1-2 エドナサイド

 あたしもいつかは、街に行きたいんだよ。そして、この世界を周る旅がしたいんだよ。それが、あたしエドナの今の夢なんだよ。


 だけど、旅は常に危険と隣り合わせで、軽い気持ちで、することでは、ないって、過保護過ぎる、村長さんには、何度も、何度も、何度も、反対されているんだよ。でも、こればかりは仕方がないんだよ。村長さんで、なくとも、村の誰しも、あたしが、旅に出ることに関しては、反対されるんだよ。


 でも、いつまでも、過保護のままでは、あたしのためには、ならないとの、ことで、条件として、旅に必要な、知識や技術を、身に付けから、旅に出ていいことになったんだよ。


 村の皆さん、特に村長さん達を心配させないよう、頑張らないとなんだよ。


 そのための、一つの方法は狩りなんだよ。まずは食料調達や危険種きけんしゅや、魔物の対処方法を身に着けないとなんだよ。勿論、それ以外のこともちゃん覚えようとしている。……そのつもりでいるんだよ。


 そして、今日も、村近隣にある、ユグルの森へ入っていくんだよ。昔から、ここで狩りをしていた森なんだよ。


 この森へ辿り着くまで、十回程、転んじゃったんだよ。その数回は、木にぶつかって、倒しちゃったんだよ。


 最近に、なってから、一人で狩りをするようになったんだよ。以前は、村の人、一人に、付き添ってもらう形で、狩りを行っていたんだよ。


 一人で狩りをするようになってからは、何度かは、道に迷っていたんだよ。だけど、十四歳になってからは、道に迷わずに、村へ帰ることができるようになったんだよ。


「ん〜、いい天気だねぇ。絶好の狩り日和なんだよ」

 

 よーし。兎でも、鳥でも、なんでも狩るんだよ。だけど、できれは熊型くまがた狼型おおかみがた危険種きけんしゅは出て欲しくないんだよ。怖いから。


 ユグルの森は、村長さんやハルトさん抱く、人に、襲い掛かる危険な動物として認定されている、危険種きけんしゅの生息率が、どの地方よりも、かなり低いらしくんだよ。


 勿論、熊型くまがた狼型おおかみがたといった危険種きけんしゅはいるんだけど、他の土地では、ユグルの森に生息する危険種きけんしゅとは比にならない程、危険な生物がいるらしいんだよ。それは魔物と呼ばれているんだって。


 その魔物は、危険種きけんしゅとは変わらず危険な生物? なんだけど、違いがあるのは、魔を宿しているのが、魔物らしいんだよ。あたしには難しい話なんだよ。


 ユグルの森での、魔物の生息率が低いみたいなんだよ。時々、危険種きけんしゅが突然、魔物になることがあるんだって。生息率はゼロではないとも、言っていたような気がするんだよ。


 あたしは、まだ、その魔物には遭遇したことないんだよ。魔物と呼ばれる生き物? って言えばいいのかな? それには、気を付けなさいって、心配症の村長さんが言っていた気がするんだよ。話が長すぎて、殆ど、聞いていなかったんだよ、あたし。


 村長さんの忠告で、とにかく、あたしが見たことがなく、かつ、危険種きけんしゅよりも、危険な動物には、気を付けろと、言われている、くらいかな。


 うん、とにかく、見たことのない、危なそうな動物は、魔物と認識していれば、取り敢えず、大丈夫なんだよ。うん。きっと、そうなんだよ。


 しばらく、獲物を探していると。あたしが、よく知っている型をした、物体が見えたんだよ。


「あっ! デブボア発見なんだよ! ちょっと危ないと思うだけど。……いいかな? うん、大丈夫なんだよ」


 あたしの目の前にいたのは、太った猪型の危険種きけんしゅの、デブボアだったんだよ。


 デブボアのお肉は、凄い美味しいんだよ。でも、狩るのは大変なんだよ。あの、太った見た目と裏腹に、走ると結構速いんだよ。デブボアが敵と見做した相手に突っ込んでくるんだよ。


 気をつけないとなんだよ。


「よーし、始めるんだよ。まずは狙いを定めて……」


 デブボアに気づかれないよう、弓の弦を引き、いつでも、矢を、放てる体制にするんだよ。右足を一歩、後ろに動いたんだよ。


 バッキ。


 なんか、足元から音がしたんだよ。


「あ!」


 足元を見てみると。枝らしき物を踏み潰してしまったんだよ。気づかれちゃったかな? だけど、デブボアを見ると、気づかれなかったようなんだよ。セーフなんだよ。


 改めて、弦を弾いて、狙いを定めるんだよ。……しかし。


「ハッ……ハッ……ハクシューン!!」


 思わずクシャミをしてしまったんだよ。多分、小さいクシャミを、したつもり、なんだよ。このくらいなら、きっと、デブボアには気づかれないんだよ。


「あれ?」


 さっきまで、右手で持っていた矢がなくなっていたんだよ。ふっと、デブボアの方を見ると。


「あ!」


 クシャミをした拍子で、矢を放しちゃったんだよ。放たれた矢は、デブボアに向かっていったんだよ。離しちゃったものは仕方がないんだよ。飛んだ矢がデブボアに当たったかな。当たるといいな。


