47.魔物との遭遇Ⅱ
「なんだって!?」
こちらには兵が五人しかいない。戦闘になったら圧倒的に不利だろう。
「どうして先に気づかなかった!?」
「遠くの木々に体を潜ませてて…急にすごいスピードで向かってきたから…。」
つい大きな声で問うとアンドレイは下を向いてしまった。
分からなかったことは仕方がないので、俺は取り敢えず兵士に指示を出そうとすると、その兵士の一人が声を掛けてきた。
「坊ちゃーん。」
この若い兵は、先程アンドレイが父様達に、魔物たちの情報を伝えているときからずっとアンドレイに疑いの目を向けていた。
「なんだ。」
「その子、嘘ついてるんじゃないですかー?」
妙に間延びした声で言う。
「今はそれどころじゃない。使用人たちはすぐに」
「だって僕らも見つけていない敵をどうしてそんな小さな子供が見つけられるんですかー?」
この兵は指示を出そうとした俺の声を遮ってきた。ただでさえ危険が迫っているのにこんな奴の相手をしている暇なんてない。ただでさえ俺はここ最近機嫌が良くないのだ。
「おい、お前。」
「なんですかー?」
「お前はお父様の兵だよな?」
「そうですけど。」
「お前はさっきお父様がアンドレイの話を信じていたのを見ていなかったのか?」
「それは…」
「あと俺もこの子も貴族の人間だ。…言いたいことは分かるよな?」
「…」
喋っている暇はないので、俺は貴族の特権を使って若い兵を黙らせた。
「班長は誰だ?」
兵たちに聞くと、班長は決めていなかったらしい。「五人だけだから…」とかなんとか小声で言い訳をしている。
本当に使えない。帰ったら父様に兵たちの教育を打診しないと。
仕方がないので、俺が兵士にも指示を出す。
「使用人たちは松明を持って荷物を囲め!兵は魔物を食い止めろ!少しの時間でいい!お父様たちが助けに来てくれる!!」
そう言うと、兵士たちは横一列になって防御の構えを見せた。
すると、森から十匹ほどの狼が出てきて、俺達の周りを囲んだ。思った通り火が怖いらしく、松明を持った使用人たちは遠巻きにしている。
「!!なんで坊ちゃんはこっち側なんですか!?」
先程の若い兵が尋ねてきた。それもそう、アンドレイは使用人たちと松明を持って後ろで控えているのに対して、俺は剣を持って兵たちと構えている。
「指揮する者がいないとだめだろう。」
「坊ちゃんに怪我されたらもっと駄目なんですって!」
「いいから。」
「ていうかなんでカバン背負ってるんですか。」
若い兵は俺の背中の大きなカバンを横目に聞いてくる。
「いろいろあるんだよ。」
カバンの中には護身用の絵がいくつか入っている。戦闘に役立つだろう。
「この中で魔法を使えるやつはいるか?」
五人に尋ねると、二人が返事した。
「属性は?」
「火です。」「土です。」
「では火属性は森に火が移らないように敵を威嚇、土属性はここから遠距離攻撃を続けてくれ。」
「「はい。」」
「他の三人はここから打って出るぞ。大丈夫だ。魔法で援護してくれる。」
「坊ちゃんは?」
「俺はその二人の援護と指示をする。」
「分かりました。」
「では行け!!」
俺の合図で三人は周囲を囲む狼に突進していった。
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