落ち地面に突き刺さった。カチュアは剣を抜いた。
『あのー、めちゃくちゃすぎないか? カチュアさんよ!』
「そっお~?」
「く、油断したか。だか」
ガイザックはカチュア目掛けて、剣で攻撃を仕掛ける。
ガイザックの剣裁きは物凄く速く、剣が見えないほどだ。
だけど、そんなに素早い剣裁きに対して、カチュアは、それをすべて受け止めている。特に速いわけではないが。
「はああああああああ~」
カチュアはガイザックの剣を受け止め、それを薙ぎ払うかのようにガイザックを力一杯、押しきった。
「わあああああああ」
飛ばされたガイザックは地面の上に転がっていった。
ところで、こいつは、勇能力という、特殊能力を所持しているんだよね? イマイチ、実感を湧かないのは、何故?
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