「あれれれ?」


 あたしは、矢に思いを入れたんだけど、思いは通じなかったようなんだよ。矢はデブボアの目の前に飛んでっただけで、当たりもしなかったんだよ。そして、デブボアは、あたしに気づいた様なんだよ。あたしの方を振り向いたんだよ。


「あららら!? ちょっとまずいかな……!?」


 あたし目掛けて、すごい勢いで突進して来たんだよ!


「う、うそー!」


 慌てて、避けた、あたしは、すぐに体制を整えたんだよ。デブボアの視界に入らない木に登ったんだよ。


 あたしは、これでも結構、身軽の方で、あっという間に、木の高いところに登ったんだよ。昔よりかは、テンポよく登るのは難くなっちゃたんだよ。なんでだろう?


「危なかったんだよ……。よし!」


 矢を取り、弦を引き、狩りの対象であるデブボアに狙いを定めて……。


「あれ? デブボアは?」


 デブボアが見えなくなったんだよ。辺りを見渡しても、デブボアの姿がどこにも見当たらないんだよ。軽く下を、見下ろしても、足場にしている枝ではなく、あたしの胸が視界を塞いで、見えなくなってしまったんだよ。仕方がなく、姿勢を低くして真下を見ようとすると。


 メシメシメシ!


 なんだか、危険な音がしているんだよ……。これは、何かが割れそうな音な気がしたんだよ。 


 そして。


 バキーーーン!!!


「はわわわわわわわわわわ!!」


 枝が折れて落ちていったんだよ!


 ドーーーーーン!!!


「いたたたた……結構、痛かったんだよ……」


 でも、何でかな? かなりの高さで落ちたのに怪我はしていなかったんだよ。お尻の方がなんか地面に着いた感じがしないんだよ。こんなところに布団なんてあったかな? 下の方を見て見ると。


「あららら〜!?」


 私と、足場にしていた枝が、デブボアの脳天直撃したようで、下敷きになったデブボアは気絶しちゃったんだよ。


「結果オーライかなぁ?」

 

 捕らえられたから、目が覚める前に、早速解体しないと……。この重たいデブボア一頭を、運んで、村に戻るのは無理なんだよ。だから、解体して食べられるところだけ、持ち帰らないと。食べられないところは、殆ど骨なんだよ。


 解体するには、見渡しのいいところで、やらないと。どこかないかな? 確か、この辺に川があったはずなんだよ。


 ……あったんだよ! 取り敢えず、あそこに運ぶんだよ。……あれ? あれは……。


 河原の方に何かあるようなんだよ。うんうん。あれは、人っぽいんだよ。あれ? 倒れている! すぐに、その人の元へ、駆けつけたんだよ。


「体全体が濡れているんだよ! 流されてきたのかなぁ!? しっかりしてください!」


 倒れていたのは、蒼い長髪をした女性だったんだよ。息はあるけど、体が濡れていて冷たいんだよ。あたしは女性の体を温めるため、火を起こす準備をしたんだよ。


 ドスン!


 あれ? 後ろの方に音がした気がしたんだよ。後ろを振り向いたんだよ。


「はわわ!」

 

 忘れていたんだよ! デブボアは気絶していただけで、まだ生きていたんだよ! さっきまで、気絶したデブボアが起き上がっちゃったんだよ。


 というよりか、目が覚めるのが早いんだよ。


「これはもしかして、大ピンチって言うのかな?」


 デブボアが突っ込んでくるんだよ! 逃げないとなんだよ! あたしだけなら、逃げられるけど、そうしたら、倒れている女性が危ないんだよ! でも、あたしの力じゃ、運んでは逃げられないんだよ!


 こうなったら、弓で対抗するんだよ! 至近距離だけど、弓でも行けるんだよ! 早速、弓を……。


「あれ? ない、ない……」


 左腰に掛けてあった、つつの中に手を突っ込むと、無いんだよ。そう……。


「なーーーいんだよ!!! 矢が全部ないんだよ!」


 つつの中に入ってあった、矢がなくなっていったんだよ。まだ、一本しか使っていないのに。なんで? ……もしかして、さっき、木から落ちた時に落としたの? どうしよう。ナイフでは太刀打たちうちできないんだよ。


 思わず目をつぶってしまったんだよ。


 もう、終わりかな? う~ん、どうしようかな? なんとかできるかな? 何とか、しないと、女の人が、危ないんだよ。


 バキーーーン!!!


 危ない状況だったんだよ。だけど、この危機を救ってくれたのは。今、倒れている蒼い髪の女性。


 その人は「カチュア」と名乗ったんだよ。



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