1-7 ナギサイド
荒々しい、やり方だったが、なんとか、大物を捕らえられたカチュア達は、引き続き狩りをするのだ。
「あ! デブボア、発見! よーし」
デブボアとか呼ばれている、メタボ体系の猪を見つけと、エドナは筒から矢を取り出そうと、すると。
エドナは弓が得意のようだが、矢を引く時に、その大きい胸が邪魔にならないだろうか? それを言ったら、カチュアも剣が得意らしいけど、やっぱり、あの大きい胸が邪魔になるよね?
……今は、胸の話をしている場合じゃなかった。全く! この二人を見ていると、妙に胸のことで頭の中が埋め尽くされてしまう! コンチクショウ!!
カチュア達は、デブボアに見つからないために、茂みに隠れている。隠れているにも関わらず、デブボアはカチュア達がいる方を見ると、怯えたように逃げていった。
「あ! また、だよ! もう! 何で、隠れているのに、逃げていちゃっうんだよ!?」
さっきから、カチュア達は、隠れているはずなのに、デブボアを見つけては逃げられる。
カチュアは聴力が物凄くいいらしく、かなり離れている、ところから音をする方に向かうと、高確率でデブボアがいる。私は全く聞こえない。というかなんでカチュアの中にいるのに、カチュアが聞こえている音を、私には聞こえないの? 不思議なんですけど。そもそも、カチュアの中にいるという考え方が間違っているの? ……まあいいわ。
見つけるところまでは、いいんだけど、二人は猪に、見つからないよう茂みなどに、隠れているが、すぐに、逃げられてしまう。
当然と言ったら当然だけど、この二人は全く全然気づいていない。
確かに、カチュア達は隠れているから、デブボア視点、カチュア達は見えていないはずだ。……カチュア達は。
「あ! 遠くにいますけど、デブボア発見したんどよ!」
また、次なる獲物を発見したみたいだ。しかし、この調子だと、また、逃げられてしまうだろう。二人があのことに気づければ。
「今度こそ、エドナちゃんの、弓の腕前見てみたいな~」
「よーし、任せるんだよ!」
エドナが弓を引き、デブボアに気がつかれないよ近づく。しかし……。
「あれ? また逃げちゃったんだよ! なんで? さっきから、この調子で逃げられるんだよ! どうしてなの!?」
うん、当然だけど。もう、十回も逃げられているよ。……と言うか。いいかげん気づきましょうよ、お二人さん。普通気づきますよ。
「さっきから猪逃げていくわね〜」
「はうう……、このままでは、あたしは一匹も狩れずに、日が暮れちゃうんだよ!」
そろそろ口だした方がいいのかな? でもな……こう言う時は指摘した方がいいのか? うーん、聞いてきたらでいいかな?
「そーだわ〜。ねぇ、ナギちゃん。わたし達、さっきから、猪に逃げられる見たいだけど、どーしてだが、わかるかしら〜?」
早速、聞いてきてくれたか……。出来れば自力? で気づいてほしかったが。同じ光景を見るのも飽きたし。まあいいか。
『あの〜、カチュアさん』
「どーしたの? ナギちゃん?」
『なんで、デブボアとかいう猪が逃げちゃうのか? 教えましょうか?』
「うん、どーしてかしら〜?」
『考えてみてください。自分よりも何十倍の大きさもある敵がいれば、誰だって逃げるよね? 死骸だけど』
「ん〜? それが、どーかしたのかしら〜?」
『いや、だって、カチュア達自身が隠れられていても、背負っているものが、隠れていなければ、意味がないだろ?』
「……」
沈黙しちゃったよ。それから、五分ぐらい、沈黙が続いた。それから、カチュアは後ろを振り向き、先程狩ったばかりの、ギガンドベアの死骸を、さらに五分ぐらい、眺めて……。
「あっ! そっか〜、熊ね〜」
納得するの遅えよ!!
まったく、二人とも隠れているつもりでいると思うが、デブボアが二人の姿が見えなくても、カチュアが背負っている、ギガンドベアが丸出しなんだよ! 猪が逃げ出すのも当然だよね? 狩り目的ではなかったら、猪避けにはなって、襲われないと思うが。
「どうされたんですか? 何か分かったんですか?」
「この熊さんのせいで、皆んな、逃げていくみたいだわ〜」
「……」
あんたも沈黙か。しばらく沈黙が続き……。
「……あっ! そうか! 熊か!」
だから、なんで、二人揃って納得するのに、五分ぐらいもかかるの? そこまで、考える時間がないと、答えに導かないんですか!?
全く! 似たもの同士だな! この二人は!
「どうするのですか? 置いて行きます?」
「ん〜……ん!」
カチュアは右側の方に指をさした。
「あっちに音がしなかった? たぶん、木と何かがぶつかる音」
カチュアが指している方向を見ても。何もない。
「え? 聞こえなかったんだよ! あっちの方角ですか?」
エドナはカチュアの指を指す方を見ると。
「あっ! デブボアを発見したんだよ!」
あ、凄い、見えるんだ。私は全く見えない。エドナは目がいいんだな。
「じゃあ、行きましょうか!」
「お〜!」
『ちょっと、待ったー』
「ん? エドナちゃん、ちょっと待っていてね〜」
「え? うん」
「どーしたの、ナギちゃん?」
『そのギガンドベアを、何とかしないと、また逃げられるよ』
「え〜?」
『いや! 「えー?」じゃなくって! さっき、説明しただろう!?』
「……あ! そっか〜」
さっきよりも沈黙する時間は短い、短いけど……。また、理解し直す必要があるなんて。
「エドナちゃん、この熊を背負ってたら、また逃げられるわ〜」
「え!? 何で……、あ! そっか!」
もう少し、学習しようよ。と言うか、二人はよく、今まで、生きていられたよね。
「でも、どうしよう?」
「ここから、弓は撃てるかしら〜?」
まあ、これ以上、近づけないんじゃ、ここから仕留めしかないわよね。
「もちろん、でも……、ここから射っても仕留められないかもしれません」
「そっか〜、困ったわ〜」
二人が考えている最中だ。そんな中、私はエドナの右腕に気にはなるものを見つけた。それは、宝石見たいのが二つ付いている腕輪だった。
『ねぇ、カチュア。エドナの腕に、何か不思議な腕輪みたいのを、つけている見たいだけど、カチュアは何か知っている?』
「ん〜? ああ、あれね〜。多分、魔道具ね~」
『多分って……、何?』
「わたしは、普段、使わないから〜。それに魔道具って、色んな形があるから、それが魔道具って、断言できないわ〜」
『あ〜、そうなんですか。で、その魔道具って?』
「わたしが知っていることは、魔道具があると魔術が使えるのよ〜。あの石見たいなものは魔石というのよ〜。その魔石は魔術を発動するのに必要なのよ〜。それ以外はわからないわ〜」
魔術って、魔法のことか? いや、同じか? そんなファンタジー世界ではあるまいし、魔法なんて。てか、ファンタジーって何?
『あなたからは聞けそうもないね』
「そうね~、わたしじゃ〜、説明できそうもないから~」
そろそろ、怒ってもいいと、思うけど。傍から見ると馬鹿にしているものだし。
『まあいい、エドナに聞いてみて。私もその魔道具に興味あるから』
「わかった~」
にして。やっぱり、カチュア以外には直接話せないなんて、不便ね。その魔術っていうものが、どういうものかは、まだ知らないが、それ使って、他の人でも会話ができないかな。魔法って、何でも出来そうなイメージがあるから。
「エドナちゃん、ちょと、いいかしら〜?」
「どうしたんですか?」
「それの右腕に付けているのは魔道具かしら〜? 魔石らしき石が、二つもある見たいね~」
「はい、これは魔道具なんだよ。一つは風系の魔石で……もう一つは聖石なんだよ」
「魔術を使えるの~?」
「うん、使えるよ。あたしは、風の魔術が得意なんだよ! あ! そうか、でも……」
「どーしたの~?」
「これを使えばいいのか! でも、あんまりやりたくないんだよ」
もしかして、その魔術を使って、獲物を獲えられるのか。
でも。なんか、あまり気のにしないようだけど、なんか、問題でもあるのかしら。使っているところを見てみたいけど。
「使うて、魔術を~?」
「うん、見ていてください」
エドナは、何かを、念じるように、右手を上げる。すると、エドナの右手に螺旋状に風が纏っていく。そして、それが矢の形となった。
『何なんだ? あれは?』
「あれが、エドナちゃんの魔術のようね〜」
「風の魔術で、作り出した、風の矢なんだよ。これで、弓を引くんだよ!」
その風の矢を使って、弓を引き、放った。
シューーーーーーーン!!!
