1-3 ナギサイド (場面変更)

 —―私も一緒に眠るわ! だから! いつか、きっと、あなたが呪縛から解放したら。その時は、また、一緒に……。


 そんな、優し気のありそうな、女性の声を最後に、薄らだけど、目が開いていく。


 だけど、まだ、眠い……。私の目が全開していても、まだ、視界がぼやけ見えている。


……まあ、いいや。これは「まだ寝ていろ」という暗示ってことにして、もう一度、寝てよう。


 再び、目を閉じる私。


「だいじょぶですか〜? 起きてくださ〜い。う〜ん、どーしよかな〜?」


 声が聞こえる。声からして、たぶん、女性の声だろう。それにしても、結構のんびりした喋り方だ。次の台詞が出てくるまで、かなり時間が掛かっている。私を起こしてきていると思うんだが、のんびりした口調で起こしに行っているから、逆に眠くなっていく。


 まだ、眠いんだか、仕方がない。しぶしぶと、目を開けて、体を起き上がらせた。


「……ここは?」

「おはよ~、目、覚めたかしら〜?」


 目を開けたら、なんて言うか。うん、ものすごく腹立たしい!!! と思うほどの、光景を目にしてしまった。


 ただ、この女性に言いたいことがあるなら。殴りたい!!! まあ、それは冗談で。


 ホント、なんて、表現したらいいのか? ミノタロスよりも、デカいと、いうべきか。エー、ビー、シー、ディもう二十六のアルファベットでは収まらないって、位の大きさ! いや、さすがにないか。


 結論から言おう。無駄に胸がデカすぎるんだよーーー!!! コラーーー!!! そんなにいらねだろーーー!!!? コラーーー!!!


 さっきまで、眠たかった私だったが、目が覚めてきた。これが怒りの力という奴か?


「どーしたの? ぼーと、下向いて? だいじょぶ~?」

「え? いや……大丈夫よ」


 適当に誤魔化した。


 なんて言うか。この女性の、のんびりした口調を聞いていたら、怒りを湧いていたのが、馬鹿らしくなってきた。


 それ以前に、私は、危ない人に、なっている気がする。もう、明らかに変態行為だよね。いくら、デカいからと言って、この女性の、国宝級レベルの豊満な胸を、ガン見するなんて。スケベおやじじゃ、あるまいし。


 しかし、まあ、咄嗟に頭の中で思い浮かべたものを例えてみたが、ミノタロスって何? アルファベットって何? 意味を知らないで使っているはずなのに、なんでかな? この場面で使うと、しっくりくる、自分がいる。


 いや、この際、規格外の大きな膨らみは、もう、放っておこう。


 そんなことよりも、気になることがある。


 私は、手の平を握ったり、開いたりした。


「なんか、実態がない感じがする」

「え? どーいうこと〜?」


 そう、自分の体は動かせられる。でも、実態感が、ないように感じる。どうしてなのか、わからないけど。


「う~ん……。あ! きっと〜、わたしの夢の中に、いるからだわ〜?」


 言い切るわりには、ハテナを付けるんだな。それはほって置いて、ここがこの女性の夢の中?


「なんで、そうだと?」

「わたしが〜、寝たら、ここにいたのよ〜」


 あー、なるほどね~。だから実態間がないのかぁ、夢の世界だから。これで納得。あれ? 待ってよ。じゃあ、なんで、この女性の夢に私がいるの。


 そう考えると 。


「ということは、私は、人様の夢の中に、土足で、入ってきているわけね?」


 そうなるよね。まあ、人の夢の中に入り込むことなんて、できるのかしら? それ以前に、なんでこんな事になった? 覚えてない。てか、私はさっきまで寝ていたよね。夢見ていたし。じゃあ、私は起きても、まだ、寝ている状態なんだ。ややこしいはね。


「う~ん、でも不思議よね~。なんか普段見ている、夢よりも、現実感があるのよ~。うまく言えないんだけど~」


 言いたいことわかる。ほとんど夢って感じはなく、現実感の方が強い。まったく説明できていないし、自分でも何言っているのか、わからない。


 そういえば……。


「あなたの……名前を聞いていなかったわね?」

「カチュアよ〜。よろしくね〜」

「……あの〜」

「どーしたの?」

「あ! なんでもない」

「ん?」


 正直驚いてしまった。何の疑いもなく、名乗ったから。


 名前を聞いて置いて、なんだけど。明らかに私の方が怪しいのに素直に答えるのね。私はいわゆる、侵入者なのに。普通こういう場合、「人に名前を訪ねるなら、まず、自分から名乗るべでは?」というセリフが定番なのに。


 カチュアか。お人好しで、かなりのんびりした性格のようね。喋り方も結構、ゆっくりだしね。


 それに、デカい膨らみに目が行き過ぎていたから、気づかなかったが、外形を改めてみると、すごい美人ね。何故か男もの服を着ているけど、こんだけ大きかったら、普通サイズの女性ものの服は着られなかったんだろうね。だから、男ものを仮に着ているだろうね。まあ、それは放っとこう。うん、凄い美人だ。特に長い髪と瞳は綺麗な蒼色、中々、いないんじゃないかしら、こんな、別嬪さん。


 よく見たら、長い髪には白い細いリボンが付けられている。


 別嬪さんなんだが、やはり、おっぱいのデカさに目が行ってしまう。そして、そのデカさを持っているのにも、関わらず、腕、足、ウェストが細い。背丈は多分、彼女の年齢、代々二十歳ぐらいの女性としては、高い方ではない。もう、豊乳手術でも、しているんじゃないかな。て、なんで、さっきからなんで自分でも、意味の知らない言葉を使っているんだろう?


 うん、まあ、とにかく、改めてカチュアは、ただ、おっぱいが大きいだけの、キャラ設定ではなかったってことね。……だから、さっきから何言っているの? 私は?


「あなたの名前も聞かせて〜」

「あっ! そっか! 私は……」


 あれ? 名前が出てこないどうして? まさか名前すら忘れている? 


 いや、考えてろ、考えろ……。名前は……、あおい……、あかね……、みどりこ……、ももこ……、ってなんで、色が入った名前が出てくるんだろ。色以外を考えてみよう……。アキラ……、ナギサ……、クルミ……、ヒトミ……、マサミ……。


 なんかどれも、カチュアの名前と比べると違う国の人みたいだな。もしかして、私は異国の人かな?


 なんか、考えるのが面倒くさく、なってきた。


 もう、適当でいいか!


「う~ん。取り敢えずはナギでいいかな。目覚めるまで、自分が何者か、どころか、名前も覚えてないのよ」

「そのなんですか〜? こういうの、なんて言うのかな? きおくしょうきょ?」

「記憶消失ね。確かにしちゃっているけど。まあ、そうは置いといて。だから、あなたに聞きたいことが……」

 

 

 正直言って、なんでカチュアの、夢の中に、いるかは、わかない。取り敢えず、少しでも、情報が欲しい、私はカチュアに色々と話を聞こうとした時だった。

 

『大丈夫ですか?』


 私とカチュアの声とは、全く別の人の声が、聞こえる。女の子の声ね。


 周りには、私とカチュアしかいない。けど、声が聞こえる。


「なんか声が聞こえるね~」


 ここがカチュアの夢なら。もしかして……。


「きっと、現実世界の人が、寝ているあなたに、声をかけているのね。とっとと、起きたら」

「う~ん、どうやって戻るのかな~? 今まで、見た夢とは違うから、どーしよ~?」


 そもそも、夢から覚めるには、どうするんだろか? 普通に起きればいいのだが、この、ほぼ現実感のある、夢の世界じゃ。


 ものは試し、適当に。


「頭の中で、『戻れ」とでも、念じて見れば?」


 とか、言ってはみた。うん、ホント、テキトーに言ってみた。


「う~ん……、わかったわ~。なんか外も危ないみたいだから~、早く起きないと~」

「どういうこと?」


 何が、何だかわかないが。


 カチュアが目を閉じると、私の視界も暗くなってきた。いや、まさか、テキトーに言ったことが、本当になっちゃうなんて。聞きたいことはあったけど、またの機会でいいかな?


 この後、とんでもない場面に、出くわしてします。カチュアがのんびりとした性格と裏腹に、超人だってことが。


 そう、おっぱいの大きさイコール戦闘力と。

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