46.魔物との遭遇Ⅰ

 それから俺達は数日王都で過ごし、ようやく今日帰る日になった。俺はこの数日間父様に申し訳ない気持ちと自分が情けない気持ちで、気分が下がりっぱなしだった。


「元気出せよ、カルム。」


 父様も慰めてくれる。


「大丈夫ですよ。」


 俺は自分の荷物を点検しながら、そう返事した。



「じゃあジェイソンとはここでお別れだな。」


 公爵領は王都を挟んでマンダリン領の反対側にあるので、ここで別れる。


「カルムもアンドレイも元気でね!!」


 アンジェはここ数日、落ち込んでいる俺を揶揄うのがとても楽しかったようで、テンションが高い


「そっちもな。」


 俺はそっけなく手を振ったが、アンドレイは寂しいのか


「ま、またね!!」


 と大きな声で返事をしていた。



「では、出発!!」


 父様の号令で馬車が出発する。屋敷を出発し、王都の外へ向かう人々が並ぶ列の最後に加わる。


「帰りも野宿ですか?」


 一応父様に聞いてみると、


「ああ、そうだ。」


 と至極当然の答えが返ってきた。



 それから数日、来た時と同じような野宿生活が続いた。インスタントスープは便利で美味しいことは確かなのだが、まだ味を一種類しか作れておらず、飽きが来てしまうことが問題だった。帰ったらジョセフ料理長と話し合わないと。


 そんなことを考えながら野宿をしていると、出発して一週間ほどたったある日、皆で夕食の準備をしている途中、急にアンドレイが大きな声を出した。


「あっち方向に魔物がいます!!」


 突然の声に使用人たちも対応できておらず、アンドレイの発言を訝しんでいた。


「何の魔物かわかる?数はどれくらい?」


 子爵が尋ねると、


「狼型の魔物…たぶんフォレストウルフだと思います。数は…五匹くらいです。」


 とアンドレイは答えた。


 フォレストウルフとはその名の通り森に生息する狼の魔物で、群れで行動し時には人を襲うこともある獰猛な魔物だ。


「アン、指示を。」


 それを聞いて子爵は父様に指示を乞う。


「A班は俺達について来てフォレストウルフの討伐、B班はここに残って人と荷物を守れ!行くぞヨハン!!」


 そう言って父様達は魔物がいると思われる方向へ走って行った。父様はこういう事態に備えて領兵を十人連れてきており、五人づつの班を組ませてそれぞれをA、Bと呼んでいた。彼らはアンドレイの発言には怪訝な様子だったが、父様の命令には大人しく従っていた。


 それより気になるのは、アンドレイの情報収集能力が森の中でも発揮されていることだ。彼にはなにか特別な「才能」があるのかもしれない。


 そう考えていると、アンドレイが焦った声を出した。


「そんな!」


「どうした?何かあったのか?」


 尋ねると、


「反対側から、、、十五匹来てる。」


 と答えた。


 

 

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