3ー11 ????サイド (場面変更)

 ここは、コルネリア帝国、帝都中央にある、コルネリア王宮。


「はぁ~、やっと終わった~」


 大きな、ため息を付きながら、主君である、シグマ様と共に、会議室から出て行った。


「すまないな。付き合わせしまって」


 あ! いけない。シグマ様の前で、みっともないところを、見られてしまった。ここは、びしっと、しなければ。


「いいえ! 私は、大丈夫です!」


 とはいえ、あの雰囲気は好きではない。もう、くたくただ。


 私はロゼッタ。八騎将の一人、シグマ様の左腕。まだ、十八歳だけど、これでも立派な騎士です。


 でも、騎士に、それも八騎将の側近になるのは、大変な道のりだった。なんせ、コルネリア帝国は実力主義。というよりも勇能力を持っていないと、即位は難しいとされている。


 後は、貴族という身分を持っていないと、ならない。それでも、力がなければ、貴族という、地位がなくなる恐れはある。


 だから、こそ、貴族達は、貴族という地位を、守るために、力を付けていた。力を求めること、自体、悪いことではないが、せめて、権力争いをするのに、使うのではなく、民を守るために使って欲しいよ。


 勇能力を、持たない私を側近として置いてくれた、シグマ様には、感謝をしきれません。


 私は、さっきまで、八騎将の、緊急の軍事会議に、シグマ様の付き添いという形で、参加されていた。内容はヴァルダンのことだ。


 現在は防衛戦かつ、侵入してきたヴァルダン兵の討伐だが、八騎将の一人、ガロンが痺れを切らし、揉めに揉めて、さっきの会議にて、ヴァルダンに攻撃を仕掛けることが決定された。


 八騎将の一部を除いて評判はかなり悪い。その一人である、ガロンは、力こそ絶対的な正義という、信念の持ち主で、力のない者を見下す方向性である脳筋バカ。


 脳筋バカと心の中で叫んで、しまった。脳筋バカは事実だが、人前には言わないよう気をつけないと。


 話は戻して、そういう思考の持ち主のガロンにとって、例え、民がヴァルダン兵に殺されようが、関係ない、弱い者は殺されて当然と考えだろう。だから、防衛戦など、あの脳筋ヤロウには無意味は行為だろう。


 まったく、あの脳筋ダルマには、真の意味で国のことなんて、何もわかっていない。いや、わからないから評判が悪いのか。


 まあ、そんな話は置いといて。これから、本格的に戦争が始まるわけだ。


 攻め込むと言っても、シグマ様の隊は、引き続き、防衛と侵入してきた、ヴァルダンの討伐だ。


「それで、ロゼッタには、ある任務を任せたい」


 会議が終わったばかりだが、シグマ様から、次の任務が始まった、


「今はヴァルダンとの戦争中だ。任務の内容は、二つある。一つ目、ヴァルダンはコルネリア内の村や街を襲っている。そこは私がやる」

「私とアルヴスの任務は、アルヴスからの、報告の件ですか?」

「そうだ、お前もしっているゲブンのことだ」

「ゲブンのことは、今に始まったばかりでは、ないはず」


 ゲブンは八騎将の一人。八騎将の中でも一位、二位を争う、評判の悪さを持つ。ガロンとは、また、別の意味で。


 コルネリア帝国ができる前の、王国の将をしていた父を持つ。悪帝として、大陸全土の支配を企み始めた皇帝を、空の勇者と共に倒した。その後は八騎将の地位を得た。それが五年前に病気で亡くなり、息子であるゲブンが八騎将になった。


「確かにな。しかし、ゲブンは、将としての才はなくとも、悪知恵だけは、人一万倍働くデブだ。この戦乱で、何を企むか」


 父親は立派の人だったらしいけど、その息子は将としては無能だから。


 本来の八騎将の地位はゲブンの弟がなるはずだった。弟の方が優秀とは聞いていたんだけど、なんかの遠征時に、事故で亡くなったらしい。


 噂だが、後継するために、出来のいい、次男を暗殺した、なんていう話もある。


 ゲブンの話をしていると、気分が悪くなってきた。


「具体的な、任務の内容は?」

「これに書いてあること、読んでおいてくれ」


 一枚の紙を渡された。読んでみると……、前回とほぼ同じような内容だ。


「ところで、そなたも、感じたか」

「何がですか?」

「最近の皇帝様の感じを……いや、なんでもない」

「やはり、心配なんですか? 皇帝様とは戦友だから」

「まあ、そんなところだ」


 現、皇帝様とシグマ様は、悪帝を倒した八人の空の勇者。で、戦いが始まる前から、昔からの仲良しだったみたい。いわゆる、幼馴染ね。


「私としてはシグマ様のことも、心配です」

「なんのことか?」

「刀を構える時、左手で持たなくなりましたよね?」


 そう、それはつい最近、ヴァルダンの討伐時のこと。ヴァルダン兵の攻撃を刀で受け止める際、刀を持つ手を右手だけで持っていたこと。結果的には、ヴァルダン兵を返り討ちにしては、います。だけど、命に関わることなのに、両手で持たなかった。そこに、疑問に思った。もしかして、左手が、使えなかった可能性が、あったじゃないかと。


「気づいていたか。……怪我の後遺症が、最近になって酷くなってきているだけだ」

「大問題ですよ! いつか、死にますよ!」


 シグマ様はお強い方だ。だけど、結構無茶をする方でもある。何度か、死にかけたことが、あったぐらいだ。見ている私たちの寿命がなくなりそうだ。


 任務の話に戻らないと。


「……ところでセシル王国の救助要請時、アルヴス自身は参加しなかったみたいだけど、今のアルヴスの、手元にいる兵で、足りていたんですか? 無事に終えたみたいですけど」

「いや。我々の部隊は直接関わっていない。なんでも、成り行きで巻き込まれたが、ルナと、アルヴスが信頼に置ける二人組が、解決してくれた見たいだ」

「あのアルヴスが? どんな人なんですか?」


 アルヴスはあまり他人を信用しない人ではある。だけど、だからといって、アルヴス自身、悪い人ではない。まあ、性格が、いいのかって言われたら悩むけど。


 そんな、アルヴスから、信頼されているなんて、興味深いわ。


「一人は伝説のような人だそう」


 話を聞いていると、なんだか興味が、わいてきたわね。その信頼に置ける二人組に。


 そういえば、昔。私も、その「伝説みたいな人」と遊んでいだっけ。外形もだけど、あの人のように強い子と。


 今頃、どうしているのかな? あの事件以来、彼女を含めた姉妹達の姿は、消えてしまったから。


 元気にしているのかな? ……カチュアは。




第三章   翼を持つ者 完

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