4-3 ナギサイド

 カチュア達は、ロゼッタに連れられ、宿屋に入っていた。


 それで、ここは、カチュアの泊まる部屋。


「もう~。酷いわよ! ロゼちゃん! お胸が赤くなっちゃたわよ〜」


 カチュアの瞳が涙目になっている。カチュアの涙目なんて始めてみたかも。


 ロゼッタとかいう名前だっけ? カチュアの赤くなった、胸元をみて。


「あー、胸元に赤いお尻があるのは、なぜ!?」

「ひどーい、お尻じゃないよ」

「あー、そうでした、自慢のお胸でしたね」

「好きで大きくしたわけじゃないんだから」


 頬をふくらませているよ。完全に怒っている。いつものカチュアの、のんびりした喋り方が、どこにもない。何気に怒った顔をしたカチュアも見たことがなかった。



 それにしても、あの、猛虎のビンタは食らったら、一溜りがないわね。あ~。カチュアの受けた痛みを、私に伝わることがないのは、せめての救いだわ。


「じゃあ、邪魔?」

「戦いには困ったことは、ないかな〜?」

「え! なに? 胸が大きいコンプレックスはないの!? 全然気にしないの!? よく、肩が凝るって聞くけど、あれ嘘のわけ!? それをよく聞くから、いらないと思っていたのに、あなたは、戦いには困らない!? 神様は理不尽すぎる! 幼馴染をこんなに実らせて、理不尽なんですけど!!! マジで病んできたんですけど!!!」


 ロゼッタの目が、怖くなってきた。てか、病んできていないか? 


「多分、それ、カチュアさん、だけだと思いますよ」


 ルナが助言をするも。


「カチュアよりデカい人見ないんだけど、そのカチュアが気にならないってどういうこと!? どういうことなの!? マジで病んできたんですけど!!! 病むしかないでしょ!? 病みますよ!!!」


 さらに悪化しちゃった。


「いやぁぁぁ!! 怖いですわ!! 」


 ユミルが怯えている。てか、あんたも人のこと言えないからな! 騒ぎながら、敵を跡形もなく、めった斬りにしていたんだから!


 まあ、確かに、怖いよね。


「こんな、ロゼッタさん見たことない」

「二人は仲いいのね」

「こんな状況で仲がいいと、言えないと思いますが?」

「よく言うんだよ。喧嘩するほど仲がいいって。喧嘩ができれば仲良しってことだよ」


 それは、お互い本音を、言い合えるからって、ことだと思うんだが。


「エドナさんって、かなり天然ですよね」

「あたし、なんか、おかしいこといったの?」


 おかしくはない。ただ、エドナが能天気過ぎだけだ。




 カチュアとロゼッタの、やり取りから二時間後、ロゼッタはようやく落ち着いてきて。いや、このやり取り、どんだけ、長いのよ。


 ロゼッタは椅子に座り、深呼吸をした。


「すいません、取り乱してしまって」


 さっきまでの、ロゼッタとは、別人のように、凛々しい感じがする。どっちのロゼッタが本物なのか? それとも二重人格の持ち主か?


「改めてまして、私は帝国、シグマ様に仕える騎士ロゼッタです」


 椅子から立ち上がって、礼儀正しく、お辞儀をした。


「ロゼッタ殿は確か、ユンヌ殿の娘さんですよね」 

「ユンヌって、聞いたことがあるような……」


 エドナは頭を抱えている。


「もしかして、悪帝を倒した、八人の空の勇者の一人である。あのユンヌのこと?」

「そーいえば、そんな話し聞いたことがあるわ~」

「ロゼッタさんは、そんな、凄い一人の娘さんなんですね」

「私は所詮、英雄ユンヌの娘って、だけで、私自身は、英雄ではない。それに母様は、私が六歳の時に病気で亡くなられています」

「そうだったんですね。すいません」

「あ! こちら、こそ、気を使わせちゃって、すいませんでした」


 ロゼッタは誤ると、同時にお辞儀をした。


「ところでルナ。あなたが、ここに来たのは、お兄さんのこと?」


 ロゼッタはルナに尋ねる。


「……はい」

「この街にきてはいます。けど、あまり私たちの仕事に負傷がないように。あなたがお兄さんが無茶していないか、心配なのはわかりますが」

「この街に何かあるんですか?」


 ルナの問いかけで、ロゼッタは軽くため息を付いた。


「皆さんは、ゲブンって、知っているでしょ」

「確か、八騎将の一人ですよね。でも、村長さんからはあまりいい話は聞かなかったかな」

「八騎将の半数以上は、いい噂は聞かないわ。ゲブンもその一人」


 いや、半数以上って、それ殆ど、怪しい連中じゃないか!


