21.ステータス取得Ⅰ
あれから約三年がたった。
隠れて続けていた魔法の訓練は順調に進み、なんと全属性の魔法を使うことが出来るようになった。家族の誰に尋ねても「意味が無い」の一点張りだったのは何故なのだろうか。
また、この三年間絵を描き続けたことで、また体に小さなテクニック等を
覚えさせることが出来た。オリヴィアに絵を描いてあげたことが家族にバレたとき、全員が自分にも描いてほしいと言ってきたのは驚いた。どうやら芸術は発達しているが身近ではないようだ。
そして今日は俺の五歳の誕生日。現在馬車に揺られながら教会に向かっている。
今回は俺と父様の二人である。兄二人は鍛錬で忙しく、母様は動ける状態にない。
「どうしたカルム?体調悪いのか?」
俺の顔を見て、父様が心配そうに聞いてくる。
「大丈夫です、お父様。少し寝不足なだけです。」
「辛かったら到着するまで寝てて良いぞ?」
「ありがとうございますお父様。そうさせていただきます。」
そう言って俺は目を瞑る。
別に寝不足なわけではない。体調不良でもない。
ただ、機嫌が悪いのだ。
理由は簡単。ステータスを取得するのに神に祈らないといけないのが気に食わない。
この世界の神は、下界に勇者を使わせたりと積極的だそうだが、前世の影響か神という存在自体が受け付けない。
そんなことを考えながらふて寝していると、いつの間にか教会に着いてしまった。
「着いたぞ。大丈夫か?」
「問題ありません。中に入りましょう。」
俺はさっさと終わらせてしまおうと、そそくさと教会の建物の中に入っていく。
中に入ると、建物は豪華で整備が行き届いていた。
「意外ときれいな建物なんですね。」
「メンソン教はこの大陸唯一の宗教だからな。信者から莫大な寄付金を受け取っているんだ。」
「メンソン教という名前だったんですね。」
「この世界の神メンソンを信仰しているからな。」
「なるほど。」
父様と話をしていると、恰幅の良い男の神官が近づいてきた。
「お待ちしておりました。カルム様ですね?」
「そうですが。」
「私はこの教会の司祭でございます。カルム様のステータス取得の儀式を執り行わせて頂きます。」
「そうですか。よろしくお願いします。」
「それでは、こちらへ。」
誘導され、教会の奥へ進んでいく。
かなり奥にあったひと際大きな部屋に通され、待機する。
「お父様、五歳を迎えた子供が全員このような部屋でステータスを取得するのでしょうか。」
「いや、一般的には違う。平民は大体自分の村に神官が訪れて、簡易的な儀式を行う。貴族の場合、これくらい大きな部屋に通されて本格的な儀式を受けるんだ。」
「儀式の効果に違いはありませんよね?」
「気持ちの問題だよ。」
そんな話をしていると、先程の司祭がなにやら豪華な服を着て戻ってきた。
「準備が整いました。メンソン様の御像に跪いて下さい。」
「はい。」
俺は嫌々ながら像の前に跪く。
すると司祭が俺の前に立ち、俺の頭に手をかざしながら始める。
「これより、カルム・フォン・マンダリンのステータス取得の儀を行う。」
「汝、カルム・フォン・マンダリンは得た力を世界に役立てることを誓うか?」
「はい。」
「神を敬愛することを誓うか?」
「…はい。」
「では神に願うのだ。」
「神よ、我にステータスを授けたまえ。」
俺がそう呟くと、何故かは分からないがステータスの使い方が頭に浮かんできた。『ステータス』と意識すると自分だけが見ることが出来て、『ステータスオープン』と意識すると周りにも見えるようになるらしい。
「どうだ?カルム。ちゃんと取得できたか?」
「はい、恐らく問題ありません。」
後にステータスを確認するとき、俺は大いに問題があったことに気付く。
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