5-7 ナギサイド

 まったく、驚くことが多すぎる! なんか、敵側は武装しているし。個人的には、ソフィアの豹変ぶりの方が一番驚いたが。


 今は、そんなことよりも、武装した、ヴァルダン兵だ。あれはいったい!?


「カチュア!」


 その名を出したのは、ロゼッタだった。


「あっ! ロゼちゃん久しぶり~」


 「久しぶり」というほど合っていなかっけ? この子の中では時間がゆっくり、進んでいるのか。まあ、そういう子か。


「相変わらず、こんな時なのに呑気ですね」


 全くだ。さっきまでは苦しそうだったのに、いつもの、のほほーんとした雰囲気に戻っているし。てか、戦いの最中なのにカチュアの能天気な性格は変わらないな。


「間に合ったか」


 ロゼッタが遅れて駆けつけてくれた。シグマと、そのシグマ率いる軍が現れた。


「あなたは……シグマだっけ?」


いや、名前忘れているのかよ。今日、何回か合っただろ。


「状況はこっちに向かう際、見ていたから何となくだが、把握したわ。ロゼッタ、君は他の覚醒もどきをした奴の相手を。私はクレイズを」

「わかりました」


 シグマはロゼッタと残りの兵たちを残して、クレイズのもとへ向かった。


「じゃあ、いくよ~、ロゼちゃん」

「は~、全く、しょうがないな~」


 ロゼッタはため息をつきながら、槍を構える。


 敵からカチュアたち目掛けて、攻撃を仕掛けるが、カチュアは剣で受け止め、そのまま、敵を後方まで弾き飛ばし、追撃に右腕辺りを剣で斬りつける。


 一方、ロゼッタは敵の攻撃を交わしながら、敵の腹部目掛けて槍で突き刺す。


 しかし、二人の攻撃は効いていなかった。


「どーしよう。斬れないわ~」

「勇能力者と同じ、障壁を張られているのよ」

「うーん。どーしよう?」


 以前、ガイザックと戦った時は、あっさり、壊した記憶があったんだが。今回はどうなんだ? でも、確か、障壁って、何度か攻撃当たれば、壊れるって、話だったような。だから、いづれ、攻撃していきば……。


「ぐっ! ぐおおおおお!!!」


 何か、苦しみ始めた。やはり、攻撃が当たっていたのか? いいえ、傷がない。じゃあ、何で。


「ぐっ! ぐおおおおお!!!」


 不気味な武器を持った、ヴァルダン兵が次々と、体から黒い煙が出てきて、煙から人の型ではなく、二本足で立つ巨大なトカゲのような生き物が現れた。


「魔物化?」

『あの姿は……ライム村の』

「魔物化は確か、魔石を直接使うとしか、ならないのに。アルヴスの報告通りなら、あの武器には魔石が。でも、それなら、何で、魔物化を」


 ロゼッタがぶつぶつ言いながら考えているとカチュアが。


「ロゼちゃん~」

「あ! カチュア何?」

「あのね~」

「だから、どうしました?」

「くるよ~」

「何が?」

「魔物の攻撃が~」

「え?」


 ロゼッタが前を向くと、魔物が攻撃を仕掛けてきた。ロゼッタは慌てて、攻撃を交わした。


「ちょっと! カチュア! 教えるの遅すぎる!」

「ごめんなさい~」

「まあ、よそ見していた、私が悪いんですか」


 てか、結構ギリギリ交わしたよ。この人。後何秒のレベルではなく0点何秒遅ければ、モロ攻撃が当たっていたところよ。


『カチュア! あの姿は一度、ライム村で戦った奴と似ていなかったか?』

「ん? うん~。どーだったかな~」

『忘れとるんかい!』

「カチュア、どうしたの?」

「前に、似たような魔物と戦ったことが……あるような~」

曖昧あいまいですね。いつものことだけど」


 さすが、幼馴染。カチュアの扱いには慣れているのね。まあ、「いつものことだけど」って、済ましていいのか?


「来たわ! カチュア、やりますよ」

「わかったわ~」


 二人同士で攻撃を仕掛るが、固い。


「ドラゴンと似たような姿だけに固い」

「困ったわ~」

「カチュア! あなたは一度、あれとやり合ったというなら、どうやって、倒したの!」

「ん~、ナギちゃん、覚えている」

『今、ロゼッタが目の前にいるだろ!』

「あー! そうだった~」


 まだ、付き合いは短いけど、カチュアの人物像は理解してきている。慣れていいのかはわからないけど。この子に隠し事なんて、無理だわ。


「気にしなくっていいから、代々わかっているから、亡霊かなんかは知らないけど」


 えー! もしかして、気づいていた? いや、今はいいか。この状況では、カチュアの口を借りて説明はできない。私は、戦っているカチュアに、あの魔物を倒した方法を教えた。


「どーやら、自分の爪だと、体を貫けるらしいのよ~」

「弱点は自分自身か。……どうするか」

「魔物は大抵、仲間意識はありません。それなら」


 ソフィアの右手からさっき使っていた、電気を集めた鎚が現れた。これはエドナの風の矢と同じ、魔術で構成された鎚なのか? あれ? 確か、これで戦ったソフィアは……。


「周りを気にさせずに、暴れまくればいいのさ!!!」

「あの~、ソフィア殿」

「ソフィアはパーティとかで、盛り上げるのに向いていそうだわ~」

『死のパーティでも開くのかよ』「死のパーティでも開くのかよ」


 ロゼッタとセリフが被った。


「危ない~」


 トカゲ魔物がロゼッタ目掛けて、殴りかかってきた。カチュアは素早く、ロゼッタの前に立ち、自身の拳でぶつけた。トカゲ魔物は後方へ吹き飛んでいった。


「だいじょぶ?」

「カチュア?」

「どーしたの?」

「手、手を見て、燃えているから」

「手?」


 カチュアの手には蒼い炎が出ていた。


「あら? 本当だわ~」

「呑気に言っている場合か! 熱くないの?」

「ん~、あまり……」

「嘘でしょ」


 トカゲ魔物が襲いかかってきた。カチュアは攻撃を避け、その魔物の顔面を殴りつけた。剣で斬れなかった魔物。カチュアの場合は精々、殴り飛ばすぐらいだ。それでも、この巨体を殴り飛ばすことは普通できないが。 


 そう、今までは。


「あら~」

「粉砕しちゃったよ」


 カチュアが殴ったところは、砕け散った。殴った魔物の首が無くなっていた。


「何だがわからないけど、攻撃が効いたみたい」


 誰かどう見ても、その蒼い炎が原因でしょ?


 そして、手しか、燃えていなかった蒼い炎だったが、カチュアの体中に蒼い炎が徐々に出始めてきた。


 あれ? 何だが意識が……どうなっているの?

 保てなくなってきている……。




 ーー助けるって、どうするの? 私に架けられた呪縛を解けるのはシェリアが持つ力だけだよ。しかも、その力を持って生まれてくる確率なんて、奇跡と言っていいレベルよ。それでも、私を助けるの?


 

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