15.贈り物Ⅰ

「おはようございます、お母様。」


「おはようカルム。よく眠れた?」


「はい。」


 翌朝、いつも通り起床し食堂に行く。するとそこには朝食を掻き込むワイアット兄様と、まだ眠たそうなオーウェン兄様がいた。


「もう行儀悪いわよ、ワイアット。」


ふみふぁへん、おかあふぁふぁすみません、お母様。」


「もうっ。」


「おはようございます。オーウェン兄様、ワイアット兄様。早いですね。なにかあるんですか?」

 

 俺は挨拶をし、尋ねる。


「おはようカルム。それが、ワイアットが朝早く起きて鍛錬するって言って聞かないんだ。僕はまだ眠たいんだけどね。」


 オーウェン兄様も大変だな。


「鍛錬したい気持ちもわかるが、それより今日ワイアットにはやることがあるぞ。」


 すると、父様が仕事部屋から食堂に入ってきた。


「ゴクッ。おはようございますお父様。僕がやることって何ですか?」


 ワイアット兄様が食べ物を飲み込んでから尋ねた。


「おはよう。食べ終わったら父さんの仕事部屋においで。オーウェンとカルムも来ていいぞ。」


「「「分かりました。」」」



 全員が朝食を食べ終えた後、俺たち兄弟は父様の仕事部屋に向かった。


「おう、来たな。」


 部屋に入ると、そこにはこの広い部屋を覆いつくすほどの箱の山があった。どれも豪華な装飾が施されている。


「これらはワイアット様の誕生日に送られてきた贈り物です。」


 これは何だろう、と考えていると父様の部下のサミュエルが教えてくれた。彼は父様の右腕的存在で、この仕事部屋で朝から晩まで仕事をしている。


「こんなにもですか?」


 ワイアット兄様も驚いている。オーウェン兄様はあまり驚いていないようだ。


「そうだ。五歳の誕生日っていうのは特別なものだからな。プレゼントを贈りあう風習があるんだ。知り合いの貴族や商人から大量に送られてきたぞ。」


「えぇ…。」


 ワイアット兄様は引き気味だ。それもそう、優に百を超えるであろう箱をすべて開けなくてはならないのだ。お疲れ様である。


「このマンダリン領は旦那様の力で豊かですからね。他領の商人からもたくさん届いていますよ。」


 サミュエルが補足する。だからこんなにも多いのか。


「送ってきた人はサミュエルがリストにしてくれたが、内容までは確認できてない。感謝の手紙を送る必要があるから全部チェックするように。大変だったらオーウェンとカルムにも手伝ってもらうんだな!」


 なに!?嵌められた!?


「では僕は鍛錬があるので…。」


 オーウェン兄様がそそくさと立ち去ろうとするも、ワイアット兄様がその肩をガッと掴み


「手伝ってくださいお兄様ぁ。」



 と泣きつくと堪忍したようで


「分かったよ…。」


 と返事する。


「大丈夫ですよ。危険なものはオーラで分かりますから。この中には入ってません。」


 サミュエルが一応フォローする。


「よし、じゃあ俺は仕事するからこれ全部庭に出してくれ。」


 父様が傍にいるメイドに指示すると、俺たち三人は半ば追い出されるように部屋を出た。


 地獄のプレゼント開封祭りが幕を開ける。


 


 

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