16.贈り物Ⅱ
「多すぎる…」
「僕の時より若干少ないからまだマシだけどね…。」
「オーウェン兄様の時はこれより多かったのですか?」
「長男だからかな?あと二十箱くらい多かったよ。」
「本当ですか…。」
貴族の長男は大変だな。
「しかもあの時ワイアットは熱を出して寝込んでいたし、カルムはまだ一歳でずっと寝てたから僕一人で全部開けたんだよ?」
「えぇ…。使用人たちは手伝ってくれなかったんですか?」
使用人たちはいつも俺たちの身の回りの世話をしてくれている。
「今回も手伝ってくれないだろ?自分に贈られたものは、出来る限り自分で受け取れってお父様は言ってたけど…多分嫌がらせだよ。」
「ですよね…僕たちも手伝わされてますし…。」
「オーウェン兄様もカルムもお喋りしてないで手を動かしてください!鍛錬の時間が無くなりますよ!」
「分かったよ…。」
そんなことを話しながら俺たちは箱を開けていく。中身は大体宝石や装飾品だ。
ワイアット兄様は興味がないといったように、サミュエルにもらった名簿に雑にメモをしては次々と箱を開けていく。
「お!これは!」
「何か良いものでもあったの?」
「見てください、このかっこいい剣を!」
「確かに良い剣だね。」
「あ、でも剣は使えないんだった…。…これはお兄様に差し上げます。」
「部屋に飾ればいいじゃん。」
「いや、使ってあげないとかわいそうなので…。」
かわいそうなワイアット兄様。
しばらく開封を続けていると、魔法使いが着るようなローブが入っていた。これはワイアット兄様も喜ぶだろうと思い見せに行く。
「ワイアット兄様、このロー」
「ああ!?なんだこの絵は!?こんなのいるかよ!」
おっと、お怒りになられている。
「どうされたんですか?」
「ああ、カルムか。どこかの騎士爵家が自分の娘の似顔絵を送ってきやがったんだ。誰が喜ぶんだよ。」
見るとそこには微笑む美少女がいた。
「こんなの絶対に盛って可愛く描いてるに決まってる。なんで僕が喜ぶと思ったんだだ?」
ワイアット兄様はお気に召さないようだ。
だが俺は違った。
「な、なんだこの崇高な造りは!!」
「え、カルムはこんな女の子が好きなのか?」
「繊細で緻密な模様!絵を食うどころかその魅力を引き上げている!!」
俺はその絵を額から取り出し、額のほうを抱えながら言った。
「お兄様!この額を僕に下さい!」
ワイアット兄様は少し戸惑っている。
「カ、カルムが欲しいならあげるけど。」
「ありがとうございます!!」
俺は驚喜していた。こんな素晴らしい額を作ることが出来るなんて、この世界の芸術は前世と同等またはそれ以上に発達しているかもしてない…。ああ、早く大きくなって美術館とか見に行きたいなあ。
それから俺は開封するのも忘れ、この世界の美術に思いをはせていた。
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