二章 幼少期編
9.転生
「旦那様!!お生まれになられましたよ!!元気な男の子です!!」
「おおそうか!今すぐ向かう!」
その日、ロージア王国内のある屋敷では、家主から下位の使用人まで全員が忙しく動き回っていた。
「回復ポーション持ってきて!」
「もう部屋の中にある!」
「おい!食材足りないぞ!もっと肉買ってこい!」
「奥方様はお召し上がりになり易いものだぞ!」
喧噪の中、一人の男性がある部屋に入っていく。その中にはベッドで横になりながら生まれたての赤子を抱く一人の女性と、その周りに控える白く清潔な服を着た侍女たちがいた。
「ロレーヌ!」
「あなた!生まれたわよ!こんなに可愛い男の子!」
「ロレーヌ、君は大丈夫か?」
「うん!それよりこの子を抱いてみて!」
「よし!」
男性は赤子をつぶしてしまわないように、優しく抱き上げる。三度目なので手慣れたものだ。
「おお、君に似て可愛い子だな!」
「目があなたそっくり。きれいな金色ね!」
そこで彼は以前から決めていた名前をその赤子に付けた。
「お前の名前はカルムだ!立派な大人に成長しろよ!」
俺の名前はカルム・フォン・マンダリン。二歳児である。俺には前世の記憶があるので同世代の子供たちに比べれば賢いのは当たり前なのだが、そのことを知らない大人たちや兄たちは「神童」と俺のことをもてはやしている。
名前に「フォン」が付いているのを見て気が付いてる人もいるだろうが、俺の両親は貴族である。爵位は男爵。あまり大きくはないが領地を持つ、領地貴族である。
両親の名前は父がアンドリュー、母はロレーヌである。貴族で一夫一妻は珍しいらしいが、両親は仲が良く父も側室をとる気はないらしい。二人とも俺を溺愛している。
兄が二人いて、四歳年上の長男がオーウェン、三歳年上の次男がワイアットという名前である。二人とも俺を溺愛している。
生まれてきてから二年間、この世界について家族や使用人に尋ねたり本で読んだりして分かったことがいくつかある。ちなみに文字はこの二年間で読めるようになった。暇だったからな。
まず一つは、この世界の文明は中世ヨーロッパ程度であること。科学が発達しておらず、学校でも科学は習わないということ。
二つ目は「ステータス」というものが存在する。その人の力や素早さなど、本人の「強さ」を数値化して見れるものである。五歳になると教会で神から授かるらしい。ちなみにこの世界には魔法が存在し、ステータスにも「魔力」という項目がある。
三つ目、この世界には獣のほかに「魔物」という生物がいるということ。見た目は獣と特に変わらないが、より凶暴で強力な生物らしい。
まだまだこの世界について知りたいことはたくさんあるが、まだ二歳なのであまり知ることが出来ない。
ああ、なんだか眠たくなってきた。二歳児の体はすぐ疲れるしすこし辛い。今日は寝るとしよう。
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説明回でした。
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