2-11 ルナサイド
取り敢えず、ルナ達はアヴァルの街に戻りました。兄様も、本来の目的地であったタウロの街へ行くには、遠いため、一緒に戻ってきました。
カチュアさんとエドナさんは、宿の個室で待ってもらっています。
「お待たせしました」
ルナはカチュアさん達から、聞いたことを兄様に話してから、カチュアさん達が待っている、部屋に兄様と入りました。
「本当にすみません。だけど、カチュアさん、抜く時には、力を加減してくださいね」
「わかったわ~」
エドナさんの尻部分が床にハマっています。床に、穴が空いてから、また、修理でしょうか?
「どうした?」
「エドナちゃん、ベットの上に座ろうとしたら~。滑って手前の床に落ちたのよ~。そして、今度は床が抜けて、今はお尻がはまっているのよ~」
エドナさん、災難続きですね。
エドナさん。生涯の破損額半端じゃない額になりそうです。
「取り敢えず、助けようか。嬢ちゃんは下がっていな。また、災難が続きそうだから」
そうでしょうね。カチュアさんがエドナさんを手を引っ張って抜け出したら、今度は抜け出した勢いで、飛んだエドナが、天井に突っ込みそうだし。
何とか、エドナさんの救出に成功しました。正直、助けた拍子にまた、災難に遭わなくってよかったです。
「改めて、名乗らせてくれ。俺はルナの兄アルヴス。魔術研究員で帝国、八騎将のシグマ様に支えるものだ」
「あっ、ルナちゃんのお兄さんも~、魔術研究員なんだ~」
「シグマ様って、空の勇者と呼ばれる方ですよね。二十年前の戦いで悪帝を倒した八人の英雄の一人ですよね」
「エドナちゃん、空の勇者って、なに?」
カチュアさんがエドナさんに尋ねる。
「カチュア殿は、あまり本とか読まないみたいだな」
「そーなのよ~。本を読むと、すぐに眠くなるのよ~」
まあ、勉強が苦手とか言っているぐらいだからね。
「空の勇者は、空にある国から、来たと言われていらしい。歴史上に、現れた人々の恐怖である、厄災が現れるたびに、空の勇者が現れると言われている。悪帝も厄災とも、呼ばれるぐらいの存在だったんだ」
「空に国なんてあるんですか~?」
普通はそう思うよね。
「実際は分かりません。昔から、空の国から来た、彼らのようなに者達を、空の勇者って、呼んでいます。しかし、何で空にある国から、来たのか、わからないのです。それに、空に国がある根拠はないのです。誰も行ったことがなければ、彼らが、空の国に戻った話もありません」
「あのー。そろそろ本題に入ろう」
兄様が話に割って入ってきました。
あ! そうだった! 空の勇者の話で終わりそうな勢いだった。
「ルナから、色々と聞かせてもらった。確認に聞きますがエドナ殿がライム村の住人ですか?」
昨晩、カチュアさんと話していた内容を、この部屋に入る前に兄様に伝えたんです。
「え? はい!」
「わたしたちが村から、出る時に来たのが、あなたたち~?」
「カチュアさん。気づいていたんですね?」
「わたしたちは、その、ヴァルダンの人だと思って、すぐに村から出たいたわ~」
だから、村人の墓は立っていたのに、その墓を立っていた人の姿がなかったわけですね。
「嬢ちゃんは、まるで戦闘するために生まれたかのようだな」
「わたしは戦いを好きじゃないわ」
ガイザックと戦っている時も、言っていたわね。あの戦闘力の高さで、戦いが嫌いって、言っても、説得力はない気がする。でも、現にガイザックに命を奪っていない。お顔は潰れていましたが。
でも、カチュアさんが本当にアレなら、戦うのが好きではないと言うなら、納得ができる。しかし、あれは伝説と言われている存在だ。でも、ルナの仮説はその伝説にしか、結び付かない。
「話を戻そうか。正確には、ライム村へ向かったのは、私の部下だ。私は別件でライム村へ行けなかったんだ。村を襲ったのはヴァルダンの蛮族どもだ」
「なんで、ヴァルダンが村を襲ったんですか?」
「襲われたのは、エドナ殿の村だけではない。他の村や街が襲われている」
「他の村でも、あたしの村みたいなことが起きていたんですか?」
「ほんの一週間前だ。いきなりの侵入で、コルネリア内にある村のいくつかは壊滅していったんだ。今のところヴァルダンは一時撤退されているんだ。近々、我が帝国はヴァルダンの討伐に向かわれる予定だ」
「あなた方はヴァルダン兵を退いたのでは?」
「はい……」
「いや、あんたの戦っている姿を見ていると納得がいく」
低ランクとはいえ、勇能力を持った相手を圧勝しちゃていますから。
カチュアさんの戦闘力は高い方です。多分、八将軍に匹敵するほどです。
しかし、今のヴァルダン軍は。
「帝国軍はヴァルダンには遅れは取れないはずでした。しかし、今のヴァルダンはかなり手強いです、謎の武器を所有している話です」
「確か、不思議な武器を持っていた人がいたわ~。とても、危険な感じがしたのよ~」
「でも、その人は突然、ドラゴンになってんだよ」
ドラゴン? ……ああ、魔物化のことか?
