3-10 ユミルサイド

「カチュアさん達のお陰で、セシル民の避難が出来ました」


  わたくし達は二つの村からの避難民をカチュアさん達の協力でようやく、都へ、たどり着くことができました。


 村人さん達は、セシルのお城にある緊急避難所として、用意したお部屋で休んでもらっています。


 わたくしはソフィアさんと一緒にカチュアさん達をお城の中を案内していますのです。


「ユミルちゃーん! 無事だったんだね」


 声がする方へ、顔を振り向くと、そこには……。


「いやーーー!!! 不審者ーーー!!! たーすーけーてー--!!!」


 そこには、知らないおじさんがいましたわ! きっと、不審者ですわ! 怖いですわ!


「ユミル様! 確か、この方は、あなたのお父さんでは、ないのですか?」


 え? ルナちゃんの言う通り、声は確かにお父様ですわ……。たぶん。


「いいえ、不審者で、合っていますよ、ルナ様」

「ちょっと!? 酷くないかね!? ソフィアくん! わしは……」

「用があるなら、早く喋りやがれ」

「あ……はい……」


 ソフィアさんの怒鳴り声で、不審者は黙り込んじゃっいましたわ。


「ユミルちゃんと、ルナちゃん知っている人~?」


 カチュアさんが、尋ねると、ルナさんは。


「アドラス王です。このセシルの、国王で、ユミル様の父親です」

「……」


  黙ってしまいました。


「あれ〜? ユミルちゃん、どーしたの〜?」


 わたくしは、アドラス王と呼ばれていた方の顔をじっと、見て。


「確かに、わたくしのお父様の、名前はアドラスって、いうんですわ。それに、よく見たら、この不審者さんの顔、お父様に似ているような……」

「違うんですか~?」

「いや、間違えなく、あなたのお父様でしょ? ルナは以前、話したことはありませんが、見たことがありますよ! 間違えなく、あなたの父親ですよ!」

「わたくしは余り、人の顔を間近で見られなくって、そのせいで、顔を覚えられないのです」

「いや、お父様の顔ぐらい、覚えといてください!」


 うう。正論ですわ。身近にいる、実の父の顔を忘れるなんて。


「確かに、あの不審者さんは、わたくしの、お父様の顔と、同じ顔をしているんですわ。でも、わたくしの、知っている、お父様よりも老けていますわ」

「もしかして~。ユミルちゃんは、お父さんの顔を、しっかり見ていたのは、小さい頃しかないの〜?」

「小さい時に、見た顔はしっかり覚えていたんですわ。ですが、その後は間近に見れてなくっていましたわ」

「段々、お父さんが哀れに感じてきました」


 わたくし、もしかして、呆れちゃいましたかな?


「君がアルヴス君の妹のルナくんだな」

「はい」

「そして、後ろの二人は?」

「ルナじゃなかった! わたくしの連れです。蒼髪の人がカチュアさんで、小さい子はエドナさんです」

「もー、小さい子って、酷いよー」


 エドナさんは頬を膨らませている。怒っていると思います。でも、なんだか、可愛いですわ。


「うひょーーー!」


お父様に似た、不審者さんは、はしゃぎ出しましたわ。


「オッパイデカいね。お二人さん。ユミルちゃんやソフィアくんよりも大きいわ。特に伝説の女将軍のような君。君ほど、デカいオッパイは見たことがない! よかったら、一緒にお風呂入らないか? ここのは混浴だから」


 やっぱり、やばい人ですわ! こんな人が、わたくしのお父様では、ありません。お父様に化けた、不審者ですわ!


 確かに、カチュアさんとエドナさんはお胸は、かなり大きいですわ。


 ビリビリビリビリ!!


「ぐわわわわわわわわ!!!」


 突然、不審者さんから、電気が流れてきましたわ。これはソフィアさんの雷系魔術ですの。相変わらず、容赦がありませんですわ。


「心配しないでください。ここの浴場は男女別です」

「酷いじゃないか! ソフィアくん! わしに雷の魔術を……」

「黙れ。今度は焼き鳥にしてやろうか?」

「焼き鳥……是非~」


 カチュアさんが、不審者さんを見つめている。「焼き鳥」と聞いた瞬間、カチュアさんは、口の中の唾液を啜っていますわ。


「あの……。カチュアくんだっけ? ヨダレが出ているが、わしは食べれないよ」

「カチュア殿、この不審者を焼き鳥にするとは、言いましたが、食べられることはおすすめしません。毒なので」

「そっか~、残念~」


 カチュアが落ち込んじゃったわ。お腹がすいたのかしら?


「それは、それで酷くね?」


 不審者さんはルナちゃんに向かって。


「ルナくん、わし、可哀想でしょ?」

「いや~、さすがに、女性に向かって、一緒にお風呂入いろうと言われても、相手が例え国王でも引きます」


 さらにソフィアさんから。


「ちなみにこのジジイ、女湯覗いていますから」

「じゃあ、同情しません」

「そんなー」

「もうちょっと、罵ってもよろしいかと」


 え~と……さすがにそれは……。


「いいえ、ソフィアさんが十分にダメージを与えたと」


 あれ? 体が……。わたくしは急にふらふらし始めましたわ。


「疲れました」


 倒れそう、ですわ。


「だいじょぶ?」


 と思いましたが、カチュアさんに受け止めてくれましたわ。わたくしの顔が、カチュアさんの谷間に入ってしまいましたわ。


「すいません」

「頑張ったんだね~」

「ユミルちゃんずるい! カチュアちゃんの胸に飛び込んで。お父さんもカチュアちゃんの枕に飛び込みたい」

「黙れ、クズの中のクズ王。私の雷で粛清を」


 ビリビリビリビリ!!


「ぐおおおおおおおおおお!!」


 ソフィアさんは、また不審者さんに雷系魔術を放っちましたわ。


 不審者さんの体が、真っ黒に焦げましたわ。


「男の裸を抱いて寝ていろ」

「すみません」


 うう、なんだか、眠くなってきた。それに、ここは、落ち着くわ。このまま……。


「じゃあ、エドナちゃん。一緒にお風呂入りましょ」

「エドナ殿。このサンドバッグを殴りに殴りつけても構いません」

「え!? こうですか? ……あ!」

「ぐほおおお!!」

「すいません! 大丈夫ですか!?」

「ぐおおおお!!」

「あ! すみません! 大丈夫ですか!」

「わしの……わしの息子が……」

「大丈夫ですか!? 本当にごめんなさい!?」

「やりますね。生ゴミの腹を殴って、地面に叩きつけて、そのうえで踏みつけるなんて」

「ソフィアさん。エドナさんは転んだだけですよ。たぶん、ソフィアさんに言われた通り……まあ、本気で殴るつもりはなく、動作だけだと思いますが、その時に転んで、アドラス様の腹部目掛けて突進したんだと思います」

「ぐぐ……、そんで、彼女が起き上がった時にわしの息子を……がくり」


 何だか、大変なことになっているような。でも、わたくしは、顔を上げる元気すらないから、気にしないで置きましょう。

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