4-4 エドナサイド

 あたし達は、ルイドの街にある宿屋に、泊まることになったんだよ。


 そして、その日の夜。


 あたし達は、個室で休んでいたんだけど。


「あれ? カチュアさん、どこに行くんですか?」


 カチュアさんが、部屋から出ようとしたんだよ。


「えっ? ちょっとね〜」

「夜は危ないですよ」


 ユミルさんが呼び止めたんだよ。


「うーん、じゃあ、ユミルちゃんも一緒にいく?」

「行くって、どこに行くんですか?」

「ルナちゃんに関係すること」

「ルナに?」



 

 あたし達は黙々と、カチュアさんの案内で連れてこられた。


 夜でも辺りが明るいし、賑やかなんだよ。すれ違う人達の着ている服はかなり派手なんだよ。何だが、見ていると目がチカチカしてきたんだよ。


「着いたわ〜。きっと、ここよ〜」


 目的地に着いたようなんだよ。そこは、この街の中では、一番大きい建物だったんだよ。


「わぁ〜。大きな建物なんだよ!」


 真上まで顔を上げたんだよ。


「あっ!」


 あたしは、顔を上げ過ぎて、後ろの方へ倒れていったんだよ。


 ドーーーーーン!!!


「うっ〜!」


 あたしの頭が、カチュアさんのお腹へ突っ込んじゃった、みたいだよ。


「大丈夫ですか?」


 カチュアさんの方へ振り向く。


「だいじょぶよ~」

「うう、ごめんなさい」


 はうう。いつも、カチュアにぶつかって、申し訳ないんだよ。


「ここって、賭博場ですよね?」

「よかった。当たっていわ~」

「え? ここが、賭博場って、知らなかったんですか?」

「え~、そーよ〜。宿屋から魔物ぽい声が聴こえたから、それを辿ったら着いたよね~」


 さすが、カチュアさん。耳がいいんだね。あたしは、この賭博場の外にいても、魔物らしい声が聞こえないんだよ。


「アルヴスが心配なんでしょ?」

「心配ですけど……」

「わたしたちで出来ることはやろう~。もし、本当の話なら、大変なことになるから」

「ありがとう、ございます」


 あたし達は、賭博場へ入っていくんだよ。


 


 賭博所の中も、かなり賑やかなんだよ。でも、その賑やかさで、耳が痛くなってきたんだよ。


 賭博場の中は、結構、広いんだよ。中央には円状の土台があって、その周りにはあたしがいるのが、観客席。とにかく、広いんだよ。あたし達が今いる観客席の上にも観客席があって、その上にも、観客席が。全部で五階もあるんだよ。


 一見、楽しそうな、施設だと思ったんだけど、中央の円状型土台の周りには、針の山が設置されていたんだよ。何で、あんな恐ろしい物を設置しているの? 危ないんだよ! 落ちたら、死ぬんだよ!


「……ところで、ルナ」


 瞳の色が赤くなったカチュアさん……あ! ナギさん何だよ! で、そのナギさんが、ルナちゃんに尋ねるんだよ。


「こんな大変な時期なのに、呑気に賭博なんて開催して大丈夫なのか?」

「どういうことですか?」

「現在、コルネリアは、ヴァルダンとかいう国と、戦争中じゃなかったけ?」


 そう言えば、コルネリアって、ヴァルダンと戦争中という話を聞いたんだよ。


「確かにそうですね。でもまあ、自分が参加しいるわけでは、ないから。ゲブンから、言わせれば、まあ、勝ってに戦っていろよって、ことなんでしょ」

「他人事だな~」


 ナギさん。顔を見てもわからないんだけど、心の底から、怒っていることが伝わってくるんだよ。


「今更だけど、普通に入っちゃったけど、こういうところは二十歳越えないと入れないんじゃ」

「そうなんですか?」

「賭博を見るだけなら、何歳からでも、大丈夫なんですよ。賭け事に参加するには二十歳超えないといけないのです」

「じゃ~、わたしは、参加できないわ~。わたしは十八歳だから」


 いつの間にか、カチュアさんの瞳は蒼色に戻ったんだよ。


「カチュアさんは後二年ですね。あたしはまだ十五歳だからまだ五年はかかるんだよ」

「あなた達は胸だけで見るなら、大人なんだけどね」

「はうう。村の皆さんにも、よく言われるんだよ」

「あー、そうですかー」


 ルナちゃんが、何故だか、わからないんだけど、不機嫌になっていることは何となく感じるんだよ。


 はうう。あたし、何か、ルナちゃんを怒らせれることしちゃったのかな?