「それは、魔物化のことでいいのかな?」
「多分、それなんだよ。あの~、人がその……、魔物になることがあるんですか?」
珍しい話ではないんだけど。人が魔物になるのは信じられないないよね。
「魔石を摂取すると魔物になるのは、有名な話だよ」
「魔石って~。あの、魔術を使うための~? あれ、そんなに危険な、ものなの~?」
「エドナさんは魔石を直接体内に触れると毒って知っていますよね?」
「うん、魔道鉱石で作られた、魔道具を使わないといけないことは村長さんから何万回も話しを聞いたことがあるの」
あの~、それ、多すぎでしょ! どんだけ、心配症なのよ、その村長は。お母さんかなんかですか? あ! エドナさんにとってはライム村の人達は家族みたいなものね。過保護すぎると思うけど。
「恐らく、その武器は試作品で、魔石が埋め込まれているかも、しれない。まあ、試作品なために、何か誤作動を起こして、魔物になっただろう。今はそれしかわからない」
兄様は頭をかきながらため息をつく。
それにしても、やはり、魔物化した方がいたのですね。
「話が長くなってしまった。取り敢えず、ここまでにしよう」
そうですね。長すぎて、カチュアが今でも寝そうじゃないかって、くらい、ウトウトし始めている。
「エドナ殿には、辛い話をさせてしまいもうしわけない」
「あたしは大丈夫なんだよ」
「君達は旅をしているんだな?」
「はい」
「提案だが、どうしても、旅をしたいんだったら、セシル王国に向かったら」
「セシル王国って~?」
カチュアさんは頭の上にハテナが出でいる。
「村長さんから、聞いたことがあるんだよ。隣の国でしたよね?」
前からの、疑問だったんだけど、なんで、旅をしていたカチュアさんよりも、村から出なかった、エドナさんの方が知っているんでしょうね?
「ああ、ヴァルダンとは反対側の国だ。今は戦争中で国境を跨ぐのは危険だ」
「それでは出れないのかしら~?」
「国境から、出る時は、俺の部下が支援しよう。ただし、許可書を発行しないといけないから、それが来るまでは、ここで待機してくれ」
「本当ですか? ありがとうございます」
「それと」
兄様は突然、ルナの頭に手を乗せた。
「ルナも連れていって、くれ」
「え?」
「ちょっと! 兄様、急に」
「お前も、たまには、引きこもって研究作業してないで、外で体を動かしたら?」
ルナはどちらかといいう、研究に没頭していきたいのですが、二人をほって置けませんし……。
「……まあ、ちょうど、試したい魔術はありますから、いいかなと思いますが」
「なら、ちょうどいいじゃないか。外で派手に、魔術の実践でもしてきてくれ」
まったく、兄様は。でも、ルナを頼ってくれているのかな? いいえ、兄様の場合は……。
いいえ、それよりも、この二人と一緒にいて、わかったこと。そのうちの一人は正体がばれると狙われるから。
「そうしますよ。ルナの研究結果期待いてくださいね」
「そっか、じゃあ、お二人さんルナをよろしくな。まあ、結構面倒見がいいんだけどな、ちょっと、目つきが悪くって、愛想がないのがな」
「ちょっと! 兄様!」
「おっと、じゃあ、俺は帝都の保留所にガイザックを連れて行かないとだからこれで」
「わかりました」
兄様は、逃げるように、部屋から出て行った。
「改めてよろしくね~」
カチュアさんはルナの両手を握る。
「ええとおお、あっ、はい……」
まあ、いいかな。この二人は、今まで会った、ことがある人たちの中では、一番、信用できそうだし。
それに、兄様も。
第二章 英雄の力 完
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