5ー5 ナギサイド
「いや~、何ていうか……君たち何者?」
シグマもそうだが、その部下たちも呆然としている。まあ、たった四人で数百人くらいの軍を壊滅させたから。そうなるよな。
「カチュアよ~」
「エドナです」
もうお決まりだよね。「何者?」って聞かれたら瞬発っで名前を言ってしますのが。敵でも言っちゃうんだよな、この二人は。名前を聞いているわけではないのに。
「まあ、村を襲撃される前に撃退したのはいいが……、くれぐれも、アルヴス見たいなことは、しないでくれよ」
この人が何を言いたいのがわかる。
シグマは、如何にも死にそうなヴァルダン兵数名の方を見つめていた。その中には、ぽっちゃりとした顔つきなのに、それに反してお腹がへ混んでいるヴァルダン兵もいた。
「君は強く縛り過ぎだよ! 相手死にそうだよ!」
シグマ達が駆けつける前、カチュアはヴァルダン兵の何人かをロープで体を縛って拘束をしていた。しかし、力一杯縛っていたから、ヴァルダン兵が苦しそうな顔をしていたよ。うめき声も出していたし。今はシグマの隊の方々で、縛りなおしたから、楽にはなっている。
「しかし、君達のおかげで、被害を出さずに済んだ。例を言う」
シグマは右手を出した。握手かな。
「こちらこそ~」
カチュアはシグマの手を握ぎった。
ジュウウウ!!!
シグマは咄嗟に手を離した。すると、シグマの手から煙が出た。
「これは……」
「あれ? 何で煙が?」
「見たところ、君は魔道具を装備していない。これはいったい」
「え? これはシグマの特技じゃないの〜?」
いや、どんな、特技? 本人、ビックリしていただろう。
しかし、この煙はいったい。確か、カチュアが戦っている時、何度か見たことがあるけど、いったい。
「大変です!」
シグマの部下らしき人が慌てて、こっちに向かってきた。
「どうした!?」
「ヴァルダン王率いた大群がゲスティアの村へ向かっています」
「何だと?」
「国王が出陣しているんですか?」
何で、国王が引き連れているの?
「ヴァルダン王は何を考えているんですか?」
「ヴァルダン王は賢い王ではない。別部隊はガロンを揺動して、本軍は別の道へ出陣したって、帝国に被害を出すだけで、ヴァルダンが完全に勝つことは難しいはず。ヴァルダンは大軍だが、脳みそ筋肉でできている者ばかりだ」
敵国とは言え、酷い言われようだね、ヴァルダン王は。てか、頭悪いトップ多いいな。八騎将のガロンやゲブンも話しを聞いている限り、頭悪そうだし。
「ここは、周りが山ばかりなんだね。あたしの村みたい」
「ここに住む、お肉さんは美味しいかな~」
「カチュアさん。狩り対象の獣をお肉さんっていうのはちょっと……」
「危険種だったら、こちに向かってくるんだけど、危険種じゃない、動物は人を見ると逃げ出すのよ~。やっぱり、狩るなら、危険種かな、探す手間が掛からないから~」
「あたし、目がいいから、その動物に近寄ることなく弓で仕留められますよ」
これからまた、戦いが始まるかもしれないのに、呑気だな、この二人は。途中から物騒な話になっているのは気のせいかな?
そんな二人を見てルナは。
「……もしかして、目的は潜伏」
「ルナ?」
「もし、奴らに策があるなら。地の利を生かすこと。それはあえて、大群で攻め、ある程度戦ったら、軍を引いて、数名を帝国領内に潜伏させることが目的なんじゃ」
「そっか! 奴らは内部から帝国軍を崩すため、帝国内で留めて、耕作作業をして、来る時まで、身を潜めているのか」
「はい、それに敵軍の数何て、正確に数えていません。きっと、潜伏している連中は、山かどこかへ身を潜めているのでは」
なるほど。山とかは、人が管理されていないから、潜伏には絶好の場所か。まさに、地の利を活かしてた戦いか。
ルナはカチュア達と、比べると幼いが、頭は大人顔負けなんだよね。
毒が入っていたような、気がしたのは気のせいかな?
