48.魔物との遭遇Ⅲ

「三人で固まって動け!敵に囲まれないようにしろ!魔法隊、あいつらが囲まれないように援護しろ!」


 俺は状況を確認しながら指示を出す。


 先程、本当に使えないと思ったこの兵士たちだが、前言撤回、よく訓練されている。魔物相手の実戦経験もあるのか、良いチームワークでお互いを助け合っている。


「!?まずい!!そっちに一匹いった!」


 前で戦っている一人がそう声を上げる。見ると、遠くからの威嚇と攻撃を嫌ったのか、狼が一匹こちらに向かってきている。


「魔法隊は三人の援護を続けろ!俺が相手をする!!」


 俺は魔法使い二人にそう指示を出し、護身用の絵を手に持った。


「『具現化』火球ファイアボール!!」


 狼を具現化した火の玉で視界を奪い、剣で首を落とす。


「坊ちゃん、本当に五歳児ですか?」


 後ろで火属性の魔法使いが呆れている。


「今は冗談を言っている暇はない!反対側から来ているぞ!!」



 その後も狼と交戦を続け、何とか全てを狩ることが出来た。


「ああ、疲れた。魔力がもうすっからかんだよ。」


「俺もだ。」


 魔法隊はもう魔力が切れてしまったらしい。ずっと後ろから打ち続けていたからな。


「怪我してるやつはいないか?」


「いません。」


「それは良かった。それにしてもお父様たちが遅いな。何か問題でもあったのか?」


 俺はアンドレイに話しかける。


「お父様たちの状況分かるか?」


 すると、少し青ざめた顔で頷く。


「まだ戦ってる。ブラックウルフが指揮しているみたい。数もいつの間にか数えられないくらいになってる…。」


「そうか。」


 ブラックウルフとは、群れの統率に特化したフォレストウルフの上位種だ。身体能力はフォレストウルフと変わらないのだが、奴がいるのといないのとでは討伐の難易度は大きく違うらしい。


 狼の本隊があちらだったのだろう。父様達なら問題ないだろうが、こっちに来ていれば被害は大きくなっていたはずだ。運が良かった。


「では、皆で協力して魔物の死体を片付けよう。血の臭いに釣られて新しい敵が来てはいけないからな。」


 俺が皆にそう指示を出した時、遠くで狼の唸り声が聞こえた。


「いや、もうおそい…。」


 アンドレイは泣き顔になってしまった。ぶるぶると恐怖で震えている。


「おい、大丈夫か!?どんな敵が来たんだ!?教えろ!」


 俺が尋ねても反応が無い。恐怖で誰の声も届かなくなってしまっている。


「くそっ!!おいお前ら、気を引き締めろ!強敵が来るぞ!!魔法隊は松明を持って使用人たちの隣に並んでろ!!」


「はい!!」


 身構えると、森の中に大きな一匹の狼の影が見えた。それ以外の敵は見えない。


「相手は一匹だけだ!囲んで仕留めろ!行け!!」


「「「はい!!」」」


 三人は一斉にその狼に飛び掛かる。流石に三対一で負けはしないだろうと思っていると、「ぎゃあ!」と叫び声を出して三人は同時に倒れてしまった。


「おい!大丈夫か!」


 尋ねても返事が無い。息をしてはいるようだが、意識を失っているのか返事も出来ないのだろう。このままでは出血多量で死んでしまうかもしれない。


 まずいと思っていると、木の陰から敵が姿を現した。




 


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