3-8 ナギサイド
「何とか倒したんだよ」
周りには、カチュア達のことを襲って来た、狼型魔物の死骸だらけだ。カチュア達が全員返り討ちにしたが。
ルナは、その狼型魔物の死骸をじっーと見つめている。何か考えている、ご様子。
「おかしいですね。この状況は」
「ルナちゃん?」
研究員のルナがおかしいって、言うからには、何か気になることでも、あるのか?
「違う魔物が、同時に襲ってくるなんて」
「でも、同じ、狼なんだよ」
確かに殆どが狼。同じ狼でも、二足歩行で歩いたり、燃える狼としているけど。なんか、おかしいのか?
「型はね。でも、種類は違うのよ。例え、同じ狼型と分類されていても、種類が違うもの同士、交わることは、まず、ないのよ。あったとしても、寒い地方に生息しているのと、暑い地方に生息しているのものが、同じ場所にいるとは、思えません」
言われてみれば、その通りだ。
「そういうものなのかしら〜?」
あ~、カチュアはあまり気にしないタイプなのね。
「確かに、ここに来る前にフリーズガルムにも遭遇しました。普通なら寒いところにいるはずなのに」
そんなのもいるのか。魔物とは奥深い物ね。あれ? 本来なら寒い地方にいるはずの魔物に、違う魔物同士が群れていた。ということは。
『カチュア、ちょっとルナ達に話をさせて』
「わかったわ~」
「……ルナ。ちょっといいかな」
「もしかして、ナギさんですか? どうしましたか?」
カチュア目線では分からないが、カチュアの瞳が赤くなっているようだ。
カチュアの体を、使って会話ができるといっても、体は何故か動かせられない。口だけは動かせられるが。まあ、私は話せればいいのだが。
「それって、もしかして、誰かが意図的に、この国に魔物を送り込んだということ?」
「その可能性はあります」
「何と、そんな、輩が? それは、そいつらを見つけて、消す済みにしないと」
怖い、怖い。一見、笑顔だが、その笑顔が、恐怖に感じてしまう。
このソフィアって人が言っていること。仮に冗談として、言っていても、その笑顔を組み合わせたら、全然、冗談には聞こえないんだよな。
「そーいうことね~」
あれ、いつの間にか、カチュアと入れ替わっていた。今はそんなに疲れてはいないのに。これ以上、私から話すことはないが。
「じゃ~あ~」
カチュアはマナーガルムの死骸へ向かった。
「カチュアさん? 何をしているんですか?」
マナーガルムの死骸を持ち上げ、それを森の方へ、投げ飛ばした。
「カチュアさん!? いきなりどうしたんですか?」
それは驚くよね。
「何で、投げつけたんですか?」
「ん〜。他に投げるのが、なかったから~」
投げ付けるのは前提か!
ドカーーーン!!!
マナーガルムの死骸が落ちたようだ。
「そろそろ、出てきた方が、いいじゃないかな~?」
空を見上げると、なんか降ってきた。そして、落ちてきた。それは二人組もフードを被った人だった。
森の方からが、出てきたようだ。出てきたというよりかは、吹き飛ばされてきたといっていいかな?
「え? ヴァルダン兵?」
落ちてきたフードを被った二人組が起き上がってきた。
「なぜ? ここにセシル兵が?」
「どうやら我々は、ここまで飛ばされたようだ」
「てことは、貴様らの仕業か!!!」
声からすれば二人共、男のようだ。
怒っているようだけど。怒りたいのはこの国の人だと思うが。
「いやーーーーー!!! 顔なしーーーー!!!」
ユミルが騒ぎ出しちゃった。でも、顔なしって、何のことかな? フードを被っているだけなのに……そっか! フードを被っていて、顔が見えないから、顔なしか。納得。……いや! あれ、フード被っているだけだから!
「テメェーらが魔物を使って、セシル王国を襲わせたのか? それなら、その罪、テメェーらの死で償ってもらいますよ」
目が怖い! もう、冗談とか言う、顔じゃなくなっている。
ソフィアはナイフを取り出した。
てか、お隣でユミルが騒いでいる最中なのに、それはスルーですか!?