矢は一直線に進み、視界には入らなくなった。矢が通ったところには風が襲い掛かる。
「ふう、こんなものなんだよ」
『すごいな! あれが魔術か! こんなものがあるなんて!』
「……」
『カチュア?』
「ん!? どーしたのかしら〜?」
『それは、私が聞きたいよ? どうしたの、ボーとして』
「うんうん。なんでもないわ~」
変なカチュアだ。のほほんとした雰囲気のカチュアだけど、何だろ? 何か気になる。
「獲らえましたんだよ。じゃあ、取りに行くんだよ!」
私には見えなかったが、デブボアに命中したのか! 狩り取ったデブボアのところへ向かう。
ようやく、着いた。改めて思ったのは、カチュアの聴力は異常だった。それと同等に、エドナの視力も異常だった。だって、五百メートルぐらい先のデブボアが見えているから。しかも、命中しているし。これは、私の想像以上にエドナの弓の腕はいいみたい。
……大きい胸が足引っ張らなくってー、良かったですねー。皮肉です。
「すごいね、エドナちゃん。大物よ〜」
「うん。でも……」
「ん? どーしたの?」
デブボアの死骸を、よく見ると、体に風穴があった。
これって、まさか……。
「これ使うと、体を貫通しちゃうから。肉が削られちゃうんだよ」
て、あんたもかー! 最近の狩りは、体に風穴を開けるのが、流行りなの? そっか、だから、あの弓技で仕留めるのは、気乗りしなかったのね。食べる部分が削られるから。
「でも、いいのかな? これだけ、あれば、充分なんだよ」
「じゃあ、エドナちゃんの村に行こうか~? これは、わたしが運ぶね〜」
カチュアは右側に熊を左側に、デブボアを抱えた。
「二匹も抱えるなんて! 力持つなんだね」
「じゃあ、行こうか~」
あの細腕の、どこに、こんな力があるんだか。もしかして、エドナが持っていた、魔道具のような類いなのか? でも、エドナの魔道具のような、宝石見たいな魔石が付いた、装備品は見当たらないな。まさか、このデカチチの谷間に……、さすがにないか。そもそも、カチュアは魔道具を使わない的な、ことを言っていたような気がしたな。それに、魔道具のことも、詳しく無かったし。
ほんと。カチュアの、あのバカ力は、どこから、湧いているのか。
狩りを終えた二人は、エドナが住む村へと、向かっている、ところだ。しばらく歩いていると、カチュアがエドナに。
「そーだわ〜。エドナちゃんも、わたしと、一緒に旅に出ない?」
「え!? 旅ですか!? 急に、どうしたんですか?」
「エドナちゃんと、旅をしてみたいな〜と思って。わたし、今まで一人だったから、エドナちゃんと、一緒に旅するのも、きっと楽しいそーだから〜。うん、きっと、そーよ〜」
一応、私がいますよ。精神体だけど。
てか、お互い、今日、会ったばかりなのに、旅に誘うなんて、もう信頼しているんだな。早過ぎる気がするんだが。
「あたしも、ずっと、旅をしてみいんだよ。でも……」
「あら〜? 何か、事情でも、あるのかしら~?」
「はい……」
「……深くは聞かないでおくね~?」
さっきまで、ののほほんとした雰囲気から一変。カチュアの歩く足が止まった。
「……」
「どうしたんですか? 急に止まって?」
「……エドナちゃんの村は、この方向だよね~」
「はい、そうなんだよ。でも、どうしたんですか?」
「人の声、それも、叫び声が聞こえるわ〜。……それも複数も」
「え? あたしには、聞こえないんだよ」
私も聞こえない。しかし、聴力のいいカチュアが言うのなら確かね。多分。それに叫び声は、ただことではない。
「急いで、エドナちゃんの村へ向かった方が、いいわ~」
「え?」
カチュアは猪と熊を後ろへ、投げ捨て、走り出した。
「あ! 待ってくださーい!」
エドナも走り出す。
まだ付き合いは短いが、のんびり屋のカチュアが、あの険しい目つきをするなんて、これから、きっと大変なことに、巻き込まれるかもしれない。
まあ、いくら、力加減できないからって、ギガンドベアとデブボアが勢いよく捨てて、それが樹木にぶつかって、次々と、何本かの樹木が倒してしまうのはどうなんだが。
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