5-6 エドナサイド
目の前にはヴァルダンの本軍が見えたんだよ。
シグマさんの軍と交戦中なんだよ。
「クレイズ様! あの一撃はいくらなんでも」
「我に指図するな!!!」
シャキーーーン!!!
酷い。酷すぎるんだよ。
大勢の人の中、大きさで、目立つ、顔が怖い男の人が部下らしき人の首を大きな剣で斬り落としたんだよ。
「クレイジーって、以下にも頭悪そうだな」
「ナギさん、クレイジーじゃなく、クレイズですよ。一応、ヴァルダン王ですよ、あの人。確かに以下にも頭が悪そうな脳筋バカですが」
あの人がヴァルダンの王なんだ。なんて言うか、争いが好きそうな印象なんだよ。
セシル王国の王で、ユミルさんのお父さんは面白い人なのに。ソフィアさんからは「変態王」と言われているんだよ。王って、色々な人がいるんだね。
それにしても、ナギさんが言い間違えた「クレイジー」って、なんだろう? ルナちゃんもヴァルダン王のことを「頭悪そう」とも言っていたんだよ。少なくっとも、いい意味ではなさそうなんだよ。
「じゃあ~、エドナちゃん達はここで待機ね~」
あたしたちは後援で前衛に立つカチュアさんとソフィアさんをサポートする役割なんだよ。
「はい、気をつけて」
「ユミル様も」
「はい」
カチュアさんとソフィアさんはヴァルダン軍の方へ向かった。
「では、ご挨拶をしないと」
そう言って、ソフィアさんはいつものナイトをヴァルダン軍の一部に投げつけた。いつもの「バチバチ」鳴らしている電気は流れていないんだよ。
ドカーーーーーーン!!!
「な!! なんなの!!?」
ソフィアさんが投げつけたナイフがヴァルダン軍の人たちの真下である地面に刺さると、ナイフが爆発したんだよ。
「なに!? これ!?」
ルナちゃんも驚いているんだよ。
「ソフィアさんは火系魔術を使った爆発攻撃も得意なんですよ」
ユミルさんは、こんな凄い爆発が起きているの、あまり驚いている様子はなく、表情一切変わっていないんだよ。あたしは、驚いたあまりに、後方へ転んじゃったんだよ。そして、お尻を思い切り地面に着いちゃったんだよ。
「こっちから、帝国軍!? いや! 女か!? 馬鹿にしやがって」
「女じゃなくって、カチュアよ~」
「名前を言っている場合ですか?」
「でも、さっきはご挨拶しないと、って」
「まあ、言いましたけど、そう言う意味ではありませんよ」
その様子を見ていたあたし達。
「カチュアさん。こんな時に何をやっているのか? は~」
ルナちゃんは大きな息を吐いたんだよ。
「あなた達、戦いをやめなさい〜。そーじゃなければ、ただでは、済まないわよ~」
「舐めた真似を!!! ゆるさん!!!」
ヴァルダン兵達は武器を構え始めたんだよ。
「あの、おっさん王が装備武器、まるで、生き物の亡骸ですね。それにおっさん王だけでなく、他の連中も装備していますね」
ルナちゃんがそう言ったのを聞いてあたしも見ると、以前あたしの村を襲ったヴァルダン兵が持っていた武器と似ているんだよ。
それも一人じゃないんだよ。あたしが確認できる範囲でも、十人以上があの武器を持っていたんだよ。でも、武器の型は違くって、剣だったり、斧だっりするんだよ。同じと言うなら、どれも、生き物の亡骸で出来た感じがする武器なんだよ。
「とにかく、敵の戦闘力を減らさなければ」
ソフィアさんの右手から「バチバチ」と音を立てながら、電気が集まった来たんだよ。どんどん電気が大きくなってきているんだよ。すると集まった電気が、あたしが見たことのある、型になってきたんだよ
「あれって! 雷の魔術で構成した……トンカチ!」
そうだよ! 何処で見たことがあると思ったら、トンカチだよ! あたしが知っているトンカチと比べると、持つ部分が長いけど。
「せめて、ハンマーにして、置きましょう」
「あれがソフィアさんの得意魔術の雷の槌ミョルニルですわ」
「ソフィアさん。あんなことできたんだ。普段はナイフに雷を付着しているのに」
「ソフィアさんは元々、槌で戦うんですわ。ナイフはサブウェポンですのよ」
ソフィアさんの方を見ると、そのミョルニル? が出てきたと思ったら黙り込んじゃったんだよ。
「ふふふふふ」
何か、不気味な笑い声が聞こえるんだよ。
「は! は! は! はあーーー!! さあ、血祭りだの時間だーーー!!!」
ソフィアさんが急に叫び出した。
ソフィアさん? 普段は表情が変わらないのに、まるで、鬼のような顔になっているんだよ。
「いくぜーーー!!!」
喋り方も変わっているんだよ。
ソフィアさんのミョルニルを一振り振ったんだよ。
「ぎゃあああああ!!」
当たった何人かのヴァルダン兵が、ビリビリと痺れたんだよ。しかも、当たったところから、体が切断しているんだよ。そして、真っ黒になって、次々と倒れていったんだよ。
「オラ、オラーーー!!! どうした!? この程度か!?」
ソフィアさんは走りながら、ミョルニルを振り回しているんだよ。ソフィアさんが走り去った後には真っ黒になったヴァルダン兵が倒れているんだよ。
「はははははははは!!! 最高だせーーー!!!」
「あら、あら~。楽しそうね~」
二人とも笑っているんだよ。
「二人とも笑っていますね。種々は違いますけど。それよりも、ソフィアは二重人格ですか?」
「本来のソフィアさんは戦闘狂なんですのよ。普段は押さえていますけど。遠くから狙いを定める時に冷静さを保たないと、当たらないから普段はナイフなんですよ」
「それはユミル様もですよね?」
ミョルニルが段々小さくなってきて、半分くらいの大きさになってから、一振りすると、ミョルニルが消えたんだよ。
「やはり、ミョルニルは長持ちしませんね」
「あれ? 戻っている?」
いつもの表情が変わらないソフィアさんに戻っているんだよ。
「ミョルニルの効果がなくなると、我に帰るんですよ」
「いや、あの戦闘狂って、ストレス発散とかじゃありませんか?」
「ん~、やっぱり、無表情も疲れるのかな~」
カチュアさんの方も見ると、何十人のヴァルダン兵が一斉に攻撃を仕掛けてきた。だけど、カチュアさんは華麗に交わしたり、剣で受け止めながら、敵の腹部を殴ったり、腕を斬り落としいるんだよ。
「大分、減ったわね~」
すると。
「小娘が!!!」
あの武器を持ったヴァルダン兵がカチュアさんに向かってきたんだよ。
速攻、カチュアさんが腹部に殴って吹き飛ばしたんだよ。
だけど。
「あれ? 効いていないの? いつもなら、お腹に穴が開くのに」
カチュアさんが殴ったところには、傷一つも付いていないんだよ。カチュアさんが殴ったなら、体を貫通させられるのに。
「エドナさん、普通なら開きませんわよ」
「あの武器、勇能力のような力を引き出しているようね。多分、身体中に障壁を張っているのよ」
「でも、似たような武器を持った人と戦った時は、あっさりと傷を負わされたわ」
「その時は、たぶん、試作品ね。きっと、障壁が働かなかったかと思いますよ」
ソフィアさんの方は何十本の電気を付着させた、ナイフを投げつけ、当たっているが、傷一つ付けていないんだよ。
「くう、人間相手なら、いつもだったら、貫通しているのに」
何か、怖いことを言っているのは気のせいかな?
カチュアさんは怯まず、さらにジャンプして、横回転しながらヴァルダン兵の顔に蹴を入れたんだよ。
障壁があるから、効かないと思っていたんだよ。
ボッコ!!!
「顔が凹んでいます」
ヴァルダン兵の顔が潰れたパン見たいな顔になっていたんだよ。
「あれ? 障壁って、あんなに簡単に壊れるものかしら?」
「普通は無理です。ただ、カチュアさんだったら、可能かもしれません。以前、ルナは勇能力を持った犯罪者を、圧勝したカチュアさんを見ています。その時も、二発の攻撃であっさり障壁を壊しました」
「勇能力相手でも勝てるんですね。強いんですね、カチュアさんは。でも、何であんなにも簡単に障壁を壊せるものなんでしょか?」
「考えられるのは二つ。一つはカチュアさんの怪力は障壁を簡単に壊せるほどのパワーがあること。もう一つは……」
ルナちゃんの話の途中。カチュアさんはソフィアさんと交戦しているヴァルダン兵の腕を掴んだ。さらに、掴みながら、上空まで、上げてから、落下した。ヴァルダン兵は地面に叩きつけたんだよ。
「あれ? あの人の腕」
ヴァルダン兵の腕から煙が出ているんだよ。
「それがもう一つ考えられる仮説です。カチュアさんは何かしらの力を持っているじゃないかしら。現にカチュアさんは魔道具を装備していないのに、カチュアさんが触ったところから煙が出てきています」
「その何かしらの力が障壁を壊していたのですね」
んー。ルナちゃんの解説を聞いているんだけど、よくわからないんだよ。少なくっとも、カチュアさんは凄い力を持っているって、ことかな?
「帝国軍が来ました」
「くそー、おい、お前ら、あれをやれ」
「いけません! あれを使ったら……」
「うっせーーー!!」
「ぎゃあああああ!!」
「侮辱されたままでいられるか!!!」
亡骸のような物で作った武器を装備していたヴァルダン兵達が、次々と、自信が身につけていた服装が変わったんだよ。その大半は、立派な鎧が付けられていたんだよ。
「あれは?」
「もしかして、覚醒? まさか」
「覚醒?」
「勇能力を持つ者の力の一つで、あんな感じで武装して、最大まで力を引き出すんです」
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