13.次男のステータス
あれから一週間がたった。この一週間、オーウェン兄様は訓練と勉強を、ワイアット兄様は勉強を、俺はワイアット兄様の隣で読書をして過ごした。
俺は前世の記憶があり、生まれた時から理性があった。なので言語の習得に全力を尽くし、一歳を迎えるころには会話や読み書きはできるようになった。「神童」と呼ばれる所以である。今では、時々ワイアット兄様に文字の意味を教えたりしている。
最近読んでいたのは『勇者アインの冒険』という物語で、神に背いた魔王に、神から大きな力を授かった勇者が立ち向かうというストーリーだった。
俺の前世は魔王ではなかったが、神に逆らっていたので下手すると勇者に討伐されていたかもしれないと思った。
「よし!では出発!!」
全員が馬車に乗り込むと、父様は大きな声で合図を出す。
今日はワイアット兄様の五歳の誕生日。家族全員で領内の教会へ向かうのだ。
「どうしたワイアット、緊張しているのか?」
「はい、お父様。人生が懸かっておりますので。」
「なんだ、騎士になりたいのか?」
「いえ、僕はお父様みたいに冒険者になりたいのです!」
「なに?冒険者になりたいのか?」
「はい!オーウェン兄様と話し合いもしています!」
「ちょっとワイアット!」
なにやらオーウェン兄様が焦っている。父様に隠していたんだろうか。
「オーウェン、お前も冒険者になりたいのか?」
「…はい。」
「ううむ。父さんも若い時冒険者だったんだが、とても危険な仕事だった。魔物と戦って殺されたり、時には人間に殺される人を何人も見た。…あまりお勧めはできない。」
父様の話にうつむく二人。というかそんな危険な仕事よく父様はやってたな。俺は危険なことをせず安全な職に就こう。
「まあ、この話は後にしよう。ほら、もうすぐ教会だ。」
少し重くなった空気を払拭するように、父様は努めて明るくそう言った。
教会に到着すると、
「オーウェンとカルムは馬車の中で待っててくれ。」
「いい子にしてるのよ。」
そう言って両親は馬車を降りていく。
「はあ、緊張するなあ。」
ワイアット兄様はまだ緊張しているようだ。
「「大丈夫だよ(ですよ)」」
二人で声をかけると、まだ少し吹っ切れた顔で
「よしっ。」
と言うと立ち上がり
「行ってきます。」
と馬車を出て行った。馬車の傍で待っていた両親と一緒に教会の中へ入っていく。
「そういえばお兄様。」
「どうしたの?」
「ステータスはどのようにして授かるのですか?」
待っている間、暇なので俺はオーウェン兄様に尋ねた。
「それはね、教会で神様にお願いをするんだよ。」
「お願い、ですか?」
「そう。「神よ、我に力を授けたまえ。」ってね。」
「なるほど。では、少し前から気になっていたのですが、ステータスを得る前は魔法や武器は扱えないのでしょうか?」
「うーん、扱えないんじゃないかな。だって才能をまだ授かってないんだし。」
「…そうなんですね。ありがとうございます。」
本当に扱えないのか?才能がなくても努力すれば何とかなることもあるだろう。これは試してみる必要があるな。
そんなことを考えていると、三人が教会から戻ってきた。
「ワイアット兄様、無事にステータスを得られましたか?」
聞いてみると、
「ああ、後で見せてあげよう!」
と元気よく答えてくれた。
家に帰り、晩御飯の時間になった。今日はワイアット兄様の誕生日なので、いつもよりも御馳走が並んでいる。
皆で一家団欒を楽しんだあと、父様が切り出した。
「よし、一息ついたところでワイアット、ステータスを教えてくれないか。」
「ええ、お母さんもとても気になるわ。」
両親が待ちきれないと言うように急かす。
「はい、分かりました。これが僕のステータスです。『ステータスオープン』」
【名前】ワイアット・フォン・マンダリン
【種族】人族(人間) 【性別】男 【年齢】五歳
【称号】男爵家次男
【レベル】1
【体力】58
【魔力】107
【筋力】45
【敏捷】53
【知力】41
【魔法適性】水属性・風属性・闇属性
【スキル】 アイテムボックスLv.1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コメント等お待ちしております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます