44.四人目のメンバー
「俺達の分は残ってるか!?」
良く通る声を響かせながら、フードを被り顔を隠した男が食堂に入ってきた。
父様達は、「やっと来たか」という顔で笑っている。
「なんだ、せっかく急に現れたのに。もっと驚いてくれたっていいじゃないか。」
男性は拗ねたような声で抗議する。
「俺が呼んだんだ、驚くわけないだろう。いいからさっさとフードを取れ。」
父様がそう言い、メイドたちがグラスにワインを注ぐ。
「しょうがないなぁ。」
そう言って男性がフードを取る。そこから現れたのは、あの威厳のある国王のなんとも子供らしい表情だった。
「「えっ!?」」
アンドレイとアンジェの二人は一瞬固まり、すぐに椅子から降りて跪く。
「ははは!!これだよ欲しかった反応は!!」
王はたいそうご満悦のようだ。
「いいから、二人とも顔を上げようか。」
子爵が二人の顔を上げさせる。
「ち、父上のパーティーの仲間に、陛下が、いらっしゃったとは、知りませんでした…。」
アンドレイが緊張しながらそう言う。
「一応身分を隠してたからね!。そうじゃないと父上に許してもらえなかったんだよ!」
王が元気に言う。
「あー!そんなこと言ってる間にジェイソンに全部食べられちゃう!」
そんなことを言って王はテーブルの上の食材と格闘を始めた。
「こんばんは。」
ふと気が付くと、空いていた俺の隣の席にサリア王女が座っていた。
「こんばんは。いらしていたのですね。」
「ふふっ。お父様が元気にお話をされていたのでお気づきにならなかったのですね。」
王女が可憐な笑顔で言う。
「陛下は普段あのような方なのですか?」
「公務の時は威厳を保たれてますけど、普段はとても気さくな方ですよ。」
「そうなのですね。」
俺は普段の子煩悩な父様しか知らなかったが、公爵や王とのやりとりを見ていると意外にしっかりしていることが分かった。どこの父親も、外では威厳を出して家ではリラックスしているものなのだろう。
「昼間はありがとうございました。」
俺は、パーティー会場で騒動を収めてくれたことに感謝を述べる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
「それより、お父様がフードをお取りになった時、あちらの御二方は驚かれていたのにどうしてカルム様は驚かれなかったのですか?」
「驚きはしました。しかし、幾らか予想はしていましたので。」
「というと?」
「公爵、子爵、男爵と貴族が三人もいるパーティーで、残る一人だけが平民というのはあまり考えられません。」
「なるほど。」
「そして、あの方々は『国王派』の主要メンバーです。なので『国王派』の貴族のどなたかが残る一人だと思ったのですが、昼間のパーティーであまり親しくしている人が見当たりませんでした。なので、もしかしたら、と。」
「そうなのですね!」
説明を終えると、サリア王女は急に目を輝かせ始めた。
「カルム様はとてもお賢い方なのですね!お昼の騒動の時も冷静に対応なさってました!」
「ありがとうございます。」
ただの賢い美少女だと思っていたのだが、どうやらそれだけではないようだ。王の子供っぽさを受け継いでいるのかもしれない。
「私とお友達になって下さい!」
そして、恒例の「友達になって下さい」が出る。
「ええ、もちろん。こちらこそお願いします。」
三回目なので慣れたものだ。
「うふふっ、うれしいですっ。」
サリア王女は本当にうれしそうに弾けるように笑う。
それから、同じようにお互い敬語を使わない約束(ただしサリアは慣れるまでは敬語)をし、アンドレイとアンジェも彼女と友達になった。
前世では家族を亡くしたあと薫さんに引き取られるまで人との良い出会いはなかったが、今世では、五歳のうちから長く続きそうな縁、しかも貴族や王族という特別な人々に巡り合うことが出来た。それだけでも転生した価値があるだろう。
そんなことを考えていると、ほろ酔いの王が話しかけてきた。
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