「そんなに大きいのかな~」

「周り見てください。カチュアさん以上なんていないでしょ」

「うーん……そー言われて見れば~、わたし、大きい方だったんだわ〜」

「大きい方って、レベルじゃないから!! 少しは自覚してください! カチュアさんが今着ているのだって、オーダーメイドだったんだから!」


 ルナちゃんの顔が赤くなっている。気のせいかな? 村の皆んなも、そうだったんだけど、あたし達の周りには胸の話になると、熱が入るんだね。でも、何で?


「あの~、お取り込み中、申し訳ないのですが、そろそろ始まるそうですわ」


 ステージの方を見ると、二足で歩く豚のような魔物が現れたんだよ。


「ブヒヒヒヒィ、これより、宴が始まりでブヒ」


 魔物が喋ったんだよ! 喋りる魔物っているんだね! でも、とても不気味な笑い方をしているんだよ。ちょっと、怖いんだよ。


「喋る魔物なんているんだね」

「珍しいでしょ。あれはオークって、いうんですよー」


 ルナちゃんがいつものように、説明してくれたんだよ。


 あの豚見たいな、ニ本足で歩く魔物って、オークって、言うんだね。


「わたし、旅の途中で、あれを見たことあるわ~」

「あの~、あれは……」


 ユミルちゃんが何か言おうとすると、カチュアさんの瞳が赤くなった。また、ナギさんが出てきたんだよ。


「いや、あれ人間でしょ! 確かに豚に見えるけど。てか、何、ルナも一緒になってボケてるの」


 すぐにカチュアさんの瞳の色が蒼色に戻ったんだよ。


 あれは人間だったんだ。


「いや~、嫌な奴だから、つい」


 ルナちゃんがちょっぴり舌を出した。


「と、いうことは、奴が」


 また、カチュアさんの瞳の色が赤色になったんだよ。ということは、ナギさんが話しているんだね。


「そう、あれが、ゲブンよ」


 あの人がゲブンだったんだね。何を食べたらあんなにお腹が膨れるのかな? そう言えば、ルイドの街にいる貴族は、皆んな、まん丸と太った人が多かったんだよ。貴族は皆んな、まん丸と太った人のことを指すのかな? つまり、まんまるお腹が貴族の印なんだね。


「あれ呼びなんだ」

「あの~、私も皆と一緒にボケた方が」

「いや、やめてくれ、カチュアだけでも精一杯なんだから」

「ユミル様、遠慮はいりません。どんどん罵りましょう」

「ややこしくするなよ。ソフィア」

「ところで、ナギでしたっけ?」

「いきなり、なんですか? ソフィア」

「今気づいたんですか。あなたが出ている時は、瞳の色が変わるだけでなく、口も動かないんですね」

「動いていなかったんだ。自分でも、わからなかったわ」


 何だか、楽しそうな会話だね。


「さて、これより、最初の賭博という名の、宴を行うます!」


 ゲブンとは別の人が喋り始めたんだよ。結構、声が大きんだよ。こう言うのって、実況者って、言うんだよね? 試合とかを、盛り上げてくれる人って、村長さんが教えて、貰ったんだよ。村でも、男性だけの武道大会が開かれたことがあったんだよ。その時は毎回、村長さんが実況していたんだよ。