「そういうことか。確かに、一理ある。だけど、それはヴァルダン王では、思いつかない策だ。誰か、ヴァルダン王が信頼している策士がいるのか?」
この将軍も、結構、ディスるよね。カチュアの周りにいる人達は、オブラードに包むことができない人多いな!
「考えても仕方がない。今は即刻ゲスティアの村へ向かおう。あの辺なら、先にロゼッタを向かわせている」
「ロゼちゃんが?」
「ロゼッタを知っているのか」
「幼馴染のそうです」
「そうだったな、君がロゼッタと……」
「わたしも連いていくわ~」
「しかし、これ以上は……」
まあ、将軍の立場では、これ以上関わせたくないよね。特に傭兵契約とかしていないし。
「あら~? あなたたちが、死んだら誰も助けられないでしょ? もし、負けちゃったら、結局は参戦しなかった、わたしたちも戦うハメになるわ~」
おっとりした雰囲気をしているのに威圧感を放っているカチュア。どんな、威圧感だよ? だけど、怖い顔や睨みつける目はしていないんだよね。
「あ~……じゃあ、頼みます」
カチュアのおっとりとした威圧? は、将軍ですら、従わせてしまうなんて。だから、もう少し、頑張れよ! 将軍!
「私たちはヴァルダン王が引き連れている軍隊に向かい、君たちは、半数の私の部下たちと一緒にゲスティアの村へ向かってくれ」
「分かりました」
結局、また、村の避難を行う事に。
そして、ようやく、カチュア達の目の前に村が見えてきた。シグマたちは、国王率いるヴァルダン軍の元へ向かうことに。
「あそこがゲスティアの村です。もう、直ぐ着きます!」
「よーし、このまま」
エドナが走り出そうとすると、急にカチュアがエドナの腕を掴んだ。
「ダメー!!! エドナちゃん!!! もう! 間に合わない!!!」
「え!」
村目掛けて何がくる。
それは衝撃波が津波のように村を襲いかかった。
衝撃波が消えると、村がなくなっていた。
「そんな」
カチュアの様子がおかしい。カチュアはいつも全力で走っても、息切れなんてないのに。息を荒くしている。
「だれも、助けられなかった。だれも、助けられなかった。だれも、助けられなかった」
「カチュアさん! カチュアさーーーん!」
あれ? この感覚。精神体なのに。まるで、息が出来ない。エドナが転んでカチュアにぶつかっても、私には痛みを感じなかったのに。確か、前にも。
そう、これはエドナの故郷ライム村での悲劇が起きた時だった。
あの時は壊滅した村を見たエドナは、村の中へと走り出し。村の人たちが死んで泣き叫んだエドナを後から来たカチュアが抱きしめた。
しかし、その前。そう、エドナが生存者を探しに、村の中へ走り出した後のカチュアはすぐに。
「ごほ! ごほ!」
口から何かを吐き出しそうな咳をしている!
『大丈夫か? カチュア!』
「平気よ~。ちょっと、咳をしただけよ~」
いや! 苦しそうだったよ。
「この足音はエドナちゃんね。それ以外の足音は聞こえないわ〜」
カチュアは村の中に入り、彼女は村の生存者を探していたが、生存者はいなかった。
「ごほ! ごほ! ごほ!」
『本当に大丈夫か?』
「だいじょぶよ~」
咳が酷くなってきているよう。何だろ、息が苦しい感じがしてきた。私、精神体なのに。
「カチュアさん! 大丈夫ですか!?」
薄っすら、聞こえてくる。エドナの声が
「まずいです! このままだと、確証はありませんが、暴れ出すか、最悪の場合、死ぬかもしれません」
「どういうことですか? 死ぬって、大袈裟ですよ」
「いいえ、カチュアさんは別よ。彼女達のことは詳しくはありませんが、死ぬ可能性は考慮しないと。少なくとも負の気には弱いことはわかっているのです。だって、彼女は……」
ルナが何かを言いだそうとすると、カチュアがゆっくりと立ち上がる。
「カチュアさん?」
「わたしならだいじょぶよ~。それよりも、早く戦いを終わらせないと~。いっぱい、犠牲者が出てきちゃうわ〜」
呼吸が安定している。本当に大丈夫なそうだ。
ルナが何か言いかけていたが気になる。確かカチュアがこのままでは死ぬかもしれない的なことを……今は置いておこう。
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