 それでよくやっていけたわね。この帝国は。それを言うなら、侵略行為をしているヴァルダン王国や、変態国王がいるセシル王国もそうか。


「そのゲブンが何か関係ありますの?」

「……」


 エドナが問いかけるが、ロゼッタが無言になった。


「ロゼッタさん?」

「……あなたは……」


 ようやく、口を開いた。でも、何で、目線を斜めに下に向けているんだ?


「……何で」

「え?」


 ロゼッタは、エドナ目掛けて、手を伸ばした。


「きゃ!? 何を!?」


 ロゼッタはエドナの豊満な胸を鷲掴みをした。そのまま、黙り込んだ。そして。


「なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! こんな、体が小さいのに、こんなに実っているのよ!!!」


 またかよ。


 発狂しながら、エドナの胸を揉み始めた。


「あの……、胸だけは……、胸だけは……」

「あーーーー!!! 取り敢えず!! ミルクでも出して!! この乳、しぼませよう!!」


 ロゼッタが激しく、エドナの胸を揉む。


「ミルクは出ないんだよ!」


 私も、やたら乳が無駄にデカい二人に対して、憎悪の感情があったが、ロゼッタのやたらデカい乳に怒り狂う姿を見ていると、その憎悪が薄くなっていく。


 私も、以前はあんな風に怒り狂っていたんだな。


「カチュアさん。この人、殴りに飛ばしていいですよ」


 ルナが呆れ顔で、カチュアに指示を出した。


 いや! まって! そんなことしたら!


 止めたいが、いつものように、カチュアの口では喋れない。いつもだったら、ツッコミを入れる時には、カチュアの口から喋れてたのに。今日はそんなに喋れていないのに。




 ——あのさー、貴方は何の魔術を使うつもりだったの?

 ——え? 治癒術だよ~。

 ——そうだよね。……それなのに、なんで。なんで! 爆発を起こしちゃうの! 

 ——う~ん……失敗?

 ——いや! どんな、失敗をやらかせば、こうなっちゃうのよ!? 傷を治すどころか、傷を増やすレベルじゃないでしょ!

 ——でも、傷は治ったでしょ。

 ——確かに、私の腕の傷は塞がった。けど、今度は体中、黒焦げだわ!




 また、あの夢だ。こんな時になんで、また。


「ルナさん。カチュアさんが殴ったら、止めるどころでは、ありませんですわ。そんなことしたら……」

「ロゼちゃんを殴ればいいのかしら〜? ルナちゃん」


 カチュアが拳を握りしめた。


「カチュアさん! 本気にしないでください! そんなことしたら、ロゼッタさんが死んでしまいますわ!」


 ユミルが必死に止める。


 ユミルって、騒いだり、無差別攻撃? がなければ、思考は常識人なのか? ……いや、エドナと同じ、英雄譚オタク見たいで、語ると熱くなるから、それはないか。


「は〜。しょうがないですね」


 ソフィアの右手人差し指を、ロゼッタ目掛けて刺す。そして、そこから。


 ビリビリビリビリ!!!


「きゃあああああああああ!!!」


 ソフィアの指先から、電気が放たれて、それが、ロゼッタの体を痺れさた。電気がなくなると同時に、床目掛けて倒れていった。全身、黒焦げになっていた。


 これ、生きているのか?


「これで、よろしいですか?」

「ん~、焦げているけど……、いいのかしら?」


 ルナが心配している中。


 シュー!!


 ロゼッタは、すぐに立ち上がり。


「ゲブンは、この領地を収めている者で、かなり金使いが悪いって、有名です。そして、この街の賭博場を主催しているのです」


 何事も、なかったかのような顔をして話を、始めているよ。スイッチのオン、オフが激しい人だな。


「賭博場って?」


 エドナが問いかける。


「賭博は、お金などを、賭けて、勝負事をすることです。勝てば、儲かりますが、負ければ、大損してしまいます」

「ん〜。イマイチわからないんだよ」

「要するに、わたしと、エドナちゃんが、自分の食べるお肉を増やせるか、減っちゃかの、勝負として、じゃんけんをして、勝ったら、お肉を負けた方の分を貰って、負けたら、勝った方にお肉をあげることかしら~?」

「あ! それなら、分かるんだよ!」


 カチュアが珍しく例え話で説明したよ。例え話は、平和的だが、間違ってはいないか。……のかな?


「ゲブンの場合は、剣闘士呼ばれる戦士を魔物に戦わせて、どっちかが、勝つかを駆け引きするのよ。ゲブンが主催する、賭博場はそれが行われています」

「え!? 魔物と戦うんですか!? それって、大丈夫なんですか?」

「一応、安全の処置はされているけど、どうだろう? 奴は、いい加減な奴だから、期待はしない方がよろしいですね」


 曖昧過ぎて、安全性に疑惑が湧くな。


「問題は、その魔物の出どころです」

「どういうこと?」

「ルナから報告を貰ったセシル王国の魔物騒ぎ、あったでしょ」


 そう言えば、ルナが鳥の足に、紙を結んで飛ばしていたような。あれは伝書鳥だったのか。紙は手紙でセシル王国の出来事をアルヴスに伝えていたのか。


「セシル王国の魔物は、ゲブンから買い取った可能性がある。いや、その騒ぎを起こした連中からゲブンが買い取った可能もある」

「そんな……」

「とは言ったものの、普段の賭博場は、下級魔物もしくは、危険種を戦わせるんだけど」


 危険種って、確か、魔術を使わない、動物だっけ? 熊とか、猪とか、今でも、人に襲いかかりそうな。


「今夜は盛大に行うみたいよ。そういった日には、出場する、魔物は上級クラスが出てきることもあったのよ。もしかしたら、魔物の流出を行なっている証拠を得られるかもしれないから、私たちはここへ来たのよ。私が話せるのはここまで」

「すいません、色々と教えてもらって」

「あまり、無茶はしないでよ。私たちはこれで仕事に戻るわ。それと……」


 ロゼッタがカチュアの腕を掴み。


「カチュアを借ります」

「ロゼちゃん?」


 カチュアを引っ張って、宿屋から出ていく。




 誰も通る気配もない、街の裏道というのか? カチュアは、その場所に連れてこられた。


「カチュア、聞きたいことがあるの」


 そういうと、ロゼッタは一旦、深呼吸をした。


「あの夜何かあったの? 事件の後、あなたが消えた。本当に何があったの?」


 なんか……穏やかな話ではないね。


「何の話~?」

「とぼけないで」

「とぼけてないわ~。覚えていないのよ~。あの日のことは、何が何だか、わからなかったわ~」

「覚えていないって。もしかして、あなた……」


 ロゼッタが黙り込んだ。


「ロゼちゃん?」

「ごめんなさい。あなたは嘘がろくに付けないお人好しで、隠し事なんて、一秒で暴露しちゃうしね」


 それに関しては同感。短い間であるけどカチュアという人物は理解している。


「うん、いいよ~」

「どこまで覚えている」

「ロゼちゃんと遊んで帰った後にすぐに寝て、それ以降は……」

「そうですか、あなたが居なくなる日。何があったかは聞きたい?」

「今はいいかな~。ロゼちゃん忙しいそうだし~」

「そっか、色々ごめん、それでは」


 そういうとロゼッタはこの場を去っていく


 しかし、カチュアは私と出会う? 前に、何があったんだろう。


「あ! それと、まだ付けてくれていたんだね、私があげた、リボン」


 それって、カチュアの髪を縛っているリボンのこと? あれはロゼッタからの貰えいものだったんだ。てことは、七年間も大切に使っていたんだね。


 それにして、カチュアの旅立ちのきっかけの話しを聞く限り、本人が望んだことではなかったのか。成り行きで、そうなったところは、カチュアらしいが。

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