「まあ良い、これでもくらえ」
フードの男のうち一人が、持っていた杖から黒い玉が出てきた。それをカチュアたち目掛けて放たれた。
始めは、一つしか、なかった黒い玉は、五分裂した。それをカチュアと、エドナは躱わした。ソフィアは黒い玉目掛けてナイフを投げた。
ドカーーーン!!!
ナイフと黒い玉がぶつかった爆破した。
ルナが火系魔術を放つよりも早い。もしかして、無詠唱魔術とかいう奴? 奴らは勇能力とかの、持ち主なの? ……分からないことばかりだ。
すると、エドナが何かに気づいたようで。
「あの杖は……。ライム村を襲った人達が、持っていた武器と似ているんだよ」
言われてみれば、ライム村を襲ったヴァルダンの偉そうな男が持っていたのと似ている。
あの生き物の死骸でできているような武器に。
「え~? う~ん……、見たことあったかしら〜?」
こんな状況なのに、考え込んでる場合か! カチュア。
「確か、あれを持っていた人が魔物になっちゃたんだよ」
そう言えば、そうだったわ。ただ、それは、本当に、あれと、まったく同じ代物だったらの話だ。
「時間を稼いでくれ。あれを出す」
「わかった」
フードの男の一人は、もう一つの男の後ろへ下がり、杖を掲げた。まるで、瞑想をしているように、目を瞑って静かにしている。あれが魔術なら詠唱でも唱えているのか?
「嫌な予感がするわ~」
カチュアさんの第六感覚とも、言えるものが何かを悟ったのか。フードの人に向かって走ったが。
「くらえ!!」
もう一人の前衛に立ったフードの男、はカチュア目掛けて、黒い玉を何発か放たれた。だが、カチュアには当たらない走りながら、全てを躱わした。だけど。
「あ! まずいわ~」
誤算があった。
カチュアを当てられなかった黒い球はユミルの方へ向かっていった。
「ユミルさん!!! 危なーい!!!」
ユミル様は、刀で、黒い球を何発かを受け止めた。
「はああああああああ!!」
刀で受け止めた、黒い球を前方へ弾き飛ばした。
黒い球はフードの人の方に向かっていった。そして、そのフードの人の真下に黒い球が落ち、爆発した。
「何だと!? 跳ね返しただ!?」
それは私も気になったわ。すると、ソフィアは。
「あの剣には、魔術を反射する金属が使われているのです」
「まだまだ、いきます」
ユミルさんは刀を斬り下ろすと、真空波みたいなものが飛びだした。
「あれは……水の刃?」
シャキーーーン!!!
ルナが言っていた水の刃? がフードの人達が持っていた杖に当たり、刃物で切り裂いたような切り口が付いた。
「くそー! やりやがるな!」
あの姫様やりますね。黒い球を跳ね返すしたのは気になりますが。あの水の刃と呼ばれていたのは、魔術の一種かな? 考え事をしていると。
バチバチバチバチ!!
ソフィアの全身から電気が出ている。
「うちの姫様に、刃を向けたことを、死んで後悔させましょうか」
この人の感情は出来れば理解したくない。かなり、ご立腹だ。纏っている電気は怒りの雷だ。
「だけど、準備ができた」
「そっか、これで奴らも終わりだ」
何かを始める気なのか? 後ろに下がっていた、フードの男の背後から黒い靄が出現した。その靄が無くなっていくのと同時に何かが出てきた。
「ぐぅるるるるる!!!」
フードの人達の、後ろに狼らしき生物が現れた。恐らくは魔物。ただ、カチュアたちが、倒した狼型魔物と、違うところは大きいということ。いや、大きすぎる。私の知っている、狼よりか数十倍も大きい。
しかも、悲しい事にそのデカい狼が二匹も。
「もしかして、あれは……フェンリム? 狼型の上級魔物の?」
「なんで、いきなり現れたの~?」
「もしかして、あれは、失われた技術の一つである転移術とかいう魔術なのでは?」
転移なんて言うものもあるのかよ! 魔術は、なんでもありなのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます