14.次男の才能

「なんだこの魔力量は!五歳児だとは思えない!」


「しかも魔法属性が三つもあるわ!魔法の天才よ!」


「アイテムボックスもある!やったなワイアット!」


 両親とオーウェン兄様が驚喜している。俺も驚いた。このステータスなら近いうちに「天才」の称号が付くだろう。うちの兄弟は天才しかいないのか?


 そんな四人の傍で、ワイアット兄様は浮かない顔をしている。


「ワイアット兄様、どうされました?」


「なんだワイアット嬉しくないのか?」


 気づいた俺と父様が声をかけると、


「僕は、兄様のような剣士の才能が欲しかったです。」


 と答えた。すると父様は少し怒った声でワイアット兄様を諭す。


「ワイアット。ステータスは神が授けて下さった力だ。どんなものでも感謝しなくちゃならない。しかもお前のは人並外れた大きな力だ。「他のが良かった」なんて罰当たりなことは絶対に言うな。」


「…はい。」


 ワイアット兄様は少し落ち込んでいる。そんなワイアット兄様に、


「それに二人とも剣士じゃ役割が被るでしょ?」


 と母様が声をかける。ん?どういうことだ?


「おい、もう言うのか。」


 父様が少し焦っている。


「良いじゃない、もう話したって。ワイアットも喜ぶわ。」


 母様に言い包められた父様が、仕方ないというように話を続けた。


「オーウェンとワイアット、二人とも剣士だと両方前衛になりバランスが悪くなるだろう。一人が魔法使いの場合、後衛に回ることが出来てパーティーのバランスも良くなる。」


「え!と、ということは!?」


 オーウェン兄様は察したのか驚いている。


「ああ、二人の冒険者活動を許そう。」


「「やったーー!!!」」


 二人ともとてもうれしそうだ。


「ただしいくつか条件がある。」


 父様が話を続ける。


「二人とも学校を卒業すること。学校を卒業してからじゃないと冒険者活動は許可しない。」


「「はい。」」


「あと一つ、オーウェンの冒険者活動は三十歳になるまでとする。お前は家の跡取りだからな。領地運営の勉強もしなくちゃならない。」


 二人ともそのくらいは覚悟していたのか、素直に頷いている。


「本当は危ないから冒険者になってほしくないんだが…まあ父さんも冒険者やってたからな。二人を応援するよ。」


「お母様は反対されますか?」


 ワイアット兄様が母様に聞く。


「危ないことはしてほしくなかったけど…二人の頼みは断り切れないわ。まあ世界を回って見てきなさい。」


「「ありがとうございます!!」」


 二人ともとても嬉しそうだ。ワイアット兄様は「明日から訓練頑張るぞ!」と息巻いている。


 俺は気になることがあったので父様に尋ねてみた。


「お父様。アイテムボックスとは何ですか?」


 父様は二人を見て微笑みながら教えてくれた。


「異空間収納ってやつだ。自分にしか開けない自分専用の空間を持ち、自由に物を出し入れできるスキルだ。マジックバッグのスキル版だな。」


 マジックバッグというものがあるのか。魔法は偉大だな。


「ありがとうございます。」


「それよりカルム、お前は冒険者になりたいと思わないのか?」


「いえ、僕はなりたいとは思いません。健康に長生きするのが僕の夢です。」


 前世では早死にだったからな。


「そ、そうか。やっぱりカルムは冷静だな。」


 なぜか少し引き気味な気がするが、そう言って父様は離れていった。

 


 

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