31.グルーブ子爵Ⅰ
それから三日ほど馬車を走らせ、特に何事も無くグルーブ子爵領に到着した。
領境には俺たちを出迎える使者がいた。
「恐れ入ります。マンダリン男爵様でしょうか。」
「ああ、そうだ。」
「旦那様は屋敷でお待ちです。御案内致します。」
「ありがとう。」
使者の案内で子爵領を進んでいく。
領内は明るく人で賑わっており、我が家の領に勝るとも劣らない活発さだ。
程無くして、前方に大きな屋敷が見えてくる。
「到着しました。」
使者の声で馬車を降りると、父様と同い年くらいの金髪の男性を先頭に大勢の人が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、マンダリン男爵様。」
父様はさっさと馬車を降りると金髪の男性に話しかけに行く。
「おいヨハン、こういうのやめろっていつも言ってるだろ。」
「旧友と久しぶりに会うのに出迎えないわけにはいかないでしょ?」
「何で子爵が男爵を大々的に出迎えるんだよ。」
「アンだって敬語を使っていないじゃないか。」
「そうだが…。」
なにやらとても仲が良い様子である。アンっていうのは父様のことか?アンドリューから取ったのだろう。
俺が近づいて父様の後ろに立つと、話題が俺に移る。
「この子が神童と噂のカルム君?」
「そうだ。カルム、挨拶しろ。」
「お初お目にかかります。カルム・フォン・マンダリンと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「よろしくね。うん、噂に違わぬ冷静さだね。本当に五歳児かい?」
「はあ、よくできた子だよ。」
「羨ましい限りだね。さあ、このまま立ち話をするのも何だし、屋敷の中へ案内するよ。」
「分かりました。」
子爵に案内されるまま屋敷の中へ入る。中はあまり装飾などは施されておらず、ただ貴族としての体裁を保つためだけかのように玄関に一つ大きな虎の剥製が飾られているだけだ。
「相変わらず物が少ない屋敷だな。何か飾らないのか?」
「機能性を重視しているだけだよ。君の屋敷も似たような物でしょ?」
「俺の家は最近カルムが描いた絵を飾っている。そこらの画家が描いたものより上手いからな。」
「へぇ、じゃあうちにも一枚お願いしようかな。」
「もちろん描かせていただきます。」
三人で話しながら屋敷に中を歩いていると、低いテーブルを挟んでソファが向かい合っている部屋に着いた。
「はい、好きに座ってね。」
「おう。」
俺たちは勧められるままに部屋に入りソファに座る。
子爵は座らず話し始めた。
「まずは自己紹介をしよう。僕の名前はヨハネス・フォン・グルーブ。子爵をやってる。こちらの女性は僕の奥さん。」
「初めましてカルム君。私はルイーゼ。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
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