3-3 ナギサイド

 ——もし、私に子供ができたらの名前よ。あなたの、名前から取ったのよ~。

 ——う~ん。その名前のどこに、私の名前から取ったの? 面影がないような……。

 ——反対にしたのよ~。そうすれば、読めるでしょ~?

 ——ああ、なるほどね。……って! 合っているのは、最初と最後だけだよ。真ん中が違うじゃん。「ギ」になっているよ。

 ——う~ん……。細かいことは気にしない、気にしなーい?

 ——なんで、そこでハテナが付くんだよ!? でも、まあ、ネイミングセンスのない、あなたにしては、いい名前じゃない。

 ——えー、酷い、わたしなりに考えたのに~。

 ——どこが? 確かに、キラキラネームじゃない。だけど、明らかにペットに付けた方がしっくりくるのばかりなんだよ。


 一人は穏やかな口調で話す女性。何となく雰囲気がカチュアに似ている気がする。もう一人の女性? というよりも、声からすれば、十代前半くらいの女の子の声だ。最近、どこかで聞いたことがある声だ。どこだっけ? それにしても、このやり取り、まるで私とカチュアみたいだね。




 あれ? 気がついた、風景が変わっていた。その風景の中にエドナがいた。私は、いつの間にか、夢でも、見ていたかな。それで、私は、今さっき目覚めたってことか。


 現在のカチュア達は、確か……、国境を通過するための許可書を受け取って、セシル王国へ向かう途中だったな。


「さて……一休みも、そろそろ、終わりです。国境はこの先です。カチュアさん、エドナさん」


 カチュア達の現在地は、コルネリア帝国とセシル王国の、国共付近までのところにいた。そこで、現在休憩中。その途中で、私は夢でも見ていたみたいだ。


 休憩中のエドナと、座ってお肉を食べているカチュアの元に、どこかへいっていたルナが向かって来た。


 すると、ルナが、エドナを見て驚いていた。


「てっ! エドナさーん! 何んで濡れているんですか?」


 エドナの服装を見ると、なぜか濡れていた。


「河原に綺麗な花を見つけたから、見ようと思って向かったら。転んで川に入っちゃったんだよ」

「何をやっているのですか!」


 全く、その通りだよな。


「川が浅っくって、よかったんだよ」


 いや! 服が濡れているから、良くねえよ! 溺れるよりかはマシだと思うが。


「あらあら~、大変だったね~」


 今度は、カチュアに視線を向けるルナ。


「カチュアさんは何していたんですか?」

「……お昼ご飯を食べていたの~」

「お昼はさっき、食べたばかりでしょ!?」


 ルナの言う通り、お昼食べてから、一時間しか立っていません。


「お腹が空いちゃって」


 カチュアって、結構、食べるんだよね。カチュアの大きな胸は実は胃袋じゃないかってぐらい。確か、エドナも、よく食べる方だったような。主に肉を。だから、こんなに胸が育ったのかな? コンチクショ!!


「取り敢えず、エドナさんの服を乾かしてから、行きましょ。エドナさんは服を脱いで、乾かしている間は、カチュアのフード付きマントを羽織ってください」

「わかりました」

「いやーーー!!!」


 転んだ、エドナはカチュアに突っ込んだ。そのまま、地面へ倒れていった。


「カチュアさん! エドナさん! 大丈夫ですか!?」

「うん、何とか……」

「わたしはだいじょぶだよ~?」

「でも、改めて見ると不思議ですね」

「何が~?」

「ガイザックの戦っていた姿を見てました。カチュアさんって、攻撃をまるで予知していたじゃ、ないかって、思うほど、華麗に避けられています。だけど、エドナさんの突進には、何故か、避けられないません」


 そう言えば、付き合いは、まだ、短いけど、カチュアが傷を負ったことは見たことはない。与えた人と言えば、このエドナしかいない。あれだけ、敵の攻撃を躱しているのに。


「ルナちゃん!? それでじゃあ、まるで、あたしが、猪型の危険種のように言わないでください!! ただ、転んでるだけなんだよ」

「ん~。何でだろ~? 相手の考えていることや気配はわかるのよ~。だけど、エドナちゃんのはまったくわからないのよ~」

「あ~。なんとなくわかった」


 話を聞いたルナは納得したようだ。それだけでわかるのか!?


「どういうこと?」

「エドナさんには、悪意を感じないって、ことです」


 なるほど、それは一理ある。振り返ってみれば、カチュアが避けられる対象は、敵意ある攻撃だから。読心術で相手の行動を読んで、敵からの攻撃は躱せるんだ。


 エドナのドジは、それに該当しない。いくら、読心術が優れても、エドナのドジは読めないってことだね。


「それだけじゃ、意味はわからないんだよー」

「わたしも~、分からないわ~」

「ざっくり、簡単に説明すると、エドナさんは神様に恵まれたドジってこと」

「まだ、意味が分からないんだけど、なんか、バカにされている気がするんだよ」


 エドナは頬を膨らませる。エドナでも、怒る時はあるのか。あまり、怖くないが。




 再び、出発した、カチュア達。しばらく、セシル王国へ向けて歩いていくと。


「この辺が、コルネリア帝国とセシル王国の国境です」

「ようやく、着いた」


 やっと、国境付近か。


「何者だー」


 空の方から、声が聞こえた。空から人? が降りてきた。それも二人も。


「わたくし、アルヴスの妹のルナです。こちら、兄の書状です」


 ルナが許可書を出して、空から来た人? たぶん、警備兵かな? その人達に見せた。


「アルヴス殿の……。失礼しました。話は聞いています」

「わかりました。ところで何で一人だけ、マントを羽織って、顔を隠していますが」

「あ~、カチュアさん、取って大丈夫ですよ」

「え? いいの~?」

「さすがに国境越えるのに姿が、わからない人を通すわけにもいかないでしょ」

「わかったわ~」


 カチュアはマントを取った。


「おお、蒼い髪と瞳」

「それに……おっぱいが……」


 今思えば、フードだけ、取ればよかったのでは?


「それよりにも、国境がかなり、警備が厳しいようですが、何かありましたか?」


 よく見たら、セシル王国側の空には、この警備兵の人たち見たいな人たちが、飛んでいる。


 そう、飛んでいるんだよ。この人達。


「実は、数日前から、魔物が、大量出現しまして、セシル王国内の村が、その魔物に襲われているのです」

「何ですって?」

「大変だわ~。助けないと~」

「あのー。これは我々の国の問題で……」

「だいじょぶよ~。わたしは、そういうの気にしないから~。それに困っていたらお互い様よ~」

「そうですよ! 大変なことになっているんだから、助けないとなんだよ」

「おお、なんて、慈悲深きお方たち、まるで女神様」

「女神じゃなくって、カチュアよ~」

「同じく、エドナです」

「では、こちらへ」

『ところでカチュア』

「どーしたの~?」

『あの人たちの背中、翼みたいのが付いていなかった?』

「……」


 いつものように、黙り込んだ。


「そう言えば~……。付いていたような~……」

『もう、いいよ』

「カチュアさん、どうしたの? 一人で」


 エドナが尋ねた。


「ナギちゃんと話していたの~」

「なんて?」

「あの人たちに~、翼が付いていなかったかって」

「ん? ……そう言えば~。変わった鎧だと思ったんだよ」


 祭りとかの、衣装かよ。


「なんとなく、話はわかりましたので、歩きながら説明しますよ。亜人に関して」

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