「本日、第一回目は。挑戦者はゴンザレス選手!」


 現れた選手の人は上半身裸で物凄い筋肉をしているんだよ。ハルトさんと、いい勝負になりそうなんだよ。


「アイアム! キンニク!!」


 選手の人が叫ぶと、観客席から歓声が上げる。


「そして、相手になる魔物はマナーガルム!」


 二本足であるく狼、マナーガルムがステージに現れた。


「それでは、始め!!」


 魔物とキンニクの人の決闘が始まった。


 「キンニクー」と叫んでいた、筋肉モリモリの男の人はマナーガルムの懐を殴りつけたんだよ。マナーガルムが後方へ若干、飛ばされていったんだよ。


「カチュアさん以外でも、あの大きな魔物を殴り飛ばせられるんだ」

「そうではありません。あの人が付けているグローブありますよね。なんか付いてますよね?」


 あのキンニクの人の両手に、身に付けている右グローブの甲の部分に宝石見たいのが付いているんだよ。あれって……。


「ん~、あ! あれは魔石かな?」

「身体能力を上げる魔道具です。あれで通常の倍の身体能力を上げているんです。身体能力を上げる魔術はルナ達の自然を扱う魔術と異なり、魔術を扱うための技術は必要ありません」

「じゃあ、あたしも、あれを装備したらカチュアさん見たいな、怪力が得られるんですね」

「ただし、その代わりに体を鍛えないと、反動が大きく、出ちゃうのです」

「反動ですか? どういうことですか?」

「ルナが、あの魔道具を付けて、今、試合に出ている、筋肉の人のような、ことをすると、逆にルナの腕が吹き飛んじゃうのです」

「えーーー!! どうしてそうなるの!?」

「そこ上げした、身体能力を耐えられる体が、必要なのです。鍛えられていない体じゃないと、そこ上げした、身体能力に耐えられず、体を壊す恐れがあるのよ」


 ルナちゃんの説明しても、いまいち、ピンと来ないんだよ。つまり、筋肉モリモリじゃないと使えないってことだよね?


「ルナ、あの針は? まるで、針地獄みたいよ」


 カチュアさん。じゃなかった、ナギさんだよね? もう、ややこしんだよ。


 そのナギさんがルナちゃんに尋ねたんだよ。


 針地獄って、あのステージの周りにある無数の大きな針のことかな? はうう、落ちたら、痛そうなんだよ。


「あの下に魔物を落としても挑戦者が勝ちになります。特殊な魔術を常に発動状態になっている針で、魔物の体を突き破ることができます。なんでも、魔物が逃げ出した時のためのです」


 あの針は魔物対策なんだね。


 ステージを見るとゴンザレスって、言うんだよね? あのキンニクの人? その人がマナーガルムをステージ外まで投げ飛ばしたんだよ。


 マナーガルムは針山に突き刺さったんだよ。はうう、見ていたら痛そうなんだよ。実際に体験しているわけじゃないんだよ。だけど、見ていたら、全身痛く感じるんだよ。


「ウィナー! ゴンザレスー!!!」


 勝利の宣言がされると、観客席から歓声が響く渡ったんだよ。


「アイアム、キンニクー」


 勝っちゃった。でも、ニンニクの人が、マナーガルムに勝ったのに凄さが余り、感じないんだよ。


「鑑賞もいいですが、情報を集めては?」

「そっか~、でも、何から始めようかな~」

「アルヴス殿を探されては?」

「そーだね~」


 円状になっている観客席を歩き回っているんだけど。


「アルヴス、いないね~」

「きっと、賭博場の裏側にいるのですわ」

「じゃあ、そこに行こうか~」

「ちょっと! カチュアさん」


 カチュアさんは観客席から出ようとしたんだよ。


「エドナちゃんとユミルちゃんは、どーする~?」

「あたしも行くんだよ!」

「エドナさんは来ない方が」

「はわわ! 何でよー!?」


 ルナちゃんに賭博場の裏側へ行くのを止められたんだよ。


「ユミル様、大勢で行くと、怪しまれます。ここは数人残られたほうが」

「分かりました。ですので、わたくしとソフィアさんは、ここに残りますわ」

「わかったわ~。行きましょう!」

「あたしも、いくんだよ!」


 必死に主張したんだよ。


「は~、仕方がないですね」


 何故だが、ルナちゃんが大きく息を吐いたんだよ。


「やったー!!」


 ということで、あたしと、カチュアさんと、ルナちゃんで、アルヴスさんを探しに賭博場の裏側を探すんだよ。

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